リブラは世界を脅かすは「大げさだ」──FRBエコノミスト

グローバルステーブルコインは世界を脅かすものだとする考えは大げさだ。デジタル通貨「リブラ」は当初の計画では、複数の法定通貨バスケットに裏付けられたステーブルコインだったが、アメリカの議員はそれがもたらすマイナス面ばかりに目を向けていただろう。

FRB(連邦準備制度理事会)の2人のエコノミストは、6月22日に公開されたレポートの中で述べている。エコノミストは、リブラを仮定のシナリオでシミュレーションし、経済に与える影響と普及の可能性を分析している。

昨年6月にリブラのホワイトペーパーが公開されると、評論家たちは、リブラは法定通貨を不安定なものにし、取って代わる可能性さえあると批判してきた。アメリカの一部の議員はプロジェクトの凍結を求め、オーストラリアの中央銀行は使用する者はいないと述べた。フランスの財務大臣は法定通貨の役割がき損する恐れがあるとして、リブラプロジェクトを阻止するとコメントした。

FRBのエコノミストは、これまで伝えられてきたリブラがもたらす脅威というものはそれ程でもないとする内容を、レポートの中で述べる。「我々のシミュレーションでは、バスケットがそれを構成する通貨のいずれかより優位になることはない」

議員はリブラに攻撃的すぎる

リブラ協会は今年4月に当初の構想を変更し、デジタル通貨「リブラ(LBR)」は、それぞれの法定通貨に裏付けられたステーブルコインで構成されるバスケットに裏付けられた「グローバルステーブルコイン」になる。

FRBのレポートは2月に書かれたもので、リブラの計画変更の1カ月後に更新されているようだが、それでも、エコノミストはリブラに対して、議員たちは攻撃的すぎたのではないかと疑問を投げかけている。

「もっとシンプルな疑問がある。つまり、バスケットに裏付けられた通貨は、現行システムに比べて、実質的な価値を提供するのだろうか?バスケットに裏付けられた通貨がバスケットを構成する通貨より優位に立つことはない。しかし、多くの売り手がバスケットに裏付けられた通貨を支払手段として受け入れるなら、世界の福祉に大きな利益をもたらす可能性があるだろう」

翻訳:下和田 里咲
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:米議員が作った「ザック紙幣」(House Financial Services Committee)
原文:Fed Economists Call Fears of Original Libra Stablecoin ‘Overstated’