動き出す米年金基金、巨大資金は仮想通貨・ブロックチェーンに流れるか?

動き出す米年金基金、巨大資金は仮想通貨・ブロックチェーンに流れるか?

巨大な資金を運用するアメリカの年金基金。その資金が仮想通貨・ブロックチェーンの領域に流れ込み始めている。

そして、この動きを証明するかのように、米バージニア州の2つの公的年金基金がモルガン・クリークが運用するブロックチェーン・ファンドへ投資をしたことが、2019年2月に報じられた

「機関投資家が入ってきた!」「こうなることを待ち望んでいた」—-歓喜の声は、イェール大学基金が2018年終わりに仮想通貨ファンドへ資金の一部を投下した時に聞かれた喜びに似ている。

やや大げさな反応ともとれるが、機関投資家たちの最近の大きなトレンドとして、仮想通貨・ブロックチェーン領域への参入は、その一つであることは間違いない。

大げさな反応

なぜ大げさと言わざるを得ないのか?

  1. 厳密に言えば、2つの公的年金基金ではなく、一つの投資プログラム(米バージニア州フェアファックス郡年金システム=Fairfax County Retirement Systems)の中の2つのセクションによる資本投下である。
  2. この2つの基金は、仮想通貨に直接投資したわけではなく、ブロックチェーンを中心とするベンチャーファンドへの投資を行った。スタートアップ企業に投資を行うこのファンドは、少額の仮想通貨を保有できるが(最大でファンドの15%)、現在までにその保有の事実はない。
  3. 今回の投資額は、2100万米ドル(約23億円)と極めて小さく、フェアファックス郡年金基金の総運用資産額の0.3%に満たない。
  4. 年金基金がベンチャーキャピタルに投資することは珍しいことではない。また、他の資産クラスにおいて高リターンを期待できない中で、平均を上回るリターンを求める投資ということではない。

追い風

一方、今回の年金基金による投資を踏まえて、今後さらに期待できることもある。

一般に年金基金と言えば、多くのファンドの中では最も保守的なファンドである。勇敢に挑戦的な投資をするファンドが、新たな領域に参入をするようになってきたという話ではない。むしろ、ブロックチェーンに対する投資がいよいよ成熟してきて、年金基金でさえもその流れに乗り始めていると解釈した方が良いのではないか。

年金基金は長期投資を好む側面がある。今回の動きは、多くのブロックチェーンプロジェクトが今後、急激に失速するようなことはないとするメッセージを発信しているのではないだろうか。

ただ、付け加えるべき点として、他の多くの年金基金が類似した投資を行っているわけではない。フェアファックス郡は人口が密集し、比較的に裕福な州の中の裕福なエリアである。

フェアファックス郡における年金制度の未来は、バラ色とは言えない状況にある。今回投資を行った2つの年金プラン(一つは郡従業員向け、もう一つは郡警察官向け)は、将来の債務に対する十分な資産を持っているわけではない。

進む高齢化は状況をさらに悪化させている。フェアファックス郡では、年金を受給する人の数が2025年までに、郡で働く従業員数を上回ると見られている。当然、郡の年金基金には、より多くのリターンを稼ぎ出す資金の投下先が必要となる。それが、仮により高いリスクを伴うものであったとしても。

フェアファックス郡に見られる状況は、全米の多くの地域にとっても類似した問題として取り上げられている。

ブルームバーグの報道によると、アメリカの公的年金基金における調達比率の中央値(現在保有する資産で、債務のどれほどをカバーしているかを示す率=Median Funding Ratio)は、約70%だという。中には、30%という低い比率に悩む州もある。

この状況を打破する一手として、年金基金は今後数年にわたって、基金のリスクプロファイルを変更する可能性はあるだろう。より高いリターンを求める投資は、あれば良いというものから、より必須なものへと変わっていく。同時に、基金の運用マネジャーたちは、相関性の低いオルタナティブ(代替)の投資候補を積極的に探って行くことになる。

特筆すべき点として、年金基金によるブロックチェーンへの投資の波をつくったのは、公的年金セクターだった。退職や年金に関するリサーチを行う機関、Center for Retirement Researchがまとめた報告書によると、公的年金基金のポートフォリオの72%は、株式やヘッジファンドを含むオルタナティブなどのリスクアセット。これに対して、民間の年金基金のリスクアセットは、ポートフォリオの62%だという。

資金の流れ

現時点で、機関投資家が本格的に仮想通貨・ブロックチェーンの領域で投資を拡大していると結論づけることはできないが、今後、他の公的年金基金による、暗号資産を含むブロックチェーンに関連する投資の発表がなされることは期待できるだろう。

保守的なファンドマネジャーたちは、他のファンドマネジャーに追随する傾向がある。また、暗号資産の市場は、インフラ面と流動性面においてさらに成熟する必要があり、年金基金の多額の資産の同領域への流れが、すぐに強まるようなことは考えにくい。

ただ、この資金の流れが始まったことは確かである。

翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:佐藤茂、浦上早苗
写真:New York City’s night view via Shutterstock
原文:Old Meets Young: Pension Funds and Crypto Investment

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