年間成長400%超でも「負け組」、激化するPoS銘柄の争い【Krakenリサーチ】

2020年はコンセンサスメカニズムのPoS(プルーフ・オブ・ステーク)が生まれた年だったとすれば、2021年はPoSがシェアを拡大した年だった。

クラーケンが昨年買収した暗号資産(仮想通貨)インフラ大手Stakedの四半期レポートによると、市場全体の時価総額に占めるPoS銘柄の割合は3割を超える。そして2022年、今度はPoS内での勢力争いが激化する年になる可能性がある。

この記事では、2022年、PoS銘柄同士の競争を展望する上でカギとなるテーマを解説する。

「PoSデカコーン」は8銘柄 時代はPoWからPoSへ

PoW(プルーフ・オブ・ワーク)は、ブロックチェーンで取引記録の承認をするのに必要なコンセンサスメカニズムの一つ。PoWのネットワークに参加するコンピューター(ノードと呼ばれる)は世界中に分散しているが、それらのコンピューター同士が取引記録の検証作業で競争をする仕組みになっている。

具体的には、条件を満たすハッシュ値を探すという演算競争で、一番早く解を得たコンピューターが報酬をもらえる仕組みだ。

対照的にPoSは、マイナーが存在しておらず、代わりにバリデーターが取引記録の検証を行う。一定の仮想通貨をPoSのネットワークで長期保有(ロック)することで、バリデーターがブロックを検証・承認する権限を獲得する(ステーキングする)仕組みだ。

時価総額1位のビットコインと同2位のイーサリアムが現在、PoWを採用しているが、イーサリアムは2022年にPoSに移行することが見込まれる。イーサリアムでは、メインのブロックチェーンのPoS移行に先駆けてビーコンチェーンと呼ばれる別のブロックチェーン上で既にステーキングを開始した。2022年にはビーコンチェーンとメインのブロックチェーンが統合することになる。

(時価総額ランキングとPoS銘柄/Staked, CoinGecko)

Stakedのレポートによると、2021年終了時点で、暗号資産全体の時価総額に占めるPoS銘柄の割合は31%。1年間で時価総額は127%上昇した。ビットコインを除外すると、PoS銘柄の占有率は50%になる。また、時価総額ランキングトップ10の暗号資産でPoSは5銘柄、トップ100では25銘柄がランクインした。さらに、時価総額が10億ドル以上のいわば「PoSデカコーン」が8銘柄も誕生した。

2021年にPoS銘柄の中でとりわけパフォーマンスがよかったのは、ポリゴン(MATIC)、ニア(NEAR)、フロー(FLOW)だった。

(ポリゴン(MATIC)、ニア(NEAR)、フロー(FLOW)の成長率/Staked, CoinGecko)

PoS限定の時価総額ランキングをみると、ポリゴンは9位から7位、ニアは15位から9位、フローは27位から18位に上昇している。

2022年1月25日時点で、PoS銘柄トップ25の時価総額は年初来、35%下がった。ただ、時価総額ランキングトップ10には依然として5銘柄がランクインし、「PoSデカコーン」は前年と変わらず8銘柄となっている。暗号資産マーケット全体が崩れているが、PoS銘柄の相対的なパフォーマンスに変化はみられない。

イーサリアム──ライバルと救世主

イーサリアムはPoS銘柄の中で依然、首位を走っているが、PoS銘柄同士で過去1年間の時価総額の伸び率を比較すると、イーサリアムのパフォーマンスは見劣りする。過去1年間の時価総額はイーサリアムは415%のプラスだったのにも関わらず、他のほぼ全ての上位PoS銘柄の増加率がそれを遥かに凌いだ。

(PoS銘柄の成長率とランキング/Staked, CoinGecko)

背景には、イーサリアムを使ったNFTやDeFi取引における手数料(ガス代)が高騰していることがあげられるだろう。

ただ、イーサリアムの「救世主」と言えるイーサリアムのレイヤー2ソリューションが勢いを増している。代表的なレイヤー2銘柄は、アービトラムやオプティミズム、StarkExだ。イーサリアムのメインのブロックチェーン自体(レイヤー1)ではなく、異なるレイヤーで取引記録の処理をすることで、イーサリアムの手数料を88%から100%削減することに成功した。

イーサリアムのレイヤー2は、イーサリアムの「コンセンサス・レイヤー(イーサリアム2.0)」と呼ばれる大型アップグレードが完了するまで、イーサリアムへの需要をつなぎとめる役割が期待されている。

(イーサリアムのレイヤー2の技術基盤、1秒あたりの取引数(TPS)、スワップのコスト、TVL(預かり資産)/l2fees.info, Defillama, Nansen, Bankless, Staked)

暗号資産業界内で着実に存在感を高めるPoS銘柄。2022年は、PoS銘柄内で競争が激化することが見込まれる。イーサリアムのアップグレード、イーサリアムのライバルたち、そしてイーサリアムの救世主であるレイヤー2の進捗が、しばらくマーケットの注目テーマとなるだろう。


千野剛司:クラーケン・ジャパン(Kraken Japan)代表──慶應義塾大学卒業後、2006年東京証券取引所に入社。2008年の金融危機以降、債務不履行管理プロセスの改良プロジェクトに参画し、日本取引所グループの清算決済分野の経営企画を担当。2016年よりPwC JapanのCEO Officeにて、リーダーシップチームの戦略的な議論をサポート。2018年に暗号資産取引所「Kraken」を運営するPayward, Inc.(米国)に入社し、2020年3月より現職。オックスフォード大学経営学修士(MBA)修了。

※本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。


|編集・構成:佐藤茂
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