無担保レンディング、リスクとメリット──オンチェーンクレジットとは【コラム】

無担保レンディング、リスクとメリット──オンチェーンクレジットとは【コラム】

暗号資産(仮想通貨)業界における真の開発作業は弱気相場の間に進められるという決まり文句がある。イングランド銀行のジョン・カンリフ(Jon Cunliffe)副総裁も先日、今回の「暗号資産の冬」を生き残るプロジェクトは「明日のアマゾンやイーベイ」になれるかもしれないと語った。

生き残るテクノロジー

「(ドットコムバブル崩壊後)多くの企業がいなくなったが、テクノロジーはどこへも行かなかった」とカンリフ副総裁は語った。暗号資産は確かに信奉者を抱えている。市場では多くの損失が出ているにもかかわらず、人々はいまだにWeb3の仕事を探し、プロトコル再設計の発表や将来に向けた採用活動も行われている。

しかし、暗号資産業界が「第2のアマゾンやイーベイ」を生み出したいなら、人々が使いたくなるプロダクトを開発しなければならない。現在、暗号資産業界は驚くほど循環的で、バブルのようでもある。多くの人気プロダクトは本質的に、さまざまな利回りを生むブロックチェーンベースのプラットフォーム間で資本を再流通、再貸付するメカニズムに過ぎない。

すべてではないが、現在問題を抱えているほとんどのレンディングプラットフォームやヘッジファンドは、価格下落によって担保が十分ではなかった投資が損失を出し始め、不意をつかれた。問題の根幹は無責任な投機にあるが、暗号資産のアクティビティの大半がインターネットの外に広がることがなかった事実も問題の一因だ。

ビリオネア投資家のマーク・キューバン氏が言ったとおり、「安価で簡単に手に入るお金に支えられていたが、しっかりとした展望を持っていなかった企業は消えていくだろう」。

かつてはリスクカーブの末端で栄えた暗号資産は、米連邦準備制度理事会(FRB)の緩和政策から利益を得ていた。金利が引き上げられ、景気後退が迫る今、投資家たちは暗号資産の先行きを警戒している。

だがカンリフ副総裁が言ったとおり、暗号資産はまだユニークなチャンスを提供してくれる。オープンプロトコルはオープンなイノベーションと発明を実現する。暗号資産は投機を超えた目的を持つ何かを生み出す可能性が高い。信用にもとづく、無担保のレンディングという、暗号資産の中でも成長している分野は、外の世界から多くを取り入れることで、投資のための安全な方法を提供するかもしれない。

新しいレンディング

暗号資産メディア「The Defiant」は先日、暗号資産ネイティブの「クレジット(信用)プロトコル」という新分野についての記事を掲載した。クレジットプロトコルは「暗号資産分野において借入を希望する人に対して、信用格付けの新たな方法を使い、貸付を可能にする」もの。本質的にクレジットプロトコルは、オンチェーンの情報、ときには実世界の身元を公開しても構わない人に対して暗号資産ベースの融資(ローン)を提供する。

セントリフュージ(Centrifuge)やメープル・ファイナンス(Maple Finance)、トゥルーファイ(TrueFi)などのクレジットプロトコルはまた、「無担保」レンディングの機会を提供することも売りの一つだ。セルシウス(Celsius)やバベル・ファイナンス(Babel Finance)などを窮地に追い込んでいる、悪質なレンディングの繰り返しのように思えるかもしれないが、違うアプローチだ。

伝統的金融では、ローンを借り手に提供すべきか、金額はどうするかを決定するために「信用スコア」が使われる。この分野は少数の企業が支配しており、その数少ない中でも整理統合が起きている。また破滅的な判断を下すことでも知られている。

「分散型信用スコア」は、信用度の判断に「アルゴリズム」を使うという暗号資産に典型的な方法を取っている。理論的には、公平で説明可能な決定ができる。

多様なアプローチ

分散型信用スコアには、さまざまな方法が存在する。イーサリアムの生みの親ヴィタリック・ブテリン氏がオンチェーンで長期的な評価を確立するための方法として提案した「Soulbound」トークンもその1つだろう。うまく機能すれば、裏取引や、最近、暗号資産業界を混乱させている顧客資産の再担保に対処できる方法になり得る。

ユーザーのオンチェーン取引の記録だけを確認するプロトコルもあれば、オフチェーンの情報を確認するものもある。多くのトレーダーや組織の信用履歴がさまざまなチェーンに散らばっていることで、問題は一層複雑だ。最も洗練された選択肢の1つは、ユーザーのアイデンティティを確立するために、人工知能やNFTを活用することだ。

現状、DeFi(分散型金融)において最も安全な選択肢は超過担保型ローンだ。例えば、ステーブルコイン「ダイ(DAI)」の発行元メーカーダオ(MakerDAO)は、価格リスクを避けるために、借り手は借り入れるよりも多くの暗号資産を担保として差し出すことが義務づけられている。

さらにメーカーダオは、伝統的な金融の世界の資産を担保として受け入れることも計画。住宅市場に投資できるように、住宅ローンのようなものさえ提案している。

メーカーダオの手法は「資本効率が低い」と批判する人もいる。担保が活用されず、利益を生まないからだ。レバレッジはリスクをもたらすが、「無担保の貸付を行うプロジェクト」は、顧客確認(KYC)要件や、法的拘束力を持つローン規約の導入でそうしたリスクを抑えようとしている。テラー(Teller)など、クレジットカードの支払いや銀行の取引履歴を確認するところもある。

とはいえ、無担保で信用ベースのレンディングプロトコルに投資する多くのベンチャーキャピタル以外に、こうしたシステムとスコアを信用できる理由はほとんどない。利用には、自分でリサーチすることが不可欠だ。

奇妙なことだが、暗号資産レンディングプロトコルにとって大きなリスクの1つである規制が、オンチェーンで信頼できる評価を実際に確立するための最も簡単な解決策となるかもしれない。

|翻訳:山口晶子
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:The Risks and Benefits of On-Chain Credit Protocols

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