【2021年見通し】ドル/円予想レンジは?バイデン政権誕生はどう影響する?──外為どっとコム総研・神田上席研究員インタビュー

【2021年見通し】ドル/円予想レンジは?バイデン政権誕生はどう影響する?──外為どっとコム総研・神田上席研究員インタビュー

2020年は新型コロナウイルスが猛威をふるった1年だった。その影響はビジネス、ライフスタイルのみならずマーケットにも及んだ。その影響がしばらく続くのは間違いないだろうが、20年が終わるこのタイミングで1年を振り返り、来たるべき新年の見通しはたてておきたい。そこで外国為替証拠金取引(FX)の振り返りと見通しについて、外為どっとコム総研の取締役調査部長で上席研究員の神田卓也氏( @KandaTakuya )に聴いた。

(かんだ・たくや)外為どっとこむ総研上席研究員。1987年福岡大学法学部卒業後、第一証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)を経て、メイタン・トラディション入社。インターバンク市場にて、為替・資金・デリバティブ等の取引業務を担当し、国際金融市場に対する造詣を深める。2009年7月、外為どっとコム総合研究所入社。

コロナ禍の2020年、注目度が高かった通貨はドルではなく……

──2020年のFX市場を振り返るとどんな年でしたか?

2020年のFXの取引高は過去最高になりそうです。10月末の時点で既に過去最高の2015年に迫る勢いで、11、12月を合わせれば更新は間違いないでしょう(金融先物取引業協会によると、1~6月の店頭FX53社の取引金額は3231兆円。半期として過去最高)。3月のコロナショック以降急増しています。リモートワークが増え、日中の投資がしやすくなったことが大きく影響しているでしょう。

通貨ペアでいうと、ドル/円は大きくは動いていません。取引高が増えたのは英ポンドです。ポンド/円も増えましたがポンド/ドルが増えたのが印象的です。アメリカ大統領選やBrexit(英国のEU離脱)による通商交渉に注目が集まりましたが、ドル/円ではなく、ポンド/円、ポンド/ドル、ユーロ/円、ユーロ/ドル、豪ドル/円などのデイトレが人気です。

──一昔前なら、豪ドルはNZドルなどとともにスワップ金利狙いの通貨という印象ですが、今はデイトレが多いのでしょうか。

世界的に低金利で高金利通貨がなくなっていますから、長期保有して金利収入を得るのが難しくなっています。

2021年の見通し バイデン大統領の誕生の影響は?欧州はどうなる?

──取引高が急増した20年を振り返り、21年の見通しは。

2020年を振り返ると、米中の対立、新型コロナウイルスの感染拡大対策、安倍首相の辞任、米国の大統領選挙など、政治がマーケットのテーマになった1年でした。これを踏まえて2021年も政治がテーマになりそうです。

まず米国はバイデン氏が次期大統領になることは間違いなさそうです。バイデン政権になれば経常赤字(貿易赤字)と財政赤字という、いわゆる双子の赤字が膨らみ、ドル安が進むと見るのが妥当です。1月にはそれを占うイベントがあります。まず1月5日にはジョージア州の上院2議席の決選投票があります。両議席とも民主がとれば、よりドル安が進むという見方が強まるでしょう。また1月には、最終週の火曜に一般教書演説があります。2月になるかもしれませんが、ここで具体的にバイデン氏の政策がみえてきますから、ドルの行方についても影響しそうです。

──2021年はドル安、つまり円高進行になりそうだと。

そうはいっても21年のどこかで反転すると見ています。コロナ禍が続いていますが、ワクチンの投与も始まったように、落ち着いてくれば景気回復軌道がみえてくる。あしもと拡大してきた金融緩和も奏功して、米国の景気回復のペースが早まるかもしれません。それに、ドル安とはすなわち、ドル売りポジションが積み上がっているということ。買い戻しがあればドルの反発になり得る。もちろんコロナが落ち着かず第4波、5波が拡大すれば別ですが、シナリオ通りいけば米景気の強さが見直され、ドルが高くなることは考えられます。

──なるほど。2020年にポンドが注目された欧州に目を向けるといかがでしょうか。

こちらも大きな政治イベントがあります。その最大のものはドイツで10月に予定されている総選挙です。引退するメルケル首相の後継を選ぶわけですが、ユーロ相場に影響するでしょう。あしもとドル安のためユーロ高の傾向にありますが、ドイツ総選挙の結果次第では反転させるきっかけになる可能性はあります。

欧州はBrexitでEUの結束が強まるという見方もありましたが、EUの予算案にポーランドやハンガリーが最初は反対するなど、足並みがそろっているようには見えません。それにメルケル首相の有力な後継も見当たらない状況です。ドイツ年明けに予定されている、与党・キリスト教民主同盟の党首選に注目が集まりますが、ドイツの政治の不透明さがユーロの重石になってもおかしくありません。

2021年のドル/円の予想レンジは……

──そうした概況を踏まえて個人投資家、特にFX初心者はどういう戦略で望めばいいでしょうか。お立場上、具体的に通貨ペアなどを勧めるのは難しいかもしれませんが……。

そうですね、ただ初心者が取り組みやすい通貨として考えられるのはやはりドル/円でしょう。投資家の方に向けたお話をする際は、取引する-しないではなく、ドル/円はしっかり見ておきましょうと話しています。理由はまず情報量が多いということ。そして値動きもポンドなどと比べてそう大きくないこと。さらに、比較的素直な動き方をするのでテクニカル分析がしやすい傾向があるからです。

──ドル/円についてはどの程度のレンジを予想されていますか?

まず年始にドル安局面がくるでしょう。そこでは1ドル100円を試すような動きがあるかもしれません。瞬間的な割り込みになるかもしれませんが、そこが(ドルの)ボトムで、それから反発すると見ています。そうしたことから、99円50銭から110円を予想しています。

取材・構成:濱田 優
画像:metamoworks / Shutterstock.com

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