金融庁が「金融行政とSDGs」を更新、地域金融機関のあり方など提示

金融庁はこのほど、2018年12月に公開した「金融行政とSDGs」の資料の更新版を発表した。前回全15ページだった資料は今回25ページに増やされている。「地域金融機関による顧客との『共通価値の創造』」の項目でページが増えたほか、前回はなかった「金融デジタライゼーション戦略」の取り組みが新設されている。ここから推察されるのは、こうしたテーマにおいて過去2年で動きがあったという実態、また金融庁がこれから力を入れようとしているという姿勢だ。

SDGsは2030年までの目標

SDGsとは「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals)のこと。2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で記載された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際的な目標だ。具体的には17のゴール・169のターゲットから構成されている。

言い換えれば、SDGsは2030年時点で「どういう状態になっているべきか」を示した目標。その対象はすべての人だ。その状態(ゴール)を達成する上では数々の課題があるが、解決のためのソリューションを提供したり実行したり、イノベーションを起こしたりするする過程で大きな市場があると考えられており、経済・実業界も次第に注目するようになってきた。

「地域金融機関の経営者は経営戦略の実行においてPDCAの実践を」

更新された資料の「地域金融機関による顧客との『共通価値の創造』」の項目で金融庁は、「『共通価値の創造』に向けた地域金融機関の経営のあり方」を提示。地域金融機関の経営者に対し、「確固たる経営理念を確立し、その実現に向けた経営戦略の策定とその着実な実行、PDCA の実践を図ることが重要」と指摘した。

さらに当局の取り組みとして、「地域金融機関の各階層(経営トップから役員、本部職員、支店長、営業職員)、社外取締役とフラットな関係で対話を実施」することを挙げた。

「金融行政とSDGs」より

同時に「地域金融機関の持続可能なビジネスモデルの構築に向けたパッケージ策」も示したほか、地域経済エコシステムの形成・深化のために庁内に設置したチームを紹介。地域課題解決支援チーム、地域課題解決支援室、地域生産性向上支援チームなどがあることを報告した。

「金融デジタライゼーション戦略における重点分野はこの5つ」

新設された「金融デジタライゼーション戦略」の項目では、データの利活用によって金融のあり方が大きく変わる状況にある中、ビッグデータの利活用などを通じたデジタライゼーションが海外で進展していること、データ政策をめぐって国際的な議論が活発化していること、暗号資産に関連した新たな構想も出現したことが紹介されている。

そのうえで、金融庁は次の重点5分野について、取り組みを加速するとしている。その5分野とは「データ戦略の推進」「イノベーションに向けたチャレンジの促進」「機能別・横断別法制の整備」「金融行政・金融インフラの整備」「グローバルな課題への対応」だ。

「金融行政とSDGs」より

日銀や全銀協、日証協などもSDGsに取り組み

SDGsについての取り組みは金融業界で活発化している。各金融機関が独自に取り組んでいるだけでなく、日本銀行は2019年6月、「SDGs/ESG金融に関するワークショップ」を開催している。

また全国銀行協会も同年3月、協会内の研究機関・金融調査研究会から資料を発表、この中で5つの提言を行った。たとえば「金融機関は、自らの成長戦略のなかにSDGsの具体的目標を組み込むことに加え、SDGs達成のため、資金の出し手としての役割を果たすことが重要」「金融機関は、すべての取引先の経営者との日々の接点を有するという特長を活かし、SDGsの内容を周知するとともに、環境・社会課題の解決に向けた取引先企業の取組みをさまざまな側面からサポートすることを通じ、SDGs達成に貢献することが重要」といったものだ。

このほか、日本証券業協会も「SDGsに貢献する金融商品に関するガイドブック」を発表、グリーンボンドやソーシャルボンドなどのSDGs債について、その仕組みや、投じられた資金がどのようなプロジェクトに使われるのかを例示するなどの取り組みをしている。

文・編集:濱田 優
画像:katjen / Shutterstock.com