資産としてのビットコインについて考える時がやってきた──資産とインフラを行き交う思考

資産としてのビットコインについて考える時がやってきた──資産とインフラを行き交う思考

はじめにビットコインがあった。そしてビットコインを使って、新たな資産が発明された。その新しい資産を使い、私たちの資本との関わり方が再定義された。

ビットコインはこれら双方を実現し、新しい形態のお金を生み出した。中央銀行も担保も必要としないお金。おそらく希少で、コードを書き、実行している人たちによってのみ支配されるお金を。

またビットコインは所有や取引の新たなモデルも生み出した。この新しいモデルには第三者や仲介者は必要ない。誰もが自分の資産を直接コントロールでき、純粋にピア・ツー・ピアな方法で移動させることができる。お金の新しい形態。所有の新しいモデルだ。

ビットコインとともに、新たな産業が生まれた。暗号資産(仮想通貨)業界、ブロックチェーン業界だ。ビットコインの誕生は、数千の新たな資産と、それらの資産と関わるための、同じくらい多くの方法を生み出した。

資産とインフラ

資産とインフラ、これら2つのイノベーションは多くの場合、同時に発生し、しばしば同じ理念のもとで生まれてきたが、混同すべきではない。新しい資産は、必ずしも所有や取引の新しい体験を生み出すわけではない。同様に、所有や取引の新しいモデルには、必ずしも新しい資産が必要なわけではない。

ビットコインが新しい資産と新しいインフラの双方の発明をもたらしたという事実は長い間、混乱の原因となり、混同を招いた。今は、その違いに注目すべき時だ。

暗号資産業界は長年、ほとんど認識することもなく、新しい資産の作成を優先することと、新しいインフラの構築を優先することの間を行ったり来たりしている。

2013年〜2015年

2013年から2015年にかけて、ジーキャッシュ(zcash)、モネロ(monero)、イーサリアム(ethereum)、リップル(Ripple)、ライトコイン(litecoin)、ドージコイン(dogecoin)をはじめとして、多くのアルトコインが誕生した。これらは新しい資産を象徴していた。またこれらの新しい資産の一部は、ユーザーが自らの資産や他のユーザーと関わり合うための、根本的に新しい方法を提供した。例えば、プライバシーやプログラム可能な特徴などだ。

ブランディング以外には、新しいものをほとんどなかった資産もあった。暗号資産業界は、どう対処すればよいかわからないような多くのものを抱えることになった。

2015年〜2016年

2015年から2016年には、新しい資産にすべて価値があるわけではないという教訓を学び、業界の関心の多くは古い資産にまつわる新しいインフラ構築へと向けられた。エンタープライズ・ブロックチェーンという分野が生まれた。

R3、チェーン(Chain)、シンビオント(Symbiont)、デジタル・アセット(Digital Asset)といった会社は、株式、債券、デリバティブ、スワップのような古い金融商品の再プラットフォーム化に注力した。

こうした会社は、新しい資産の作成という困難を回避した。しかし、彼らが直面したのは、より大きな困難の可能性もある問題だった。つまり、現状では豊かで強力な第三者に依存する、古くて確立した資産クラスについて、所有と取引の新しいピア・ツー・ピアのモデルをどのように生み出すかという問題だ。

この大きな問題にうんざりした投資家やオペレーターの関心のほとんどは、新しい資産に戻っていった。

2017年〜2018年

2017年と2018年は、皆が覚えているように、ICO(新規コイン公開)の年だった。テゾス(Tozos)、ポルカドット(Polkadot)、0xなど、再び、一部の新しい資産は新しい所有者に根本的に新しい体験を提供した。

他の多くの資産──ここで言及するには多すぎるほど多くの資産──はそうではなかった。過去にないほどの調達資金で巨額の資本を集めたが、多くの場合、ネットワークが動き出し、資産が発行されても、価値はほとんど生まれなかった。そしていつしか「暗号資産の冬の時代」と呼ばれるようになった。

2019年〜2020年

そしてこの2年は、インフラ、そして所有と取引の体験にまつわるイノベーションへの回帰が見られた。

分散型取引所(DEX)の台頭、ウォレット・プロバイダー間の新しい競争、ブロックチェーンベースの貸付・借入プロトコルの登場。これらすべては、新しい資産そのものを発明する取り組みではなく、私たちの自らの資産との関わり方にまつわる実験的取り組みだった。

DeFi(分散型金融)における実験的取り組みは、多くの面で有益であることが証明されている。現状はまだ一部の人たちだけだが、自らの資産を中央集権型の第三者に保管したり、流動性を提供することなく、双方向の純粋にデジタルな取引を初めて実現している。この新しいインフラであるDeFiの一番の限界は、対応している資産の多くがまだ、基本的、永続的な長期的価値を示せていないという事実によるものだ。

インフラから資産への揺り戻し

暗号資産におけるイノベーション、課題の発見、ブロックチェーンインフラ開発への移行、そして課題に直面して再び戻ってくるというサイクルを繰り返す変動パターンが現れている。まもなく(そしておそらく私が予期するよりも早く)関心の振り子はインフラから資産そのものにまつわるイノベーションに戻ってくるだろう。

事実、我々はすでに揺り戻しをユニスワップ(Uniswap)によるトークン発行といったDeFi(分散型金融)での動きの中に見ている。コミュニティトークンやガバナンストークンが絶えず登場していることは、より広い意味では、基本的な価値を持った新しい分散型資産を発行する方法を継続的に模索していることを表している。ノン・ファンジブル・トークン(NFT)への再注目なども資産重視への揺り戻しを示している。

「イニシャル・カントリー/カレンシー・オファリング(Initial Country/Currency Offering)」と中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する議論の復活もまた、実世界の価値をブロックチェーンのデジタルネイティブな世界に移植する方向への可能性を表している。

そして私はまた、こうした動きを追求することは、その価値を証明した数少ない資産であるビットコインへと関心を再び盛り上げるのではないかと考えている。

ジル・カールソン(Jill Carlson)は、非営利研究組織「オープン・マネー・イニシアチブ(Open Money Initiative)」の共同発起人で、ベンチャー投資家でもある。

翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:増田隆幸、佐藤茂
画像:Shutterstock
原文:How the Crypto Industry Seesaws Between Assets and Infrastructure

おすすめ記事: