ラガルドECB総裁、リブラをけん制か──ステーブルコインは深刻なリスク

米ドルなどに連動するステーブルコインが広く普及するようになれば、「金融の安全性を脅かす可能性がある」と欧州中央銀行(ECB)のクリスティーヌ・ラガルド(Christine Lagarde)総裁は11月30日、雑誌『L’ENA hors les murs』の記事で述べた。

ラガルド総裁は記事の中で、デジタルユーロの可能性を主張する一方で、暗号資産(仮想通貨)やステーブルコインなど、競合する可能性のある資産を批判。

暗号資産の主なリスクは、暗号資産支持者がプラスと捉えている性質、つまり、暗号資産は純粋にテクノロジーに依存し、明確な発行者や要求できる権利が存在しないことにあると、ラガルド総裁は述べた。その結果、暗号資産は流動性や、安定性、信頼性が欠如し、「通貨に求められる機能を果たさない」としている。

リブラをけん制か

一方、ステーブルコインはこうした課題を解決するための設計が施されており、決済領域におけるイノベーションを推進する可能性があるとしながらも、ラガルド総裁はステーブルコインが「深刻なリスクをもたらす」とコメントしている。

「ステーブルコインを価値の保存手段として用いることは、銀行預金からステーブルコインへの大規模なシフトを引き起こす可能性がある。銀行の事業や通貨政策に影響をもたらす可能性がある」

またラガルド総裁は、ステーブルコインの発行者が固定された価値を保証できなかったり、損失を吸収することができないと見なされた場合、取り付け騒ぎを引き起こす可能性もあるとも述べた。

フェイスブックが主導するデジタル通貨「リブラ」に対する批判とも思われる発言の中で、ラガルド総裁は、ステーブルコイン、「特にグローバルテック企業が支援するものは、(中略)ヨーロッパの競争力と技術的自律性にリスクをもたらす可能性もある」と述べた。

リブラ構想は2019年6月、そのホワイトペーパーが公開された。フィナンシャル・タイムズの報道によると、リブラ協会は2021年1月に限定的な形での発行を目指している。

「そうした企業の支配的立場は、競争や消費者の選択を損ねる可能性がある。データプライバシーや個人情報の悪用についての懸念を高める可能性もある」と、ラガルド総裁は述べた。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸、佐藤茂
画像:ECBのラガルト総裁(Shutterstock)
原文:Stablecoins ‘Pose Serious Risks’ to Financial Security, ECB’s Lagarde Says