スリーアローズの「ネズミ講」的運用を非難──調査会社FSInsightがレポート

調査会社FSInsightは、暗号資産ヘッジファンド「スリー・アローズ・キャピタル」(Three Arrows Capital:3AC)の破綻の影響をまとめた24日のレポートの中で、暗号資産業界は「LTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)を破綻させた取引と同じような、バーナード・マドフが行った昔ながらのネズミ講(ポンジ・スキーム)」にこの数週間で屈服させられたと述べた。

バーナード・マドフ:史上最大のネズミ講詐欺の首謀者。優れた金融業者とされ、一時、ナスダックの会長を務めたが、詐欺だったことが判明。禁錮150年の判決を受け、服役中だったが、2021年4月に連邦刑務所で死去。

3ACには27日、英領バージン諸島の裁判所から清算命令が出されている。

今回、マドフに相当したのは3ACの共同創業者のSu Zhu氏とKyle Davies氏で、2人はその評判を利用して「業界のほぼすべての融資会社から無謀な借り入れ」を行い、結果的にボイジャー・デジタル(Voyager Digital)、バベル・ファイナンス( Babel Finance)、ブロックファイ(BlockFi)など業界大手に被害をもたらすことになったと、FSInsightのデジタル資産戦略責任者、ショーン・ファレル(Sean Farrell)氏は記した。

3ACはピーク時、180億ドル(約2兆5000億円)以上の運用資産残高を誇っていたとされる。しかし、現在知られている負債額を考えると、実際にどれだけの資本がリスクにさらされていたかはわからない。Zhu氏とDavies氏は「借りた資金を融資の利子返済に使い、一方で多額のリターンを示すために『帳簿を料理』」していた可能性が高いとレポートは記している。

ボイジャー・デジタルやブロックファイなどが3ACに融資していた額の大きさを考えると、3ACの資産の大部分は負債で構成され、担保比率はかなり小さかったようだとファレル氏は述べた。

「マクロ経済状況がグローバルな資産価格の崩壊に先行し、あらゆる暗号資産の担保価値を低下させた。また3ACが暗号資産テラ(LUNA)とステーブルコインのテラUSD(UST)に大きく投資していたこともこうした状況を招いた。だが我々は、3ACのグレイスケール・ビットコイン・トラスト(GBTC)へのオーバーレバレッジな投資でダウンスパイラルが始まったと考えている」

GBTC取引は高レバレッジで、高リターンのアービトラージ(裁定取引)取引の可能性が消滅したとき、3ACはGBTCを手放さずにいたようだとFSInsightは述べた。3ACは小さな損失で撤退するのではなく、GBTCのETF(上場投資信託)への転換が承認されれば、ディスカウントが純資産価値に収束することを期待して、取引を倍増させた可能性が高いという。

グレイスケールは、米証券取引委員会(SEC)にETFへの転換申請を行っていたが29日、SECは申請を却下した。GBTCは純資産価値に対してディスカウントで取引されている。

長期保有者にはチャンスか

暗号資産が下落し、マージンコール(追い証)が発生すると、3ACはもはやその「レバレッジの連鎖」を保持することはできず、暗号資産レンディング市場全体に非流動性の問題を引き起こしたとレポートは記した。この裁定取引におけるオーバーレバレッジは、かつてLTCMを破綻させた取引と類似しているという。

最近のデータを見ると、ビットコイン保有者の間にキャピチュレーション(投げ売り)が見られるとFSInsightは述べている。だが、マイニング事業者がさらなる売り圧力となるリスクは残っている。暗号資産市場の短期的な状況は依然として「不安定で危険」だが、ビットコインの弱気相場は深い領域に達しており、長期投資家はこれを利用すべきとレポートは付け加えた。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:FSInsight Accuses Three Arrows Capital of Running a ‘Madoff-Style Ponzi Scheme’