2月のNFTは小休止、 今後のカギはユーティリティ系?【Krakenリサーチ】

2月のNFTマーケットは小休止となったようだ。

ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの暗号資産(仮想通貨)相場は、1月に総じて値を下げる中でも、NFTマーケットの規模は順調に拡大を続けてきた。しかし、2月はいくつかの重要指標で取引活動の停滞が見られた。

(1日あたりの取引数(紫の実線)、1日あたりのユーザー数(紫の点線)、1日あたりの取引量(赤の実線)、1回の取引あたりの平均取引量(赤の点線)/Kraken Intelligence)

1カ月前と比べて、1日あたりのユーザー数は−24%、1日あたりの取引数は−26%、1日あたりの取引量は−60%、そして1回の取引あたりの平均取引量は−46%だった。

2月は、JPモルガン・チェースが分散型メタバースのDecentralandにラウンジを開設。マクドナルドがメタバースにおける商品やサービス、さらにはレストランやカフェの商標を出願したことが明らかとなった。

また、仮想通貨資産マネジメントのArcaが、NFT特化の投資ファンド向けに5000万ドルの資金調達を行った。

下の表は、2月のNFTコレクションの時価総額ランキング。

(Kraken Intelligence)

2月に取引額が大きかったNFT:

⦁CryptoPunk #5822 8000ETH
⦁CryptoPunk #8620 375ETH
⦁EST #4682     21万4347MANA
⦁Bored Ape #7488 148.005ETH
⦁Bored Ape #6327 144.01ETH
⦁CryptoPunk #7895 140ETH

上記からCryptoPunkやBored Apeに代表されるPFP(プロフィール画像)コレクション系のNFT、Decentralandに代表されるメタバース系のNFT、もしくはAxie Originsなどゲーミング系のNFTが大半を占めていることが分かる。

今後のカギはユーティリティー系?

NFTマーケットの足踏みは、投資家が新たなトレンドを探している過渡期を意味いみしているのかもしれない。例えば、ユーティリティー系のNFTは、まだ取引量は多くないが、業界の期待が高いジャンルの一つだ。

PFPのコレクション系は、2021年からNFT市場を牽引するジャンルで、画力やコミュニティ力が価格を支えており、基本的には安く買って高く売ること(Flipと呼ばれる)がリターンを得る戦略だった。

一方でユーティリティ系は、NFTを保有することでクリエイターやアーティストと一緒に何かができる特典であったり、NFTを担保にしてローンを組めたりできることに特徴がある。長期保有の理由を、単に「絵が好きだから」ではなく、NFTを保有することで得られる特典にしたいという発想だ。

Nonfungible.comによると、ユーティリティー系の月間アクティブウォレット数は約5万6000個で、コレクション系の約5分の1にとどまっている。ただ、2月はコレクション系のアクティブウォレット数が29万9184個から右肩下がりで、最終的に15%減少した。一方、ユーティリティ系は5万3461個で始まり、一時は過去最高水準の6万3000個付近まで増えた後、6%のプラスで終えた。


千野剛司:クラーケン・ジャパン(Kraken Japan)代表──慶應義塾大学卒業後、2006年東京証券取引所に入社。2008年の金融危機以降、債務不履行管理プロセスの改良プロジェクトに参画し、日本取引所グループの清算決済分野の経営企画を担当。2016年よりPwC JapanのCEO Officeにて、リーダーシップチームの戦略的な議論をサポート。2018年に暗号資産取引所「Kraken」を運営するPayward, Inc.(米国)に入社し、2020年3月より現職。オックスフォード大学経営学修士(MBA)修了。

※本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。


|編集・構成:佐藤茂
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