JPモルガン、人材募集に浮かぶ暗号資産への野心

米銀最大手のJPモルガン・チェースは、増え続けるデジタル資産関連業務に対応するため、暗号資産(仮想通貨)に精通した人材を求めている。

コンプライアンス、規制関連、決済関連の人材募集は、グローバル決済ネットワーク子会社の「オニキス(Onyx)」に留まらないようだ。同プロジェクトは、世界中の金融機関を結ぶ決済ネットワークの構築を目指しており、人材を積極的に採用している。

一方、少なくとも4月からJPモルガンの求人情報に掲載されている6つのポジションは、同行が複数の観点で暗号資産の関連業務の強化を図っていることを証明している。募集地域は、ニュージャージー州、イリノイ州、香港と多岐にわたっています。

さらにこうした採用計画は、JPモルガンが徐々にデジタル資産を重視するようになっていることを裏付けるものだ。ジェイミー・ダイモン(Jamie Dimon)CEOは長年、ビットコインに対して否定的な考えを述べてきたが、JPモルガンは暗号資産分野に乗り出そうとしている。

JPモルガン・広報担当に取材を試みたが、詳細についてのコメントを控えた。

決済、規制、アジア

JPモルガンにとって暗号資産の最も魅力的な部分は、消費者を対象にした決済手段の分野かもしれない。同社の決済処理事業「Merchant Services」は年間取引高が1兆ドルを超え、暗号資産の活用を検討する「New Payment Methods」チームを組織している。

求人情報には、チームのバイスプレジデントは「早期にシニアリーダーのサポートを得て、新しい決済方法に関するプロダクト戦略を実現するために、最も影響力の大きなサードパーティとの関係構築に優先順位をつけ、交渉、契約するための戦略を実行する」と書かれていた。

また、JPモルガンは、コンプライアンス部門にも「暗号資産リスクマネージャー」を2、3名追加する方針だ。リスクマネージャーは、複数の部門での「デジタル資産に関連するリスクの特定・管理・軽減」を担う。また、常に変化するデジタル資産の規制状況を理解することも欠かせない。

ダイモンCEOは、4月の株主向け書簡で、規制の問題を「深刻な新しい問題」と呼んだ。同CEOは、アメリカにおける暗号資産の規制強化の重要性を繰り返し警告している。

暗号資産やDeFi(分散型金融)に関する取り組みの多くは、アメリカ国外、特にアジアで生まれている。JPモルガンはアジアでも暗号資産に関する法的な取り組みを進めようとしており、5月中旬、アジア太平洋地域におけるデジタル資産や他のテクノロジーに関する規制の変化を捉えるために、規制関連の人材募集を開始した。

暗号資産エコシステムへの参入には慎重だったが、JPモルガンは数年前からブロックチェーン関連技術の開発を進め、「JPMコイン」を使った担保資産のトークン化やクロスボーダー決済に取り組んでいる。

デジタル資産プラットフォーム

オニキスでも、最近の求人情報では珍しく、暗号資産領域の人材をダイレクトに狙っている。

5月中旬に掲載された「シニア・デジタル資産プラットフォーム・エンジニアリング・リード(Senior Digital Assets Platform Engineering Lead)」の募集要項では、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)のメカニズムを理解し、イーサリアム(ETH)とビットコイン(BTC)の経験がある候補者を求めている。

この件に詳しい関係者によると、この職種の役割は特定のプロジェクトに関するものではなく、「エンジニアリング開発チーム全体の強化」を目的としているという。この関係者は、JPモルガンが「デジタル資産プラットフォーム」の構築に取り組んでいる可能性にはあまり関心を払わなかった。

JPモルガンは、このプラットフォームについてのコメントを控えた。米CoinDeskが取材を試みた後、募集要項の「デジタル資産プラットフォーム」の文字は削除された。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:JPMorgan Job Posts Hint at Bank’s Broader Cryptocurrency Ambitions