サム・バンクマン-フリード被告は50年の懲役に値するのか

連邦判事がサム・バンクマン-フリード被告の服役期間を決定するための準備が整った。現在、米司法省と弁護団はそれぞれの主張を提出し、FTXの債権者(検察側)とバンクマン-フリード被告の家族および友人(弁護側)からの陳述も提出された。

概要

弁護側、検察側の双方が、サム・バンクマン-フリード被告の裁判を担当する判事に対して、それぞれの量刑を主張する判決趣意書を提出した。弁護団はそれに加えて、FTXとバンクマン-フリード被告の周囲の人々からの補足書簡も提出し、法的な理由に加えて感情に訴える主張も示した。

バンクマン-フリード被告は来週、判決を受けるために法廷に戻る。米司法省は少なくとも40年の服役を望んでいるが、弁護側は数年で十分(そして司法省の勧告は馬鹿げている)と考えている。

連邦判事がどのようなアプローチをとるか推測することはここでは試みないが、判事が検討する可能性のある事項には、バンクマン-フリード被告の行為、FTX顧客の状況、そしてもちろん、裁判中に提出された証拠が含まれる。

弁護側と司法省の主張

ルイス・カプラン(Lewis Kaplan)連邦地裁判事は現在、来週の判決言い渡しを控えて、バンクマン-フリード被告の家族、FTXの元従業員、FTXの元顧客、その他さまざまな関係者からの文書を手にしている。

弁護側と司法省はそれぞれ、6年半の比較的軽い量刑か、50年の長期の量刑のどちらかを支持するよう判事を説得しようと、さまざまなコメントを発表した。ちなみに双方の求める量刑は、判決前調査報告書が示唆した100年の量刑からは遠く離れている。

バンクマン-フリード被告の弁護士は、被告は反省しており、FTXの破綻によって被告の人生は永遠に変わってしまったと主張している。弁護団によれば、被告にはFTXの件が常に付きまとい、再び仕事を得ることはできないだろうとのことだ。

司法省は3月15日、その回答(弁護側は後に「不穏当な」勧告と呼んだ)の中で、この32歳の青年を非難し、故意に法律を破り、事態を収拾しようとした被告の努力が事態を悪化させた可能性さえあると述べた。

「精神的打撃」

司法省は18日、FTXの元顧客からの被害者意見書を提出し、FTXの2022年の破綻が彼らの財政、健康、人間関係、生活に与えた影響を説明した。これらの書簡は、ほとんどが司法省の職員、判事、あるいはFTXに対する集団訴訟に取り組んでいる法律事務所の弁護士に宛てたもので、人々が倒産についてどう感じているか、また倒産による回収見込み額について詳述している。

「この試練による精神的打撃は圧倒的なものだった」と名前は伏せられているある人物は主張している。

これらの陳述の多くは、弁護側が提示した主張、つまりFTXが破産手続きを終えた後、FTXの顧客は全額返還を受け取れるという主張を狙い撃ちしたものだ。

その主張は正しいと言えば正しいが、顧客は保有していた暗号資産(仮想通貨)の2022年11月時点でのドル建ての価値を受け取ることができるということに過ぎず、暗号資産市場の最近の大幅な価格上昇の間も資産を保有できたとすれば得られたかもしれない価値ではないと債権者の多くは述べている。

さらに、資金を返してもらっても、顧客が資金にアクセスできなかった1年半の埋め合わせにはならないとの主張もあった。

被告の人柄

弁護側の提出書類はこれらの主張とは対照的で、そのほとんどが家族、元同僚、友人、寄付や「効果的利他主義」運動を通じて彼とつながりのある人々による、バンクマン-フリード被告の人柄を語るものだった。

これらの書簡の中には、FTX破綻時およびその直後のバンクマン-フリード被告の行動を取り上げたものもあれば、執筆者が知っている被告だけに焦点を当てたものもあった。

これらの書簡は、弁護側提出分も検察側提出分も、判事によって考慮される可能性が高い。

その他に考慮される要素としては、公判中のバンクマン-フリード被告自身の証言、および他の全員の証言が含まれる可能性が高い。司法省は提出書類で偽証を主張している。

また、この事件は陪審員にとって非常に明快に思えたため、12人の陪審員が7つの罪状すべてについて有罪判決を下すことに合意するのに数時間しかかからなかったという事実もある。

他に考慮されるかもしれない点としては、バンクマン-フリード被告が社会復帰した場合、再び詐欺を働くのか? 刑務所の外ではどのように振舞うのか? などがある。

「32歳にして、政府はサム・バンクマン-フリード被告を潰そうとしている。政府は被告の状態や弱さを完全に無視している。そのかわりに、科される刑は、被告が理論上詐欺を働く『可能性がある立場にいること』さえ『不可能に』しなければならないと、威嚇的に主張している」と、弁護側が19日に提出した書類には書かれている。

「それは具体的抑止力の恐ろしい解釈だ」

バンクマン-フリード被告への判決は、28日に言い渡される予定だ。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:サム・バンクマン-フリード被告(Nikhilesh De/CoinDesk)
|原文:Does Sam Bankman-Fried Deserve 50 Years in Prison?