マスターカード、暗号資産決済を加盟店が導入可能に、21年後半

マスターカード(Mastercard)は2021年後半、加盟店が客の暗号資産での決済を行える機能を提供する。米CoinDeskが報じた。

事情に詳しい関係者によると、機能は顧客が暗号資産で行った支払いに限られるという。対象となる暗号資産や、実施される国などはまだ明らかになっていない。

この取り組みは、デジタル通貨による決済を「自社ネットワークに直接統合する」としたマイケル・ミーバック(Michael Miebach)CEOの第4四半期決算報告での発言に関連するものだろう。同氏は1月28日、就任後初の四半期決算報告を行い、顧客と同様に加盟店にも最大の柔軟性を提供すると述べていた。

マスターカードはすでに、暗号資産による支払いを実現しているが、一部のカードのみに限られ、加盟店との決済は法定通貨で行われてる。

新しい取り組みでは、そうしたお金の流れが変わることになり、法定通貨のエコシステムの枠組みを超えたビジネスを展開できるようになる。

ビットコインではなく他の暗号資産か

ビットコインは「長期保有するもの」という考え方が浸透しており、その有効性は定かではない。関係者は、ほとんどのビットコイン保有者は決済手段ではなく、投資手段と考えていると指摘する。またビットコインがサポートされるとは限らないと強調した。

暗号資産はマスターカードが2019年に定めた「Principles for Blockchain Partnerships」に基づいて評価されることになると関係者は述べた。この年、同社がフェイスブックが主導する暗号資産「リブラ」から離脱したことを受けて発表されたこの文書は、提携においては、安定性、消費者保護、規制遵守を重視するとしている。

「現在存在している2600のデジタル通貨の多くは、この基準を満たしていない」と当時、マスターカードは述べていた。

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当記事公開直後に公開されたブログにおいて、マスターカードのブロックチェーン・デジタル資産製品担当エグゼクティブ・バイス・プレジデント、ラジ・ダモハラン(Raj Dhamodharan)氏は、取り組みではステーブルコインを優先する可能性が高いと述べた。

「暗号資産についての我々の哲学はシンプルだ。選択の問題であり、マスターカードは、お客様に暗号資産の利用を推奨するわけではない。我々の目的は、顧客、加盟店、企業がデジタルな価値を移動できるようにすること」(ダモハラン氏)

マスターカードと暗号資産の関係

現状、暗号資産での決済を受け入れている加盟店は少数だ。テスラはビットコインでのEV販売を計画していると述べたが、まだ仮定の話にすぎない。暗号資産が広く普及した世界は依然、実現にはほど遠い。

マスターカードは、デジタル通貨分野の特許を何年にもわたって取得し、将来に向けての基礎を築いている。同社によると、89件のブロックチェーン特許を保有し、さらに世界中で285件の特許承認を待っているという。

アメリカでの特許出願には、暗号資産での取引を非公開にする方法や、ブロックチェーンでのクレジットカード決済の検証、ブロックチェーンでの決済処理の迅速化、暗号資産での返金の処理方法などが含まれている。

マスターカードは2013年にビットコイン決済に関する特許を初めて申請したが、2015年には申請を取り下げた。2019年にはウォレット開発者と暗号資産に詳しい人材の採用を開始した。同社は現在、各国の中央銀行が中央銀行デジタル通貨(CBDC)をテストできるプラットフォームを運用している。

決済分野においては、2009年にビットコインが、国境を超えたピア・ツー・ピアの変更不可能な取引という概念を切り開いて以来、かつてないペースで暗号資産をサポートする方向に向かっている。

ペイパル(PayPal)は2021年後半、ビットコインを使った決済機能の提供を開始する予定。VISAのCEOも、将来、暗号資産による決済を追加する可能性があると述べている。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Mastercard Will Let Merchants Accept Payments in Crypto This Year