イーサリアム、上昇の可能性──デンクン・アップグレードとETFの可能性が後押し: アナリスト
  • イーサリアムが再び注目を集めるとアナリストらは見ている。現物ETFの話題が盛り上がり、DeFiとNFTで依然として支配的なチェーンだからだ。
  • アナリストの1人は、イーサリアムは暗号資産(仮想通貨)への分散投資を考えたときも中心的存在にふさわしいと述べている。

イーサリアム現物ETFへの期待

イーサリアム(ETH)は2023年、ビットコイン(BTC)が新しいスマートコントラクト機能、NFT、現物ETFをめぐる楽観論によって投資家の資金を引き寄せたため、そのパフォーマンスはビットコインを下回った。

アナリストによると、イーサリアムは依然としてNo.1のスマートコントラクト・ブロックチェーンであり、大規模アップグレードが予定されていること、アメリカで現物ベースのETFの次の候補として広く期待されていることから、投資家は今年、イーサリアムを見直す可能性が高いという。

米大手暗号資産取引所コインベース(Coinbase)は週刊ニュースレターで「イーサリムは今年、ブレイクする可能性がある」として、次のように分析した。

「ビットコインETF承認のニュースは、イーサリアムにとって好材料となり、イーサリアムは一時2700ドル(約39万9000円、1ドル148円換算)を超え、2022年5月以来の最高値をつけた。さらに、イーサリアムの短期的な展開について、さらに楽観的になる要素がある。ひとつは、ブラックロック(BlackRock)やヴァンエック(VanEck)をはじめとするビットコインETFを手がける複数の企業が、イーサリアム現物ETFも計画していることだ」

現物ETFは実際の暗号資産に投資するもので、投資家は暗号資産を所有することなく、エクスポージャーを得ることができ、ロールコストの影響を受けやすい先物ベースのETFよりも優れていると考えられている。

そのため、ビットコイン現物ETFと同様に、イーサリアム現物ETFが実現すれば、機関投資家や個人投資家の資金が殺到することが予想される。

アメリカでは11本のビットコイン現物ETFの取引が1月11日に始まり、これまでに取引高は100億ドルを超えた。ブラックロックのビットコイン現物ETFは10億ドルを集めている。

「デンクン(Dencun)」アップグレードと機関投資家の需要

さらに、コインベースによると、イーサリアムで予定されているアップグレード「デンクン」は、「データ・ブロブ」を導入することでメインネットのスケーラビリティを向上させることを目的としており、イーサリアムに対する投資家の関心を喚起する可能性がある。このアップグレードは先週、イーサリアムのテストネット「Goerli」で実行された。

ブロブとは、イーサリアムに添付できる一時的なトランザクション・データメモリのことで、レイヤー2ソリューションのような機能を果たす。

デンクンが実行されれば、ネットワークは各トランザクションを検証するのではなく、ブロックに添付されたブロブ・データを確認するだけで済むようになり、混雑の緩和と手数料の削減につながる。

「イーサリアムのデンクン・アップグレードは1月17日に初期テストを開始し、今後数カ月でEIP-4844(Ethereum improvement proposal:イーサリアム改善提案 4844)を実装すると予想されており、一部の観測筋は手数料が90%以上削減されると予測している」(コインベース)

機関投資家向けの暗号資産企業ETCグループは、年次レポートで、イーサリアム/ビットコイン比率の強気な見通しについて述べ、2023年にinscription(いわゆるビットコインNFT)が主導したビットコインのネットワーク活動の活発化にもかかわらず、イーサリアムは分散型アプリケーション、NFT、およびトークン化資産を開発するための支配的なチェーンであり続けると記した。

例えば、ETCグループが追跡したデータによると、トップ10のERC-20トークンの時価総額合計は210億ドル、これは3万7000以上が存在するBRC-20トークンの時価総額合計16億ドルの13倍に相当する。

ERC-20はイーサリアム・ブロックチェーンのトークン規格、BRC-20はビットコイン・ブロックチェーンのトークン規格だ。

さらに、イーサリアム投資家は、保有するイーサリアムをネットワークにステーキングすることで、保有コインに対して追加リターンを得ることができる。現在の年率報酬率は約3.84%、イーサリアムが2022年9月に大規模アップグレード「Merge(マージ)」を完了して以来、平均約4%〜5%となっている。

最後に、取引手数料として支払われたイーサリアムの一部をバーン(焼却)するというイーサリアム・ブロックチェーンのプロセスは、供給量にデフレ効果をもたらし、投資家にプラスの影響を与える。

「スマートコントラクト・プラットフォームとしてのイーサリアムの強力な優位性と、追加利回りを得る可能性は、暗号資産への分散投資を考えるときもイーサリアムは中心的存在にふさわしいことを意味している」とETCグループは指摘。

「したがって、2024年にイーサリアム/ビットコインの相対的なパフォーマンスが逆転する可能性はかなり高いと考えている。実際、イーサリアム/ビットコインの12カ月間の相対パフォーマンスは、歴史的に平均回帰する強い傾向を示している」と続けた。

イーサは2024年現時点まで、ビットコインをアウトパフォームしており、イーサリアム/ビットコイン・レシオは10%上昇している。同レシオは2023年、25%以上低下した。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Ether Could Soar in 2024 on the Back of Dencun Upgrade, ETF Narrative: Analysts