スイスやシンガポールを拠点とするデジタル資産銀行Sygnum(シグナム)は12月11日、アジア太平洋地域の富裕層に関する最新レポート「APAC HNWI Report 2025」を発表した。
同レポートによると、投資可能資産が100万ドル(約1億5千万円)以上あるアジアの富裕層(ハイ・ネット・ワース・インディビジュアル、HNWI)は暗号資産への投資を一段と拡大する意向を示している。調査対象者の60%が、今後2〜5年の見通しを踏まえ、暗号資産の投資配分を増やす準備があると回答した。
すでに87%がデジタル資産を保有し、そのうち半数近くがポートフォリオの10%以上を割り当てているという。
投資拡大の鍵は「利回り」と「ステーキング」
富裕層が投資を増やす上での重要な動機となっているのが「利回り」だという。
調査では、回答者の70%が「ETF(上場投資信託)にステーキング利回りが組み込まれるなら、配分を増やす」と回答。キャピタルゲインだけでなく、インカムゲインを得られる仕組みへの需要が強いことが明らかになった。

規制されたETFの枠組みの中で、ステーキング収益を享受できる商品設計への期待が高まっている。
BTC・ETH以外のETF需要も
また、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)の現物ETFだけでは不十分だと考える投資家が多いことも報告されており、回答者の80%が、そのほかの銘柄のETFを求めていることが明らかとなった。
具体的にはソラナ(SOL)への関心が52%と最も高く、次いで複数の資産をパッケージにしたマルチアセット・インデックス(48%)、XRP(41%)などが続いた。
課題はカストディと規制
レポートでは、伝統金融との融合に伴い、暗号資産への投資配分を増やす投資家が多いとする一方で、規制の不透明感やカストディ(保管)・セキュリティへの懸念、地域ごとのライセンス制度の違いが、投資拡大の主な障壁として挙げられている。
それでも長期的な成長見通しには強い確信があり、オンチェーン活動の増加やETF市場の拡大が投資家の強気姿勢を支えているという。
今回の調査はシンガポールや香港など10市場の富裕層と機関投資家270人以上を対象に行われた。同社はレポートの中で、アジアの富裕層がデジタル資産を単なる投機ではなく、「長期的な資産保全にとって重要」と見なしており、今後はプライベートバンクなど伝統的な金融機関による対応が急務になると分析している。
|文:橋本祐樹
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