ウクライナ政府、寄付された暗号資産で重要物資を購入──すでに約12億円を支出

ウクライナ政府は、ロシアの侵攻に対抗するために寄付された暗号資産(仮想通貨)を使い、ガソリン、食料、軍事物資などの重要物資を購入している。当記事執筆時点で、すでに約1000万ドル(約12億円)が使われた。

ブロックチェーンのデータを見ると、寄付された暗号資産はキエフに拠点を置く暗号資産取引所Kunaが開設した政府のウォレットから、他のデジタルウォレットに分配されている。

「大勢の人たちが避難している。避難した人たちのためにガソリン、食料、水を買うためのお金を送っている。現地で物資を調達可能な軍人にも一部、送金している」とKunaの創業者マイケル・チョバニアン(Michael Chobanian)氏はコメントした。政府はドローンや暗視ゴーグルも購入しているという。

CoinDeskは、ウクライナ支援に関連する3つのデジタルウォレットに1600万ドル(約18億円)以上の暗号資産が流入したことを確認している。現地NPOが開設したウォレットには、当記事執筆時点で700万ドル(約8億1000万円)以上のビットコインが集まっている。Kunaが25日、政府に代わって開設した他の2つのウォレットには27日までに800万ドル(約9億2000万円)以上が集まった。

チョバニアン氏は28日、さまざまな暗号資産とステーブルコインによるウクライナ政府への寄付総額が1200万ドル(約13億8000万円)を超えたとツイートした。ブロックチェーンデータ分析会社エリプティック(Elliptic)は28日、政府と非政府組織(NPO)への寄付は2000万ドル(約23億円)に達したと述べた。

従来の支払い方法よりも効率的

ブロックチェーンのデータによると、政府に寄付されたビットコインはかなり迅速に分配されている。寄付されたビットコインのほぼすべて、約400万ドルはすでにさまざまなウォレットに送られている。

「暗号資産を使って、ヨーロッパでなんとか物資を調達している。暗号資産業界の多くの友人が協力してくれている。我々は友人たちに暗号資産を送り、友人たちはユーロで物資を購入している」とチョバニアン氏は述べた。

同氏によると、暗号資産による支払いを受け付ける業者が増えており、暗号資産は従来の支払い方法よりも効率的と認識されつつあるという。

「従来の方法でお金を送ることは本当に難しい。まず第一に、時間がかかる。次に、面倒な手続きなどが多い。暗号資産なら本当に早い。受け取ったら、ほぼすぐに使える」

チョバニアン氏は27日、政府は複数の高額な買い物にお金を使う予定と述べたが、それ以上の詳細には触れなかった。28日、多額のイーサリアムがウォレットから移動している。

「我々は現時点では、政府のための暗号資産銀行のようなものだ」(チョバニアン氏)

寄付された暗号資産がすべてすぐに使われているわけではない。ウクライナのNPO「Come Back Alive」のウォレットには、約700万ドル(約8億1000万円)のビットコインが眠っている。同NPOのウォレットから移動したのは、まだ160万ドル(約1億8000万円)相当のビットコインのみ。つまり、危機の瞬間にも数百万ドルはそのままになっている。同NPOにコメントを求めているが、まだ返答はない。

一方、ウクライナの中央銀行は、同国の通貨市場を停止し、現金の引き出しを制限している。チョバニアン氏によると、お金を効率的に分配するために、これらの制限を解除する取り組みが行われているという。

ウクライナのすべての暗号資産取引所は、ほぼ同じ状況とチョバニアン氏は述べた。「我々は団結している。今やらなければ、それまでだと理解している。さもなくば、我々の国には未来がない」。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Ukraine Government Is Using Crypto Aid to Purchase Critical Supplies