「悔いはない」──ソフトウエアの大物から暗号資産の問題児へ、ジョン・マカフィーの軌跡

「悔いはない」──ソフトウエアの大物から暗号資産の問題児へ、ジョン・マカフィーの軌跡

ジョン・マカフィー(John McAfee)──ソフトウエア業界のパイオニア、元大統領候補、暗号資産起業家にして報酬を受け取って暗号資産を宣伝した男──は、波乱万丈の人生を送った。

彼は自身の名を冠し、莫大な富をもたらしたセキュリティソフトウエアと同じくらい、ドラッグ、女性、銃が盛りだくさんのエピソードで知られている。だがコンピューターの歴史において極めて重要な人物だった彼の暗号資産における足跡は、失敗したプロジェクト、守られなかった約束、詐欺まがいの行為によって汚された。

それでもマカフィーは100万人以上のツイッターフォロワーを抱える、ある種の象徴的存在だった。彼は6月23日、スペインの勾留施設で死亡している姿が発見された。

マカフィーは国家権力を徹底して嫌い、2020年にスペイン警察に拘束されるまで、さまざまな国の警察当局に追われていた。2018年には「暗号資産コミュニティに最も良く仕えるため」に米大統領選に出馬。選挙運動の大半を公海上で行った。大統領選への出馬はこれが2度目だった。

スペインの司法当局によると、自殺の可能性が高いという。遺体が発見される数時間前、スペインの高等裁判所は暗号資産関連も含む脱税容疑でのアメリカへの身柄引き渡しを承認していた。

マカフィーは、テネシー州とマンハッタンで、税関連の犯罪容疑と、暗号資産から得た収入を開示しなかった罪で指名手配されていた。また、2014〜2018年に講演やドキュメンタリー番組への出演で得た収入を開示しなかった罪にも問われていた。

米証券取引委員会(SEC)は3月、2300万ドル以上の暗号資産収入を隠蔽したとして、マカフィーを告発。最大30年の懲役刑を受ける可能性があった。

「アメリカは私が暗号資産を隠していると思っている」と、マカフィーは6月16日にツイッターに投稿。この一連のツイートが彼の最後のツイートとなった。

「隠し財産があればうれしいが、マカフィーチームの多くの人の手にわたってなくなった(信じてもらう必要はない)。残りの財産はすべて押収された。友人は、私とつながりがあると思われることを恐れて、去ってしまった」

「私には何もない」
「だが、悔いはない」

CEOから指名手配犯へ

イギリスで生まれ、米バージニア州で育ったマカフィーは、「McAfee VirusScan」と名づけた初の商用ウイルス対策ソフトウエアを発表した。1987年に設立したMcAfee Associatesはインテルに売却したが、このソフトウエアとのつながりを断ち切ることはできなかった。

2013年には『How to Uninstall McAfee Antivirus(McAfee Antivirusのアンインストール方法)』と題した動画を発表。疲れた目をしたマカフィーが、自身のPCを撃つシーンも映っていた。

同じ年には、「テクノロジーはもううんざり」とUSAトゥデイに語った。数十年にわたるキャリアの中で、関心はソフトウエアから抗生物質、反監視テクノロジーにまで及び、最終的には分散型テクノロジーに新たな目的を見出した。 この業界に期待し、入れ込んだ。

2012年、アメリカ人男性の殺人事件の重要参考人となっていたベリーズを出国。グアテマラに逃げたが、そこでも当局に勾留された。その後、マイアミ経由でシアトルへ向かい、2016年に大統領選にリバタリアン党から出馬するまで、柄にもなく目立たない生活を送っていた。

2014年には、「D-Central」と呼ばれる分散型ネットワーキングツールを開発するスタートアップ、フューチャー・テンス(Future Tense)を創業。インターネットを使わずにメッセージやファイルを匿名で送るためにメッシュネットワークを使うためのツールだった。

その2年後には、MGTキャピタル・インベストメンツ(MGT Capital Investments)に参加。CEOとして、スポーツやゲームから、暗号資産マイニングへと同社の事業を転換させた。友好的に同社を去った後、2018年にはエンタープライズブロックチェーンのスタートアップ企業、ラクスコア(Luxcore)に加わった。

ICO(新規コイン公開)ブームの真っ只中には、多くの企業やプロジェクトから報酬を受けて宣伝を行った。宣伝用ツイート1件につき、10万ドル(約1100万円)以上を請求したと報じられている。宣伝のために背中に「Skycoin」というタトゥーを入れたこともあった。

SECから、マカフィーが言うところの「脅迫」を受けるようになった後、こうした儲かる仕事は終止符を打った。以降は、風説の流布による価格操作に関わった疑いなどが報じられた。

2019年6月には、取引プラットフォーム「マジック(Magic)」を公開、独自の暗号資産「フリーダム・コイン(Freedom Coin)」を発行すると発表した。その1カ月後には、船上から次のようにツイートした。

「私は120万人のフォロワーを抱える大統領候補。私の犯した罪は、税務申告をしなかったことで、それは犯罪ではない。それ以外は、私を沈黙させるためのアメリカ政府によるプロパガンダだ。私の声は、反対意見を代表する声。私が沈黙させられたら、次は反対意見そのものが沈黙させられるだろう」

(敬称略)

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂、増田隆幸
|画像:ジョン・マカフィー(CoinDesk archives)
|原文:‘I Regret Nothing’: McAfee’s Wild Ride From Infosec Exec to Crypto Bad Boy

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