分散化が単なるキャッチフレーズにとどまれば、イーサリアムは危険にさらされる:ブテリン氏
  • ヴィタリック・ブテリン氏は、暗号資産業界が分散化における具体的なユーザー保証に注力する必要があると強調。
  • イーサリアム・コミュニティ・カンファレンスで講演した同氏は、ユーザーのセキュリティを確保するため、ウォークアウェイテストやインサイダー攻撃テストなど、暗号資産プロジェクト向けの実用的なテストを提案。
  • 同氏は、レイヤー2ネットワークに潜む脆弱性について警告し、プライバシーをデフォルト機能とすることの重要性を強調。

イーサリアム(Ethereum)の共同創設者であるヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏は、暗号資産(仮想通貨)業界が急速に成長することを望んでおり、業界が「変曲点」にあると強調した。

フランスのカンヌで開催されたイーサリアム・コミュニティ・カンファレンス(Ethereum Community Conference)で、満員の聴衆を前にブテリン氏は基調講演を行い、明敏で現実的な認識を示した。分散化は、キャッチフレーズから、ユーザーに対する一連の具体的な保証へと進化しなければならず、そうでなければ空約束になってしまうリスクがあると主張した。

業界が大手企業や政治家の支持を得て主流化する中、開発者は、分散化とユーザーニーズに基づいた構築というエコシステムの重要な理念に立ち返る必要があるとブテリン氏は述べた。

ブテリン氏は、いつものジーンズと落ち着いたダークカラーのTシャツ姿で、全ての暗号資産プロジェクトが通貨すべき実用的な「テスト」を列挙した。これらには次のテストが含まれる。(1)ウォークアウェイテスト:アプリケーションを運営する企業が消滅した場合、ユーザーは資産を維持できるか?(2)インサイダー攻撃テスト:悪意のある内部関係者や侵害されたフロントエンドが、どれほどの損害を引き起こす可能性があるか?(3)信頼できるコンピューティングベースの有無:ユーザーの資金やデータを守るために、何行のコードを信頼する必要があるか?

ブテリン氏は、非常に多くのレイヤー2ネットワーク、DeFiプロジェクト、「分散型」フロントエンドが、隠されたバックドアや即時アップグレードボタン、または改ざんやハッキングの恐れがある安全でないインターフェースに依存していると警告した。

アイデンティティとプライバシーに関するソリューションに対しても、ブテリン氏は批判的な目を向けた。ゼロ知識証明は、ユーザーが中央集権型プロバイダーにサインインする際に、依然として取引履歴全体を開示し続ける場合、逆効果になる可能性があると同氏は指摘。プライバシーは、オプション機能として扱われるものから、デフォルトでデータ漏洩を減らすものへと転換する必要があると同氏は付け加えた。

イーサリアムブロックチェーンが稼働開始してから今月で10年を迎える中、ブテリン氏はここ数カ月、プロトコルの中核的な課題に対処するようコミュニティから圧力を受けてきた。そうでなければ、このブロックチェーンは競合に対する優位性を失う可能性がある。

ブテリン氏にとって、イーサリアムの歴史における次の段階とは、ウォークアウェイテストを通過し、信頼できるコードベースを縮小し、インサイダー攻撃に耐えるシステムを構築することだ。これには、エンジニアリングとシンプルで堅牢なソリューションのバランスを取ることも含まれる。

「この機会を逃せば、イーサリアムは必然的に一世代限りのものとなり、他の多くのものと同じように必然的に消え去ってしまうだろう」とブテリン氏は結論付けた。

|翻訳・編集:廣瀬優香
|画像:Shutterstock
|原文:Vitalik Buterin: Ethereum at Risk If Decentralization Is Just a Catchphrase