石油市場がビットコイン「安全資産」議論について語ること

石油市場がビットコイン「安全資産」議論について語ること

3月9日、金融市場の歴史的な混乱は株式にとどまらず、コモディティやビットコイン市場も沈めた。

「今、どんな資産も安全ではないと思う──米ドル以外は」と元エクソン(Exxon)のシニア中東アドバイザーで、コンサルティング企業Dragoman VenturesのCEO、アリ・ケデリー(Ali Khedery)氏は述べた。

週末、ビットコイン価格は10%近く下落した。一方、ロシアがOPEC(石油輸出国機構)の石油減産への協力を拒否するなか、サウジアラビアは石油輸出価格を引き下げた。コロナウイルスによる隔離施策は、走行する車の減少、経済の減速、そして石油需要の低下を意味すると専門家は警告した。

ClipperDataのコモデティリサーチディレクター、マット・スミス(Matt Smith)氏は現状を、サウジアラビアが「ロシアを交渉のテーブルに呼び戻す」ために、全員の利益を損なう思い切った動きに出た「供給過剰」の石油市場と表現した。

スミス氏は、各国にとって飽和状態にある市場を回避するためにサプライチェーンを再構成することは難しいだろうと述べた。

産油国によるマイニングの可能性

イランのような国はマイニング業界を使って、安価な電力をビットコインに変えることに興味を持っているようだが、スミス氏もケデリー氏も市場の代替物としてのビットコインにはまだ大きな関心はないと述べた。

「危機の時には、すべての市場は相互に関係する」とスミス氏は価格の下落とビットコインは「安全資産」であるというストーリーが矛盾することについて語った。

加えてイランの、あるビットコインマイニング施設の経営者は、補助金を受けた電力に対する罰金といった規制の後退によって、多くのマイニング施設は行き詰まっていると語った。

ビットコイナーは余剰電力がビットコインに変わる可能性に興奮しているかもしれないが、今のところ、OPECメンバーの間にそうしたアプローチのためにマイニングインフラを優先するような動きは見えない。

イランのマイナーは、地元産業は広範な市場危機を緩和する戦略をまったく持っておらず、少なくとも市民は誰も気づいていないと述べた。

だが仮に石油市場が下落し続けると「イラン、イラク、ベネズエラが崩壊する可能性がある」とケデリー氏は述べた。

「イランは深刻な問題に直面している」とケデリー氏は述べた。イランは制裁とコロナウィルスの流行の双方に影響を受けている。

安全資産のストーリーは反証されていない?

だが、ビットコイン強気派は動じない。

Electric Capitalの共同創業者、アヴィチャル・ガーグ(Avichal Garg)氏はビットコインは将来、安全資産になる可能性があるとツイートした。

ビットコイン投資家のツール・デメスター(Tuur Demeester)氏は、ビットコインの取引での優位を高めるために市場の広範な混乱状態を期待していると語った。

「危機の時に望まれるのは選択肢」とデメスター氏は述べた。

「人々は流動性のある資産に惹かれるだろう。(中略)(ビットコインを)売らざるを得ない人もいるだろう。しかし全体としては、我々は非常に健全な(ビットコイン)市場にいる」

同様にVanEck/MVISのデジタル資産戦略ディレクター、ガーバー・ガーバックス(Gabor Gurbacs)氏は、ビットコイン戦略を採用することはエネルギー市場に大きく関わる国にとって得策と述べた。

「今はオイルマネーシステムはまだ支配的で、米ドルは他の通貨を上回っている。だが国家はますます代替品を探している」とガーバックス氏は述べた。

さらに「ビットコインは比較的歴史の浅い資産で、まだ成熟した価値の保存手段ではない」ため、安全資産としてのストーリーは反証されたわけではないと付け加えた。

事実、1月の世界経済フォーラム年次総会(通称ダボス会議)では、複数の国がエネルギー市場の取引を決済するために代替通貨を積極的に探していると噂された。しかしフォーラム参加者は概ね、ビットコインはあまりに初期段階にあり、少なくとも現状ではドルの貧弱な代替品でしかないとして却下した。

「ロシアと中国は何年も挑戦しているが、失敗しているようだ」とケデリー氏は述べた。

いわゆるオイルマネーについては、各国は「実行可能な代替品が登場するまで、(米ドルを)置き換えることはできない」。

翻訳:下和田 里咲
編集:増田隆幸
写真:Shutterstock
原文:What the Oil Market Says About Bitcoin’s ‘Safe Haven’ Status

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