アルゴリズム型ステーブルコインはまだ終わりではない【コラム】

アルゴリズム型ステーブルコインはまだ終わりではない【コラム】

アルゴリズム型ステーブルコインはもうお終いなのだろうか?

1ドルの価値を持つはずだったデジタル資産「TerraUSD(UST)」は先週、派手に暴落。かつては時価総額180億ドルを誇ったこのステーブルコインは現在、ドルとのペッグとは大きく逸脱した60セントを下回る価格で取引されている。

テラのエコシステムを手がけるテラフォーム・ラボ(Terraform Labs)はネットワークを救おうと、30億ドル相当のビットコイン(BTC)を動員し、ブロックチェーンを一時休止させた。USTの姉妹トークンLUNAを市場に溢れさせ、ボラティリティの高い状況につけ込もうとする裁定取引トレーダーたちを思いとどまらせようとした。

しかし、このような高額な賭けは失敗し、テラフォーム・ラボのCEOドー・クォン(Do Kwon)氏さえも、ネットワークをかつてのままの形で救い出すことはできないだろうと言っている。

こうなると、暗号資産(仮想通貨)業界にとって非常に大切な2つの疑問が浮かぶ。あらゆるアルゴリズム型ステーブルコインは、もう終わったも同然なのか?同じような惨劇を防ぐために、規制を整備するべきなのか?

アルゴリズム型ステーブルコインの存続

アルゴリズム型ステーブルコインはまだ終わっていない、と考える人が少なくとも1人いる。レイヤー2ネットワーク「アズテック・ネットワーク(Aztec Network)のジョナサン・ウー(Jonathan Wu)氏は、暗号資産をテーマにしたポッドキャストに出演してそのように語ったのだ。

「アルゴリズム型ステーブルコインは至高の目標だ。担保が十分ではないアルゴリズム型ステーブルコインが何であるかと言えば、それは何もないところからお金を作り出すようなものだ。私の意見では、そのような夢を追い求める資金は常に存在するだろう」と、ウー氏は述べる。

そのように考える人が1人いるなら、他の人もそのように考える可能性が高い。その理由も、ある程度理解できるようなものだ。ウー氏が、その概略を説明してくれた。ステーブルコインは、暗号資産のボラティリティを滑らかにするのに必要で、そのためのより安価な方法があれば、人々はそれを試みるだろう。

基本的には、2つのステーブルコインモデルが存在する。担保されたものと、担保されていないものだ。USDコイン(USDC)やテザーなどの担保されたステーブルコインは、保有者が法定通貨と交換できるように、銀行口座などに通貨や債券などの準備金が準備されている。

アルゴリズム型ステーブルコインはこのような安全装置抜きで、それ以外の手段でペッグを維持しようとする。USTでは、オンチェーン兌換ツールで関連するトークンのLUNAを利用していた。LUNAは、需要供給の変化に応じて、USTの価値を支えるはずであった。USTのドルに対する価値が上下するのに合わせて、LUNAが焼却(Burn)、発行されていたのだ。

その目的は、担保されたステーブルコインよりも安く使える、検閲耐性などブロックチェーンのあらゆるメリットを備えた「暗号資産ネイティブ」なドルを生み出すことにあった。

ウー氏の簡単な計算によると、USTユーザーは、約20セントでテラ上でUSTを作り出すことができた。それに対し、超過担保となる暗号資産準備金を保有するメイカーダオが運営するステーブルコインのダイ(DAI)は、そのコストが2ドルであると、ウー氏は指摘する。

「私がベンチャーキャピタリストか、資本提供する人間であったとすると、現状を見て、競合よりも10倍も資本効率の高い通貨システムを作り出すことができると感じる。そのような夢を、何度でも繰り返し追いかけることをいとわないだろう」と、ウー氏は語った。

さらに、「そのような夢を何度でも繰り返し追いかけること、DeFi(分散型金融)市場における体系的な有害さというリスクを冒すこともいとわないことを、私たちはエコシステムとして共同で示したのだ」と、ウー氏は続けた。

生まれてくる価値は途方もないだろう。しかし、破壊されてしまった価値はどうなのだろう?

広範なリスク

先週の暴落までは、USTがペッグを大いに逸脱したのは、わずか2回。その1回は2020年12月、約85セントまで値下がりした時。もう1回は、2021年5月、94セントまで値下がりした時だ。つまりテラは暴落までは、ほぼ約束通りに機能していたのだ。

しかし、そのような中でも、カルガリー大学のライアン・クレメンツ(Ryan Clements)教授のような人物が警鐘を発していた。クレメンツ教授は2021年10月、すべてのアルゴリズム型ステーブルコインは失敗する宿命にあると主張した。

アルゴリズム型ステーブルコインというのは、法定通貨同様、関係する集団が価値を認めるから、価値を持つのだ。問題は、テラのユーザーベースは米国経済よりも小さく、狂信的なファンも抱えているが、その数が不足していた点だ。

需要の問題以外にもクレメンツ教授は、テラが破綻し始めるとそのアルゴリズムにつけ込んで利益を狙う「利己的な」投資家に依存していることも指摘。その問題は、先週明らかになった通り、急落を加速させる群衆的な売り圧力によって、悪化させられた。

マジック・インターネット・マネー(MIM)やフラックス(FRAX)、ニュートリノUSD(USDN)など、その他のアルゴリズム型ステーブルコインも、そのような問題と無関係ではない、とクレメンツ教授は主張する。ボラティリティの高い資産によって裏付けられ、群衆的行動に晒されやすいため、アルゴリズム型ステーブルコインは「恒久的な脆弱状態で存在」していると、クレメンツ教授は指摘した。

デウス・ファイナンス(Deus Finance)のアルゴリズム型ステーブルコイン、デイ(DEI)は16日、ヨーロッパでの取引時間中に54セントまで下落。この一因は、ステーブルコイン投資全体で広がるボラティリティである。

クォン氏が過去に取り組んでいたプロジェクト、ベイシス・キャッシュ(Basis Cash)も同様に破綻し、アルゴリズム型ステーブルコイン「IRON」も同じであった。後者の破綻は、投資家マーク・キューバン氏がステーブルコイン規制を呼びかけるきっかけとなった。

「アルゴリズム型ステーブルコインとは何か?安定しているのか?買い手はリスクを理解しているのか?規格が必要だ」と、キューバン氏は9月にツイート。

キューバン氏は当時、偽善的で、リスク回避的だとして嘲笑されたが、現状を見ても、行き着くところはやはり規制なのだ。オンチェーンのメカニズムによって価格コントールを維持できないのならば、他の組織が規格を設定する必要があるだろう。

イエレン米財務相は先週、UST危機についてコメントしたが、どんな規制になるのかという疑問は残る。

ルール設定

暗号資産業界にとっては残念なことだが、自分たちでルールを設定することはできない。草案作成のプロセスには参加できるかもしれないが。

「規制では、ガバナンストークンがますます証券とみなされるようになるだろう」と、暗号資産について懐疑的なことで有名なベネット・トムリン(Bennet Tomlin)氏は言う。「(ガバナンストークンは)資産の請求権を持っており、キャッシュフローに対する請求権というのは多くの場合、規制当局にとって最も手頃な標的となるのだ」

規制当局にとっては不幸な話だが、誰でもが暗号資産システムを作ることができる。つまり、規制当局はこれまでも、そしておそらくこれからも、発行業者に対して場当たり的な対応をすることになるだろう。

米証券取引委員会(SEC)は広範な警告を発したり、暗号資産規制執行部門の規模を倍にするなど、業界に対する取り締まりを始めている。しかし、明確なルールが整備されても、システムに抵抗するクォン氏のようなアナーキストが登場するだろう。

ベンチャーキャピタリストのニック・カーター(Nic Carter)氏も、同様の理由から、公式のガイダンスがそれほど役立つものだとは考えていない。しかし、ステーブルコインに対してすでにかなり懐疑的であった暗号資産業界が、自らルールを課すこともできる。

「PlusTokenやPayCoin、OneCoinなどのプロジェクトを規制できないのと同じように、USTのようなものが存在できないように先を見越した規制をすることはできないと感じている」と、カーター氏は語る。さらに、USTは「その真の目的がLUNAの価格を吊り上げる」ことであったため、そもそも「ステーブルコインという名称にそぐわなかった」とも主張した。

「そうなると、『USDCをどのように規制するか』と、『UST/LUNAについてどうするか』という問題は、まったく別個のものとなる」とカーター氏は述べる。「後者は大規模な金融詐欺が起こらないようにするにはどうするか、という問題だ」

より銀行のような見た目と機能にさせるために、ステーブルコイン向けのルールが登場してくるだろう。似たようなルールは、暗号資産業界内で自ら課すこともできる。ユーザーはアルゴリズム型ステーブルコインに対しても、堅固な準備金や、外国為替のレートを維持するための通貨機関である「通貨理事会」のようなものを要求することができるだろうと、カーター氏は主張する。

そのようなシステムが本当に可能かどうか、そのような組織がますます証券の様相を呈するトークンを使うかどうかは、まだ答えの見えない疑問だ。しかし、多くの投資家にとっての教訓は、これからは担保されたステーブルコインを選ぶべき、ということになりそうだ。

そのような選好がどれほど長く続くか、UST破綻の記憶がどれほど人々の心に留まるかという点は、厄介な問題だ。

ウー氏が言った通り、アルゴリズム型ステーブルコインは「至高の目標」なのだ。あるいはトムリン氏が言った通り、「人々が挑戦し続ける主な理由は、タダのお金に見えるから」なのだから。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:UST Won’t Be the End of Algorithmic Stablecoins

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