貿易決済はステーブルコインで普及のハードルを超えるか──三菱UFJ信託、Progmat、STANDAGE、Gincoが共同検討開始

三菱UFJ信託銀行、Progmat、STANDAGE、Gincoは、「Progmat Coin(プログマコイン)」基盤を活用して発行される「国産ステーブルコイン」の貿易決済への活用に向けた共同検討を開始する。

現状、複雑なプロセスで行われている貿易決済、あるいは貿易金融(トレードファイナンス)は、ブロックチェーン技術の活用によって作業の効率化やプロセスの短縮化が実現可能な分野として早くから期待されていた。実際、2019年から2020年にかけて、CoinDesk JAPANでも複数のニュースを伝えた。

だが、新しい取り組みの導入にはハードルもあり、海運大手マースク(Maersk)とIBMが共同運営していた「TradeLens」は、2022年11月にプロジェクト終了が伝えられた。TradeLensには、日系コンテナ船企業も参加していた。

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現在の貿易決済は、SWIFT(国際銀行間通信協会)を基盤とした銀行経由での米ドル決済が主流。決済にかかる日数やコストなどに改善の余地はあるものの、先進国同士の取引にさほど大きな問題はないという。

では、今回の共同検討はどこを狙っているのか?

ターゲットとなるのは、全世界の貿易取引総額(約2800兆円)の約4割(約1100億円)を占める新興国との貿易だ。対新興国貿易では、外貨規制や信用状取引の利用制限といった問題でスムーズな米ドル決済が難しい場合がある。

今回の共同検討は、STANDAGEが2017年から開発を手がける貿易決済システムと、「Progmat Coin」基盤を連携させて、貿易決済、つまりは国際企業間での決済を実現するものと言える。ブロックチェーンベースの貿易決済システムに、国産ステーブルコインを組み合わせることで、これまでハードルとなっていた米ドル決済の部分をクリアしようとするものだ。

Progmatの齊藤達哉氏は昨年9月、設立発表会で、Progmat Coinを基盤に発行の検討を進めている「国産ステーブルコイン」の一番のターゲットは「貿易決済」と語っている。

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コスト面では60%強の削減、所要期間では120日~180日の期間短縮が見込まれ、その結果、最大約40兆円の取引額が期待されるとの見方もある。

共同検討では、2024年内に初のユースケース創出を目指す。

ブロックチェーンを活用したさまざまな取り組み、いわゆるWeb3では、ゲームに代表されるエンターテインメントがマスアダプションをリードすると考えられている。一方、貿易決済、あるいは貿易金融は一般にはあまり知られていない分野だが、貿易立国としての日本のポジションに着目した取り組みであり、その市場規模は大きい。

今年は日本でもステーブルコインの登場が期待されており、ビジネス分野でのWeb3の活用は着実に進んでいくだろう。

|文・編集:増田隆幸
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