サム・バンクマン-フリードに有罪評決──最大115年の懲役刑も:傍聴レポート

破綻した暗号資産(仮想通貨)取引所FTXの創業者で元CEO、サム・バンクマン-フリードは顧客と融資会社を欺いていたと、5週間にわたる裁判の末、陪審たちは結論づけた。量刑は2024年3月28日に下される予定。数十年の懲役刑(理論上は最長115年)となる見込みだ。

「サム・バンクマン-フリードは、アメリカ史上最大級の金融詐欺を行なった」と、7つの罪状すべてに対する有罪評決が明らかになった後、裁判所の外でダミアン・ウィリアムズ(Damian Williams)連邦検事は語った。

「この種の詐欺、この種の汚職は昔からあることだ。もう我慢できない」

控訴の可能性もある。 弁護人のマーク・コーエン氏はは声明で、バンクマン-フリードは陪審の決定を尊重するが、無実を主張し「精力的に闘い続ける」と述べた。

陪審員たちは午後3時過ぎ(米東部時間)に審議を開始した。午後7時40分頃、裁判官が評決に達したと述べた。弁護士とバンクマン-フリードが法廷に戻ると、すぐに有罪の評決が読み上げられた。

バンクマン-フリードは身動きせずに聞いていた。彼は裁判官から陪審席の方を見るように指示されており、陪審員も裁判所書記官と裁判官の方を見るよう言われていた。

「評決は全員一致です、裁判長」

これが7つの罪状、すべてに有罪と下した12人の陪審員からのメッセージだった。裁判官は陪審員に感謝の言葉を述べた。

陪審員が有罪判決を下したのは、偶然にも、暗号資産業界の大物の失脚を後押しした米CoinDeskのスクープ記事から1周年の日だった。

サム・バンクマン-フリードの両親

裁判長が有罪判決を読み上げると、傍聴席に座っていた被告の父、ジョセフ・バンクマンは膝に頭を埋めた。母親のバーバラ・フリードは、背筋を伸ばしたまま、どこか不機嫌な無表情でじっと前を見つめていた。

裁判官が退廷するとバンクマン-フリードは立ち上がり、弁護士が身を乗り出して彼に話しかけた。両親が彼の真後ろに来て、木製の仕切りのところでしゃがみこんでも、彼は振り返らなかった。

30人を超える記者が群がるなか、2人は腕を組んでバンクマン-フリードの背中を見つめていた。

バンクマン-フリードは法廷正面にある出口に連れて行かれたが、彼はまだ両親がいる傍聴席を見ようとしなかった。ドアまで来たとき、彼は両親の方を見て、少し笑みを浮かべ、小さく頷いた。

母親は驚いたように手を胸に当てた。

1カ月に及ぶ裁判

バンクマン-フリードは昨年12月に逮捕され、FTXの投資家、顧客、そして姉妹会社アラメダ・リサーチの融資元をだました疑いで裁判にかけられた。

彼はすべての罪状について無罪を主張した。検察は、彼の顧客の資金(約80億ドル)を、不動産、スポーツのスポンサーシップ、ベンチャー投資など、さまざまなものの購入や投資に使うために意図的に盗もうとした人物として彼を描こうとした。

弁護団は、バンクマン-フリードは疲弊したビジネスマンであり、彼は資金は顧客や投資家のものではなく、会社のものだと勘違いしていたと主張した。

バンクマン-フリードは「重大な過失があった」ことは認めたが、自分は誰かを騙したり、誰かの資金を奪おうとしたわけではないと述べた。

「顧客や従業員など、多くの人々が傷つき、結局、会社は倒産した」と裁判初日に彼は証言した。

「私はいくつかの小さなミスと、いくつかの大きなミスをした」

11月2日、裁判所の前に並ぶ検察団(CoinDesk)

FTXは、およそ1年前に破綻した。きっかけのひとつは、米CoinDeskのイアン・アリソン(Ian Allison)記者が、姉妹会社のアラメダ・リサーチはFTXの取引所トークン「FTT」を大量に保有していると伝えたことだった。さらにライバル取引所バイナンスのチャンポン・ジャオCEOのツイートが加わり、バンクマン-フリードが「FTXの取り付け騒ぎ」と表現した事態が起こり、最終的にFTX、アラメダ、FTXのさまざまな子会社が破産を申請した。

元CTO(最高技術責任者)ゲリー・ワン、元エンジニアリング責任者ニシャド・シン、アラメダの元CEOのキャロライン・エリソンなど、FTXとアラメダの幹部らは、さまざまな罪を認め、裁判ではバンクマン-フリードに不利な証言を行い、自分の行為は彼からの指示によるものだと述べた。他の多くの元従業員も同様に、バンクマン-フリードがFTXの事業の方向性を決めていたと証言した。

しかし、バンクマン-フリードは、自身が会社のトップとして対外的な役割を担い、規制当局や議員との交渉に忙殺している間、部下に会社を安全に運営するよう任せていたと主張した。

最終的に、バンクマン-フリードは、顧客に対する詐欺とその共謀、アラメダの融資元に対する詐欺とその共謀、FTXの投資家に対する証券詐欺の共謀、FTXの顧客に対する商品詐欺の共謀、マネーロンダリングの共謀で起訴されていた。

|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN
|画像:CoinDesk
|原文:Sam Bankman-Fried Guilty on All 7 Counts in FTX Fraud Trial
※敬称略