円高の抑制がナスダックとビットコインの反発につながる可能性
  • 記録的な円買いと機関投資家の資金流入の変化により、リスク回避の円高が鈍化する可能性がある。
  • これにより、ビットコインを含むリスク資産に安心感がもたらされる可能性がある。

これは偶然の一致かもしれないが、ナスダック(NASDAQ)とビットコイン(BTC)の最近の値下がりは、日本国債の利回りの急上昇と安全資産である日本円(JPY)の強化と時期を同じくしており、8月初旬に見られた市場力学を彷彿とさせる。

ここ数十年間、低金利の円が世界的な資産価格を支えてきたことを考えると、因果関係があるのかもしれない。現在進行中の円高は、ウォール街と暗号資産(仮想通貨)市場における最近のリスク回避傾向の一因となっている可能性がある。

しかし、マクロマイクロ(MacroMicro)が追跡しているアメリカ商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、投機筋は先週、過去最大のロングポジションを保有しており、日本円の強気なポジショニングは行き過ぎの感がある。このような極端な強気なポジショニングは、資産の継続的な上昇を信じる集団の信念を表しており、失望を招く舞台が整う。その後、ロングポジションの大量解消が起こり、急速な弱気転換につながる。

つまり、円高は当面は止まり、ナスダックやビットコインなどのリスク資産に安心感をもたらす可能性がある。

「投機筋のポジションが膨らんでいることや、国内からの押し目買い意欲が強いことを踏まえ、我々はさらなる円高を追いかけることには慎重になっている」と、モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)のG10為替戦略チームは3月7日の顧客向けメモで述べた。

[USD/JPYとJPY COT指数。COTの値がプラスであれば、強気のポジショニングであることを示す。:MacroMicro]

ストラテジストは、多くの日本の投資家がリスク回避の局面で外国資産を買い付けるためにNISA(少額投資非課税制度)を利用しているため、円高のペースが意図せず鈍化していると説明した。さらに、公的年金制度は円資産をリバランスする傾向があるため、この流れに逆行する。

「実際、2024年8月に急激な円高と顕著な株式の売りが見られた後、このようなシナリオが起こった」とストラテジストは指摘している。

歴史が繰り返されるのか、ナスダックとビットコインに新たなリスクオン心理が引き起こされるのかに注目しよう。米ドル/円相場は、7月と8月初めの1ドル=140円台への下落後、上昇に転じ、1月には158.50円まで上昇した。ビットコインも8月初めの5万ドルへの暴落から上昇に転じ、1月には10万8000ドルを超えて史上最高値を更新した。

記事執筆時点では、ビットコインは8万ドル付近で取引され、1カ月間ではほぼ5%下落し、2月の17.6%の下落をさらに拡大した。CoinDeskのデータによると、3月11日の早い時間帯には、価格が7万6800ドルまで下落している。

一方、TradingViewのデータによると、USD/JPYは1ドル=147.23円で取引され、11日の早朝には5カ月ぶりの安値となる145.53円を記録した。

一時的な安堵か

強気のポジショニングと機関投資家の資金流入が今後の安堵につながることを示唆しているが、これらの要因は、日米の国債利回り差の縮小を背景とする円高のより広範な見通しを大きく変えることはないだろう。

したがって、リスク資産の強気派は、円相場やより広範な金融市場におけるボラティリティの高まりを示す兆候に警戒する必要がある。

[アメリカと日本の10年国債利回りの差。:TradingView/CoinDesk]

上のチャートは、米国債と日本国債の10年物利回りのスプレッドを示している。

スプレッドは2.68%まで縮小し、2022年8月以来の最低水準に達した。さらに、マクロ的な上昇トレンドから急落しており、円の見通しが大幅に強気へと転換したことを示唆している。

|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin and Nasdaq Could Stabilize as Bull Positioning in Yen Appears Stretched