イーサリアム規格「ERC-20」とは?──GWに学ぶ暗号資産の新知識

イーサリアムブロックチェーンのトークン規格「ERC-20」は、イーサリアムブロックチェーンと互換性を持つ暗号資産を作るための規格だ。

ERC-20規格は、暗号資産エコシステムのほとんどすべての領域に広がっている。ステーブルコイン「テザー(USDT)」やオラクルサービスのチェーンリンク(Chainlink)など、数多くの人気暗号資産はERC-20規格で作られた「ERC-20トークン」だ。

ERC-20トークンとは?

ERC-20トークンは誰でも作成できるが、そのほとんどは組織やテック企業によって作られている。各トークンは、プロジェクトの未来を決める投票権をユーザーに与えたり、特定のタスクに対して報酬を与えるなど、固有の機能を備えている。

ERC-20トークンは通常、プロジェクトの初期段階の資金調達手段として、さまざまな方法で販売される。過去には、あまりにも過剰な熱狂を呼んだり、怪しげな投資や詐欺の手段となっことで批判された。2017年の新規コイン公開(ICO)ブームで資金調達を行ったプロジェクトの多くは、投資家に利益を提供できなかったと伝えられている。

ERC-20規格は、各トークンの核となる機能を標準化したもので、この規格に則って作られたすべてのトークンは互いに互換性があり、またマイイーサウォレット(MyEtherWallet)やメタマスク(MetaMask)などのERC-20対応サービスと互換性がある。

その利便性を理解するために、トークン作成者がゼロからプロジェクトを構築する時に直面するいくつかの問題をあげてみよう。

  • スマートコントラクトの作成:スマートコントラクトは、トークンの全供給量やトークンの流通方法、発行スケジュールなどを決める際に、きわめて重要な役割を担う。また、保有者の残高を確認したり、トークンの移動を円滑にするなどの主要な機能も担う。
    こうしたスマートコントラクトの記述は、複雑で時間のかかるプロセスであり、通常は専門の開発者チームが必要となる。非常にコストがかかることであり、スマートコントラクトが正しくプログラミングされていなければ、壊滅的な影響を及ぼす可能性がある。
  • ウォレットや取引所との互換性:ERC-20規格を使わずに暗号資産を作成すると、ウォレットや取引所などとの互換性を確保するために追加作業が必要になる。

ERC-20のFAQ

ERC-20の特徴は?

  • イーサリアムブロックチェーン:ERC-20トークンは、イーサリアムブロックチェーン上に構築される。
  • スマートコントラクト:トークンの機能はスマートコントラクトで管理され、トークンを運営するために信頼できる第三者(人や組織)を必要としない。ルールや条件が一致すれば、プログラムは自動的に実行される。
    例えばトークンを誰かに送る時に、誰かを信頼して委ねる必要はない。

ERC-20には、開発者が実装しなければならない複数の機能がある。主なものは以下のとおり。

  • totalSupply:トークンの総供給量を決める機能
  • balanceOf:特定のアドレスが保有するトークンの数を表示する機能
  • transfer:所有権を別のユーザーに移す機能

ERC-20トークンでできることは?

  • クラウドファンディング:イーサリアムアプリの開発者はときに、クラウドファンディングでプロジェクトの資金を調達する。投資家は公式ローンチ前に新しく作られたトークンを割引価格で受け取ることができる。
  • 投票権:トークンはプロジェクトの決定に関する投票に使うことができる。その場合、多くのトークン保有者は、より大きな影響力を持つ。
  • 物理的なモノを表す:トークンはゴールド(金)のような資産の所有権を表すことができる。
  • 取引手数料:イーサリアムブロックチェーンでの取引には、手数料決済のオプション(選択肢)が含まれている。ネットワークが混雑している場合は、ガス代と呼ばれるネットワーク手数料をより多く支払うことで、より速く取引を行うことができる。
  • 新機能:イーサリアムでは、プロジェクトが必要とする機能を満たせないことがある。そのため、開発者は必要な機能を持つ新しいトークン(暗号資産)を作成する。

ERC-20規格の未来は?

ERC-20規格のメリットは多いが、完璧とは言えない。ERC-20規格の“重大な問題点”が悪用され、少なくとも300万ドル(約3億3000万円)相当の盗難被害が報告されている。また、イーサリアムブロックチェーンが混雑すれば、処理には長い時間がかかる。

開発者は、こうしたERC-20の問題点を回避してプログラミングする必要がある。ERC-20をリプレイスする可能性のある「ERC223」「ERC777」などの研究開発も長期にわたって行われている。しかし、ERC-20は依然として最も人気のある規格だ。

ERC-20トークンはどれくらいある?

イーサリアムのデータを提供するイーサスキャン(Etherscan)によると、2020年12月時点で829のプロジェクトと、35万以上のトークンがERC-20規格に基づいている。

どの暗号資産がERC-20トークン?

ERC-20規格を使って作成された暗号資産は、下記を含めて、驚くほど多くが存在する。

  • テザー(USDT)
  • チェーンリンク(LINK)
  • バイナンスコイン(BNB)
  • USDコイン(USDC)
  • ラップドビットコイン(WBTC)
  • ダイ(DAI)

|翻訳:山口晶子
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:What Is the ERC-20 Ethereum Token Standard?