ビットコインは環境の敵か?──法定通貨のカーボンフットプリントを考える

ビットコインは環境の敵か?──法定通貨のカーボンフットプリントを考える

ビットコイン(BTC)に批判的な人たちは、そのカーボンフットプリントをビザカードでの取引と比べようとする。法定通貨を維持するインフラが環境にもたらす影響や、法定通貨がもたらす甚大な付随的影響は無視して。

このような二次的影響を考慮していけば、法定通貨が環境に及ぼす負荷はビットコインよりも桁違いに大きい。

地球上の膨大な銀行インフラ

地球のどこの街角でも、法定通貨の二次的フットプリントを目の当たりにすることができる。

アメリカだけでも、8万店の銀行支店、47万台のATM。さらには地球上のあらゆる都市にそびえる高層ビル群。加えて目に見えない部分もある。アメリカのGDPの8.4%は金融と保険が占めており、これは製造に次ぐものだ。

つまり、数百万人がオフィスへと向かうために地下鉄や車に乗り、パンデミックの際には代わりに大量のパソコンとコールセンターを動かして、蛍光灯の下で紙幣をやり取りしている。ビザの取引などはまったく比べ物にもならない。

それは良い時の話だ。法定通貨の場合には、悪い時もたくさんある。法定通貨は、FRB(米連邦準備制度理事会)が生まれて以来、景気循環のサイクルを突き動かす貨幣創出のペースを操作することによって、5〜6年ごとにアメリカで不況を引き起こしてきた。

人間に与える損害以外にも、不況は数十兆ドルもの富を破壊する。このような富には莫大な資源が使われ、生み出すために大量の二酸化炭素が排出された。

不況コストを算出する

このような不況のコストをビットコインと比べられるものへと置き換えるために、GDPの1ドルのカーボンコストの推計の中でも最も一般的なものを利用して計算してみよう。1ドル当たり1.5kWHだ。

次に、サトシ・ナカモトにビットコインを生み出すきっかけを与えた2008年の金融危機に失われたとされる富をFRBが推計した数字を使い、2つを掛け合わせる。そうすると、この1つの不況の間に破壊された富を生むのに使われたエネルギーは、1万6500TWh(テラワット時)となる。世界全体に与えた影響を考慮すれば、この数字は3倍ほどになるかもしれない。

現代の不況と、その背景となる好況と不況の循環サイクルは完全に、法定通貨が生んだものだ。政府は資本の分配に介入し、実体経済に打撃を与え、実際に暮らしを破壊するような形で、貨幣供給をランダムに操作している。

徒競走における5秒の遅れを距離で測定するのと同じように、不況のコストは失われた富を再構築するのに必要な資源で測定できる。中央銀行の操作の空間から購買力を取ることで、ビットコインは好況と不況の循環を引き起こす能力を抑制、あるいは排除さえできるのだ。

法定通貨よりもグリーンなビットコイン

ビットコインを最も痛烈に批判する人たちでも、その分散型ネットワークが1年間に消費するエネルギーは86TWhに過ぎないと考えており、そのうちアメリカ由来のものはおそらく16TWhで、その大半がグリーンエネルギーだ。

ビットコインのエネルギー消費が2008年の金融危機に匹敵するためには、500〜1000年かかる計算だ。そして次なる不況は、繰り返し常にこの先に控えている。500〜1000年相当のエネルギーが、GDPの8.4%、8万の銀行支店と47万台のATM、そして高層ビルにかかるエネルギーに加わるのだ。

こうして対比すれば、中央銀行の方がビットコインよりずっと汚染をもたらすことが分かる。

事実、中央銀行は、想像し得る限り最悪の環境負荷を与える業界だろう。中央銀行が不況を引き起こす能力をビットコインが少しでも抑えることができれば、自らの環境負荷を何重にも相殺することができる。

例えば、ビットコインが中央銀行による不況の可能性や規模を2%だけでも減らすことができれば、消費するよりも多くのエネルギーを節約することになる。最終的にはカーボンフットプリントがマイナスになるのだ。そういう意味では、ビットコインはこれまでに人類が発明した中でも最もグリーンなテクノロジーの1つだ。

中央銀行について考えてみる

もちろん、法定通貨に付随する環境負荷は、不況だけにとどまらない。インフレ、景気循環、量的緩和は経済的混沌と人々の困窮、政治的につながりのある業界の救済、法定通貨が支払う戦争へとつながる。

これらにはそれぞれ、炭素排出と人間への犠牲が伴う。法定通貨は、中央銀行を通じて政府が必要な資金を魔法のように生み出せるようにすることで、政府が好調な場合には国民も好調という、納税者と徴税する側の自然な共存関係を歪ませる。

政府は無責任で、銀行家と政治家は密接な関係を持ち、アルトコインはいまだに未成熟という世界に生きていることを考えれば、経済を何度も何度も再構築するための莫大な環境と人的コストを抑制してくれる見込みが最もあるのはビットコインだ。

新しい家の屋根を省略することは、その時点では環境に優しいかもしれないが、5〜6年ごとに建て替えをしなければならないのなら話は別だ。環境を本当に優先させたいなら、ビットコインが地球上で最も環境破壊を行う産業である、中央銀行について考えなければいけないだろう。

ピーター・St. オンゲ(Peter St. Onge)博士は、元教授でミーゼス研究所(Mises Institute)に在籍。オーストリアの経済やビットコインについて執筆活動を行っている。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:What’s the Carbon Footprint of Fiat Money?

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