ビットコインETF、上場は迅速だが資金の流れに数カ月かかる可能性:21シェアーズ共同創設者
  • 暗号資産管理会社21シェアーズの共同創設者であるオフィリア・スナイダー氏は、ETFの上場は承認から数日以内に行われる可能性があるが、より広範な影響を評価するには数カ月かかるだろうと述べた。
  • 資金管理者が承認済み資金分配先のリストへの追加処理を行うまでに少なくとも90日かかる。
  • ETFが承認されたとしても、原資産は依然としてSECから承認されないリスクにさらされている。

暗号資産管理会社21シェアーズ(21Shares)の共同創設者であるオフィリア・スナイダー(Ophelia Snyder)氏はインタビューで、初のビットコイン現物ETF(上場投資信託)がアメリカでついに承認され、数日以内に取引所への上場が行われる可能性があるが、市場への影響を測定するには数カ月かかる可能性があると述べた。

資金流入までに時間がかかる可能性

スナイダー氏は、ウェルスマネジメント企業が自社の承認済み資金分配先のリストにETFを追加するのにはさまざまなプロセスを経る必要があると説明した。スナイダー氏の21シェアーズは、キャシー・ウッド(Cathie Wood)氏の率いるARKインベスト(ARK Invest)と提携し、10日に証券取引委員会(SEC)から承認を受けたETFを提案している。

スナイダー氏は、「それには通常90日かかるので、実際にどのようになるかは少なくとも四半期は経たないと分からない」とし、「商品が取引可能だからといって、実際にアメリカ国内のすべてのアドバイザーが購入できるというわけではない。ティッカーを追加するには多くのコンプライアンスが必要だ。ティッカーは何もせずに追加されるものではない」と説明した。

スナイダー氏は、ビットコイン先物ETFのプロシェアーズ・ビットコイン・ストラテジー(BITO)が2021年10月に承認された際と同様に、最初のファンドが2日以内に取引所に上場するとの予想を示し、「標準的なETFのプロセスは通常1~2週間だ。BITOは特に早かったし、今回は早くなると思う」と述べた。

資金流入の程度は不明

スナイダー氏は、ETFへの資金流入によって取引高がどの程度変化するかを導出することは不可能だと指摘。ビットコイン(BTC)は承認を期待して過去6カ月で50%上昇しており、トレーダーらはETFの導入が機関投資家から巨大な需要を引き出すことに賭けている。

スタンダードチャータード(Standard Chartered)のアナリストらは、承認後3カ月で10億ドル(約1450億円、1ドル145円換算)の流入が見込まれ、年末までに1000億ドルを超える可能性があると予想している。スナイダー氏によると、過去24カ月でETF全体に約1兆2000億ドル(約174兆円)の純流入があったという。一方、暗号資産市場全体の時価総額は約1兆8000億ドル。

スナイダー氏は、「これはETFベースの評価益ではなく、純流入だ」とし、「こうした数値は暗号資産業界では共存できない。言い方は悪いが、ビッグボーイと遊ぶ際にこれらは非常に異なって見える」と指摘した。

残る不確実性

スナイダー氏は、暗号資産業界には他にも不確実性があり、今後より厳しい監視にさらされることになるだろうと述べた。承認は暗号資産全般に対するSECの疑念を相殺するものではないということだ。

スナイダー氏は、「SECがビットコインに関して何をしようとしているのかは依然として重要だが、人々はそれをまったく理解していない」とし、「金融会社のマネージャーらは、自身の評判とキャリアを賭けて投資を行っている。彼らがビットコイン投資を行ったのに、SECが違法だと判断すれば問題になるだろう」と指摘した。

SECのゲイリー・ゲンスラー(Gary Gensler)委員長は、詐欺や倒産の多さに言及し、何度か暗号資産業界に対する懸念を表明してきた。業界の一部を「未開の西部」と呼んだこともある。

グレイスケールからの流出が発生するか?

今回の承認により、現物ETFを提供する企業は競合他社との差別化を図ろうとしている。特に手数料だ。初期の手数料は主に純資産の0.24%から0.90%の範囲。最初の発表が行われてから最安値を狙う競争が起き、9日と10日に引き下げを行う企業が続出した。

突出しているのはグレイスケール(Grayscale)。グレイスケール・ビットコイン・トラスト(GBTC)をETFに転換し、1.5%の手数料を課す予定だ。グレイスケールの手数料は高いが、他の投資会社に対する規模の利益を利用して手数料の高さの相殺を狙っているのかもしれない。グレイスケールは現物ETFの承認前からすでに270億ドルを超える資産を管理しており、実質的にゼロからスタートする競合他社よりも大きな取引高と流動性を提供できる。

スナイダー氏は、「その価格設定では多くの流入が見られるとは思わないが、彼らの価格設定戦略はおそらく、追求しているのはそれではないことを示しているだろう」とコメント。グレイスケールがGBTCの既存の投資家プールを保持していることに主に依拠している可能性があると指摘した。

グレイスケールからより安価なファンドへの大幅な資金流出が発生するかどうかは、投資家の動機、つまり長期的にファンドを購入したか、現在含み益か含み損かなどに依存する可能性がある。

スナイダー氏は、「すぐに大規模な流出が起こるとは思わないが、時間の経過とともにそのような事態が起こるかもしれないと思う」とし、「すべてのことでそうだが、プロセスになる途上であり、これらのことがどのように変化するかを見るには時間がかかるだろう」と指摘した。

|翻訳・編集:林理南
|画像:オフィリア・スナイダー氏(右)と共同創設者のハニー・ラシュワン氏(21Share)
|原文:Bitcoin ETF Listings Will Be Quick but Money Flows Could Take Months: 21Shares Co-Founder