アメリカのM2マネーサプライが過去最高の約22兆ドルを記録──歴史的にはインフレに影響
  • アメリカのM2マネーサプライは5月に過去最高の21兆9400億ドルに達し、過去最高だった2022年3月を上回った。
    M2の前年比伸び率は4.5%で、約3年ぶりの高水準だ。
  • セントルイス連邦準備銀行によると、M2の上昇は遅れてインフレに影響を及ぼす傾向がある。

アメリカの通貨流通を包括的に測る指標であるM2が過去最高値を更新した。これは経済成長の兆候であると同時に、ビットコインの今後の動向については矛盾したメッセージを投げかけている。

barchart.comによると、現金と比較的流動性の高い銀行預金およびマネーマーケットファンド預金を含むM2マネーサプライは、5月末に過去最高の21兆9400億ドル(約3181兆3000億円、1ドル=145円換算)に達し、2022年3月の過去最高の21兆7200億ドル(約3149兆4000万円)を上回った。Yahoo!フィナンスによると、前年比の伸び率は4月の4.5%とほぼ3年ぶりの高水準だ。

[アメリカのM2マネーサプライ。:TradingView]

暗号資産(仮想通貨)に関しては、そのメッセージは曖昧だ。通常、マネーサプライの増加は金融緩和と経済成長のシグナルと捉えられ、投資家のリスク資産へのエクスポージャー拡大を促す。

一方、キプロスに拠点を置くTIOmarketsによると、マネーサプライの伸びが経済成長を上回れば、インフレにつながる可能性がある。インフレ懸念は投資家のリスクテイクを抑制し、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)に利上げ圧力をかける可能性がある。

近年、M2の上昇は、FRBが重視するインフレ指標である個人消費支出(PCE)の上昇に遅れて影響を及ぼしている。セントルイス連邦準備銀行はブログ投稿で、PCEは2020年2月にM2の伸びが急上昇し始めてから1年後の2021年2月に上昇に転じ、2023年にはM2の伸びを下回ったと指摘している。

歴史を参考にすると、M2成長率の継続的な上昇は数カ月後のインフレに寄与する可能性があり、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領が最近求めたようにFRBが金利を1%まで引き下げることはより困難になるだろう。

|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock
|原文:U.S. M2 Money Supply Hits Record High of Nearly $22T