IBMがブロックチェーンの開発チームを大幅に削減している。事情に詳しい4人の関係者への取材で分かった。
関係者の一人によると、2020年のブロックチェーン関連の売上目標が90%減となったことから、今回の人員削減につながったという。
「IBMは大規模な組織再編を進めている。ブロックチェーンチームはもはや存在し得ないだろう。IBMのブロックチェーン人材はほとんどいなくなった」と元IBMスタッフに話を聞いた、スタートアップに所属する関係者は述べる。
IBMのブロックチェーン部門は、2年連続で売上目標を達成できていないと、2人目の関係者は話した。エンタープライズブロックチェーンへの期待は大きすぎ、IBMは「多くの発表を行ったにもかかわらず、実際には達成できなかった」（関係者）
一方、IBMの広報担当者はこれを否定し、こうコメントしている。
「当社のブロックチェーン事業は順調に推移している。成長を継続させるため、一部のリーダーと事業部門を再編している。毎年、行っていることだ」（IBM・広報ディレクターのホーリー・ハースウェル（Holli Haswell）氏）
大規模再編
エンタープライズブロックチェーンに携わってきた元IBMスタッフは、「リソース・アクション（Resource Actions）」（RA）が続いていると話した。RAは、個人のパフォーマンスではなく、事業の業績に基づいた人員調整などのアクションを意味する。
「ブロックチェーン製品とエンジニアリングチームは、10％以下になったと思う。大規模な再編が行われている。IBMは現在、ハイブリッドクラウドに100%集中しており、それをサポートしていないものは、すべて優先順位が下げられている」（元IBM関係者）
IBMは2016年からブロックチェーン事業に多くの資金を投下しており、ブロックチェーンがさまざまな業界のビジネスを変える可能性があるとアピールしてきた。
IBMのブロックチェーン・イノベーションが今では一部の研究開発に限定され、コンサルティングさえ行われないのであれば、エンタープライズブロックチェーン全般、特にIBMが重要な役割を担っていたハイパーレッジャー（Hyperledger）の先行きは怪しいものになるだろうと関係者の1人は語った。
IBMは直近の通期決算報告で、全体の売上は6%減少したと発表している。2017年の決算では、IBMは自らを「ビジネスブロックチェーンのリーダー」と呼んでいた。
責任者はAI事業に移動か
IBMは過去数年、ハイパーレッジャー・ファブリック（Hyperledger Fabric）上に構築したさまざまなブロックチェーンネットワークを推進してきた。
代表的なものには、米ウォルマート（Walmart）の農産物トラッキングシステム「フード・トラスト（Food Trust）」や、海運大手マースク（Maersk）の輸送コンテナ用ブロックチェーン「トレードレンズ（TradeLens）」だ。また、サプライチェーン向けブロックチェーン「Trust Your Supplier」や国際決済のための「World Wire」も手がけている。
2020年、暗号資産（仮想通貨）とパブリックブロックチェーンは活況となったように思われたが、新型コロナウイルスによる経済的な打撃は、大企業のイノベーション部門に影響を与え、ブロックチェーンのような短期間で利益を生まない事業は縮小される傾向にある。
かつてIBMと仕事をしていたエンジニアは、昨年にはIBM内で100以上のブロックチェーン関連の仕事が削減されたと考えていると話す。匿名を条件に同エンジニアはまた、2016年当時、IBMのブロックチェーンの責任者で、ブロックチェーンのエバンジェリストだったジェリー・クオモ（Jerry Cuomo）氏はすでに移動し、現在はAI（人工知能）に携わっていると話した。
一方、広報ディレクターのハースウェル氏は「ジェリーは実際、IBMの戦略的かつ成長率の高い分野も加えて担当しているが、依然としてブロックチェーンに取り組んでいる。ジェリーはきわめて優秀なシニア・テクニカル・リーダーであり、IBMでは通例だが、役割が拡大している」と述べた。
また当記事掲載後に、ハースウェル氏から追加のコメントが寄せられた。
「IBMはブロックチェーンに専念する強力なチームを維持している。リソース転換は行ったが、テクノロジー・エコシステム・サービスに依然として責任を持っている。ブロックチェーンはクラウド事業を牽引すると考えている」
｜翻訳抜粋：石田麻衣子
｜編集：増田隆幸、佐藤茂
｜画像：Shutterstock
｜原文：IBM Blockchain Is a Shell of Its Former Self After Revenue Misses, Job Cuts: Sources
｜執筆強力：Zack Seward
｜編集部より：原文記事の詳細を追記し、記事を更新しました。
