お金の未来:7つの大胆シナリオ

お金の未来:7つの大胆シナリオ

お金の未来についての予測には、慎重で賢明、冷静で地に足のついたものもある。ここでは“そうではない”予測をお届けしよう。

未来の可能性を大胆に考えるために、この記事では「可能性が高い」とか「確実」といった通常の考え方は排除した。その代わり、我々が考えるお金のあり方に、もしかしたら、大きた変革をもたらすかもしれない、大胆なシナリオを考えてみよう。

機能性よりも面白さ、確実性よりも可能性を重視した。考えてみると、我々は今、猿のイラストが数百万ドルで取引され、犬をテーマにしたミームトークンの時価総額が数十億ドルにのぼり、国家がビットコインを法定通貨として採用する世界を生きている。

1. リスクのトークン化

リスクをトークン化できたとしたら? 賢く行えば、システム内のリスク全体を減らし、2008年の金融危機のような事態を防ぐことができると、DeFi(分散型金融)投資家で、分散型取引プラットフォーム、ユニスワップ(Uniswap)のアドバイザーを務めるアシュレイ・シャップ(Ashleigh Schap)氏は語る。

こんな風に考えてみよう。あなたが個人として、あなたが抱えるリスクと債務を表すトークンを持っているとする。自動車ローンのトークン、住宅ローンのトークン、レバレッジを効かせた信用取引アカウントのトークン。そしてすべてのリスクトークンを合計すれば、リスクの全体像をつかむことができる。

もっと大きな視点で考えてみよう。コミュニティ内、業界全体、さらには経済全体における、各個人のリスクトークンをすべて合計する。それらのトークンはすべて、スマートコントラクト(プログラム可能なお金)なので、「より根本的な方法でシステムに組み込む」ことが可能になるとシャップ氏は述べる。

シャップ氏はこれを、伝統的金融の限界と比較する。最も顕著な例は2008年の金融危機。各企業はそれぞれ個別にリスク予想を持っていたが、システムの全体リスクを包括的に把握できていなかった。リスクをトークン化できれば、パズルのピースをすべて合わせて「根本的に全体像を評価できる」。

2. 車がお金を使い、自ら保険に入る

今年2月、ライトニング・ネットワークの開発を手がけるライトニン・ラボ(Lightning Labs)のトップ、エリザベス・スターク(Elizabeth Stark)氏は、次のような予測を語った。

「マシンは、マシンに対して即座にお金を支払う機能を最初から備えるようになる。(中略)電気自動車のテスラはライトニングを使って、充電費用を支払うようになる!」

これは一例に過ぎない。可能性は無限大。

シャップ氏は「工場にあるマシンは、インクが無くなったら、自ら注文できるようになる」と述べる。さらに刺激的なシナリオとしては「自ら保険を購入できる車やトラックが登場するかもしれない」。リスクを評価し、賢い決断を下す能力を備えた車が登場するだろう。「雨が降ったら、少し高めの保険に入ることもできる」。

今はどの自動車保険を選んでも「車を運転しない日も含めて、毎日、保険料を支払っている」とシャップ氏は指摘した。忙しくて、保険会社と毎月、ましてや毎日やり取りする時間はない。

しかし車が、天気、交通状況、走行する地域など、常にリスクを分析し、保険を調整できるとすれば?(ただし、完全な知性を備え、世界を支配する一歩手前で)

3. 何もせずに支払い完了

これは思っているよりも早く実現するかもしれない。私は以前、デンバー・ブロンコスの試合を見にいった。スタジアムには、未来からテレポートしたかのようなビールの売店があった。

まずクレジットカードをスキャンする。そして回転式ゲートを通り、冷蔵庫が並んだ部屋に入る。あとは好きなビールを選ぶだけ。バーコードをスキャンする必要もなければ、店員とやり取りする必要もない。カメラとGPSセンサーの複雑なネットワークによって、正しい本数のビール代金が確実に請求されるようになっていると係員が説明してくれた。

金融モデルプラットフォーム、ガントレット(Gauntlet)の共同創業者兼CEOで、ブロックチェーン企業へのシード投資を手がけるロボット・ベンチャーズ(Robot Ventures)のゼネラルパートナー、タルン・チトラ(Tarun Chitra)氏は、こうした未来の買い物体験を想像しているが、そこではクレジットカードや財布、スマートフォンは必要ない。

アマゾンのような中央集権型企業ではなく、暗号資産とステーブルコインによって実現され、プライバシーも守られる。「欲しいものを取り、立ち去るだけ」とチトラ氏は述べる。例えば「100ドル未満だったら自動的に請求する」というような合意をスーパーと結んでおけばよい。

4. ディナーの価格はビットコイン建て

「ビットコインでコーヒーを買う」というアイデアは今は、少なくともアメリカのような先進国ではジョークのようなものだ。しかし、いずれ実現すると、ビットコイン投資サービスを提供するスワン・ビットコイン(Swan Bitcoin)の創業者コリー・クリップステン(Cory Klippsten)氏は考えている。

「交換手段としてのビットコインは、多くの人が資産の大半をビットコインで保有するようになるまでは実現しない」とクリップステン氏は指摘する。つまり、「ほかに支払いに使える手段がなくならない限り」、ビットコインを支払いに使うことは合理的ではない。だがいつか必ず実現すると考えている。

「誰もビットコインを支払いに使いたくない。リスクに対して、史上最も優れたリターンが得られる投資だから」。そして、世界がどのように変化するかの先例として、資産の大半をビットコインで保有する大物ビットコイナーたちに触れた。

彼らはビットコインを長期保有し、ビットコインでリッチになった。だが、どこかの時点で、いざとなれば必然的に車やヨットの購入などのために保有するビットコインの少なくとも一部を使うことになる。

クリップステン氏は、価値の保存手段としてのビットコインは広く普及し、当たり前のものになるので、人々はいずれビットコインを使う必要性が生まれると予想している。

2つの「S字カーブ」が描かれたグラフをクリップステン氏は思い描いている。1つは価値の保存手段としてのビットコインの普及、もう1つは交換手段としてのビットコインの普及を表す。

「我々はまだ、価値の保存手段のS字カーブの最初の平らな部分にいる」。そして劇的に普及した後に、人々は交換手段のS字カーブに移行するという。

「ほとんどの人たちは、ほかに支払いに使える手段がなくならない限り、ビットコインを支払いに使うことはない。つまり、交換手段としての普及カーブ(緑)は、価値の保存手段としての普及カーブ(黄)よりも遅くなる。

2035年までに、世界中のほとんどの場所で、ほとんどのモノやサービスをサトシ(ビットコインの最小単位)建てで買えるようになるだろう」

ドルなどの法定通貨もまだ存続しており、国際空港のように値札には複数の価格が表示されると考えている。もちろん、ビットコイン価格は上昇する。クリップステン氏は「ビットコイン価格が9年後に100万ドル未満である可能性は極めて小さい」と予測している。

5. トークンが現金を駆逐

まず、トークンが至るところに普及した世界を想像して欲しい。暗号資産投資会社アルカ(Arca)の最高投資責任者ジェフ・ドーマン(Jeff Dorman)氏が「この先5〜10年で、世界中のすべての企業が資本構成の中にトークンを保有する」と予測したように。

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こうしたトークンはハイブリッド。部分的には株式のようなものであり、ロイヤルティプログラム。企業の価値が高まれば、トークンの価値も高くなる。

さらにドーマン氏は、ロジックをさらに展開し、以下のように予測する。「住宅資産や車、宝飾品といった流動性が低い実世界の資産のトークン化も始まり、同様に、大学の学費トークンや医療費トークンなど、将来の債務を表すトークンも登場するだろう」。

そしてここからが、本題だ。

ひとたびあらゆる資産がデジタル化され、流動性を持てば、「もう2度と現金を持つ必要はなくなる。資産は常に100%投資した状態に保つことができ、必要に応じて資産を担保に借り入れを行って、日用品の支払いに充てることができる。投資手段と支払い手段のギャップを埋めることで、暗号資産は、純粋にお金として機能する資産の必要性を究極的に取り除く」とドーマン氏は考えている。

6. 自宅が銀行になる

これは「車が保険に入る」というシナリオをさらに発展させたものだ。少しでも暗号資産に触れたたことがあれば「自分自身の銀行になれ」というフレーズを聞いたことがあるだろう。しかしチトラ氏は、自宅や車がそれ自体のための銀行になったら、と考えている。暗号資産の世界では、DeFiの流動性プールのおかげで「望めば、誰もが貸し手になれる」とチトラ氏は指摘する。

誰もが貸し手になれるだけでなく、あらゆるものが貸し手になるかもしれない。「IoT(モノのインターネット)機器、車、建物、何でもよい」。今、自宅を担保に借り入れするためにリート(REIT:不動産投資信託)のようなものを利用することは、さまざまな銀行手続きを伴う、退屈で苦痛な手作業。「それがほとんどすぐに実行できるようになる。あらゆる建物が、それ自体の銀行になるから」とチトラ氏は述べる。

チトラ氏はさらに、思考実験を展開して、「世界で最もリッチなものは、壊れた電気自動車テスラになる」と語る。つまり、テスラが壊れると、ウーバー(Uber)で報酬を得ていた未来の世界では、仕事ができず、稼げなくなる。そしてテスラは「持っているお金で唯一できることは投資」と悟る。壊れたテスラには他にできることがないため、徐々に投資を覚え、腕を磨いて、スーパートレーダーとなり、「無一文から大金持ちになる」。

このシナリオは行き過ぎだろうか。最後のシナリオは、それ以上だ。

7. 銀河を越える

シャップ氏はこのシナリオは、はるか先の未来と前置きしつつ、「技術的に発展を続けて、宇宙に行けるようになったとしたら(我々はその方向に進んでいる)、お金は変わらなければならない。なぜなら時間が変わるのだから」と語る。そして、チャールズ・ストロスのSF小説『Neptune’s Brood』にインスパイアされたアイデアを提示する。

400光年離れた別の銀河に向かおうとした時、「遠く離れた場所に着いた時には、お金はきわめて違った意味を持つようになっているだろう」。地球を飛び立ってから、10年、100年、あるいは1000年が経過するかもしれない。お金にそうした時間の劇的な変化を考慮する機能を組み込めるとすれば?

「さまざまなクラスのお金が登場すると考えている」とシャップ氏。「ある惑星で使う当座のお金」、そして「同じ銀河で使える、中期的な」お金が登場するとシャップ氏は予測する。さらにシャップ氏が「スローマネー」と呼ぶお金も生まれる。スローマネーは「はるかに価値があるが、時間と空間を超えて移動する必要があるため、スローになっている」とシャップ氏は語る。

スローマネーは、まもなくコインベースに上場する。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:7 Wild Scenarios for the Future of Money

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