武漢封鎖の2ヵ月間、ブロックチェーンにできたこと【アフター・コロナ】

武漢封鎖の2ヵ月間、ブロックチェーンにできたこと【アフター・コロナ】

ウェイ・リュー(Wei Liu)氏は、デジタル貯蓄、ローン、決済のためのピア・ツー・ピアネットワーク「DeFiner.org」の事業開発責任者。中国の武漢近郊に住んでいる。

20以上のアプリケーション

私と家族にとって、2020年1月の春節(旧正月)は、新しい暮らしの始まりとなった。私は、新型コロナウイルスのパンデミックが始まった中国・武漢都市圏にある人口700万人の黄岡市に住んでいる。

2カ月を経て、都市封鎖はようやく終わりを迎えつつある。そこで隔離生活の中で学んだこと、特に、世界が直面している医療と経済の課題に対して、ブロックチェーンアプリケーションが解決策をもたらす様子を私の経験からシェアしたいと思う。

ブロックチェーンコミュニティーの連帯は、ウイルス発生時から明らかだった。

ブロックチェーンスタートアップは、地元当局と連携して休むことなく働き、医療データの収集・保護、医療サプライチェーンのトラッキング、医療従事者への重要情報の提供を行った。

2月の最初の2週間で、ベストチェーン・テクノロジー(Vestchain Technology)やアリペイ(Alipay)をはじめとする企業は、コミュニティーや最前線で働く医療従事者が直面した増大する課題に対応するために、少なくとも20のブロックチェーンベースのアプリケーションをリリースした。

その後、中国最大級の物流企業であるSFエクスプレス(SF Express)は、新型コロナウイルスの影響を受けた人たちに物資を届けるためにブロックチェーン技術を使い始めた。

7週間、自宅から出ず

ウイルスがもたらした課題に取り組むためにブロックチェーンが果たした役割を理解していただくために、その頃の武漢での私の経験をお話したい。

黄岡市は、新型コロナウイルスの流行が始まった場所に近い。当局は厳格な規則を設け、強力に執行した。

1世帯につき1人だけが外出を許されたが、それも生活に欠かせない必要性がある場合に限られた。市に出入りする道路は閉鎖され、警察が厳重に警備した。

政府は危険を冒して外出しようとする人向けのアプリまで作った。症状がなく、適切な期間隔離されていたことを証明できたユーザーは、当局がスキャンできる専用のQRコードを受け取る。QRコードに緑の線が表示されれば外出できるが、赤い線が表示されれば、自宅に留まらなければならない。

私は世帯内で指定された、必需品の買い物係ではなかったため、感染を防ぐために7週間をまるまる自宅で過ごした。当記事執筆時点で多くの制限は緩和されているが、まだ執行されているものもある。状況が完全に普段通りに戻るには、まだ多くの日数がかかることは明らかだ。

私の隔離生活は比較的恵まれていた。私はアパートではなく戸建て住宅に住んでおり、家族と同居していたため、この厳しい時期に愛する人たちに囲まれていた。

母はダンスをして活発さを保ち、幼いいとこは走り回ったり、飛び回ったりしていた。パンデミックの真っ只中でも、家族は健康で活発だった。

我々は皆、最終的に規制が解除されることを楽しみにしているが、私は、この経験は結束が強かった家族の絆をさらに強めてくれたと信じている。

DeFiが支援できることを探す

自宅から出られなかったが、私の仕事は常に分散型モデルで行われていたために影響を受けず、幸運にも仕事を続けることができた。私がここ数カ月で経験したことは、今、アメリカにいる私の同僚たちが直面し、折り合いをつけていることだ。

ロックダウンが始まって数日のうちに、私は通常の仕事をこなすだけでは不十分だと気づいた。私のようなブロックチェーンの仕事に携わる人間は、大きな夢を描くことを信じている。

私は、分散型金融(DeFi)コミュニティーの他のメンバーとともにオンラインで支援方法を探し始めた。

今回の危機は、ブロックチェーンとスタートアップの世界に強力なコラボレーションカルチャーを浸透させた。経済と人間の問題に効果的な解決策を提供することは、常に我々の業界を動機づけている。

私はこのことをバイナンス・チャリティー・ファウンデーション(Binance Charity Foundation)が重要な医療物資を必要としている病院に運び、追跡し、記録するサポートをしているときにすぐに理解した。

ブロックチェーンはイノベーションとディスラプション(創造的破壊)のカルチャーを持っているため、我々はきわめて迅速にコミュニケーションと決済の経路を確立することができた。

数週間のうちに、私はボランティアの仕事で1日に数千通のメールを受け取っていた。実際には会ったことのない人たちが、信頼できる友人、慈善活動の仲間になった。

我々のやり取りは主に、ウィーチャット(WeChat)やソーシャルメディアを使って行われた。ブロックチェーン技術を直接使うことはなかった。なぜなら我々の目的のためにはスピードとスケールの問題があり、ウィーチャットの方がより効率的だったからだ。

我々のミッションにとってはまだ十分ではなかったが、ブロックチェーンは日々改善されており、今も進行中の世界的な危機は、多くの開発者にインスピレーションを与えているはずだ(開発者の中には、ブロックチェーンの課題に対する解決策を生み出すために、今までなかったほどの時間的余裕を持つ人たちもいる)。

サプライチェーンと決済のためのブロックチェーン

もしも、このような状況が再び起こったとき、私はブロックチェーンインフラは準備が整っていると確信している。

パンデミックの間の私の仕事の大半は、タイムゾーンを越え、それまでに面識のなかった人たちの間の決済を手配することだった。強固な分散型金融(DeFi)インフラによって、作業は容易になったと思わずにいられない。

例えば、世界中の国々は、新型コロナウイルスの影響を受けた国民に、一時的、あるいは定期的にお金を分配しているが、その支払いには古いシステムが使われている可能性がある。

なかには、小切手の場合もあるだろう。経済援助を数週間も待っている多くの国の人たちの話を聞くが、今回の事態が政府のDeFi革命への参加を促すことを願っている。

同様に、適切に導入すれば、DeFiは今回のような危機の際に、銀行口座を持たない人たちを支援することができる。

中国は世界最大の人口を抱え、また世界で最も多くの銀行口座を持たない人たちを抱えている。そしてほとんどの国が同様の課題に直面している。

パンデミックの新たな中心地となっているように見えるアメリカでは、人口の約25%が銀行口座を持っていないか、十分な銀行サービスを受けることができていない。

私の仕事は、未来のDeFiプラットフォームを開発すること。新型コロナウイルスのような厳しい試練をもう二度と経験しないことを願っているが、私は、いかなる災害にも迅速に対応できるシステムを開発したい。

DeFiが完成すれば──それは刻一刻と現実になりつつあるが──当局はDeFiを採用し、経済危機への備えを改善させるだろうか?

誰もが世界の役にたてる

湖北省での危機が収まりつつあるなか、私はまだボランティアを続けている。同僚と私が開発したツールは、世界中の感染拡大の真っ只中にある病院を救うことができるかもしれない。

我々が受け入れに取り組んだことを、我々は今、外に届け始めている。もしも私の専門知識が誰かの暮らしをより安全にしたり、より楽なものにできるなら、私にはそうする義務があると感じている。

黄岡市の人々は、このウイルスがどれほど深刻なものかを知っている。ブロックチェーンコミュニティーはそれを目撃し、圧倒的な連携で対応した。

世界中の何百万人の人々と同じように、近所の人や同僚たちなどと再び対面で関わることができれば、私も安心できるだろう。同時に、新型コロナウイルスの感染拡大を遅らせることができた業界で働いていることに、ある程度の満足感を得ることもできるだろう。

このような規模の世界的な危機には、協調的で革新的なアプローチが大規模で必要となる。ブロックチェーン技術は、企業、病院、コミュニティーが混乱を乗り越えることをサポートするイノベーションを推進する能力がある。

皆が果たすべき役割を持っている。

マスクを縫えるなら、マスクを縫おう。保護具が余っているなら、寄付しよう。近所の人が高齢だったり、免疫力の弱い人なら、食料品の買い出しを申し出よう。外出する理由がないなら、自宅にいよう。

世界の役に立てる。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Shutterstock
原文:Wuhan Days: What I Learned About Blockchain From Two Months Under Lockdown

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