ウォール街の巨人DTCC、株式取引決済用プライベートブロックチェーンをローンチ

DTCC(Depository Trust & Clearing Corp.:米国証券保管振替機関)は、40兆ドル(約5500兆円)を超える米株式市場の基本的にすべての取引を処理するウォール街の静かなる巨人。

DTCCは、世界最大の株式市場における取引の決済に耐えられるかどうか、プライベートブロックチェーン「Project Ion」のライブテストを開始したと8月22日、発表した。Project Ionは現在、1日平均10万件以上の取引を処理しており、ピーク時には約16万件にのぼるという。

これは1日に数十億株を取引する業界にとっては小さなことだが、ブロックチェーン技術の採用に向けて、伝統的金融機関が何年も取り組んでいるなかでも最大級の出来事といえる。

アメリカでの株式取引の決済には現在2日かかっており、暗号資産と比較するとまるで氷河期のようなスピードだ。株式取引が10億分の1秒単位で行われているにもかかわらず。

TradFi(伝統的金融)の取り組み

ウォール街の大手企業は、何年も前からブロックチェーン技術に取り組んでいる。NYSE(ニューヨーク証券取引所)の元社長は22日、ウォール・ストリート・ジャーナルで「ブロックチェーン技術はすべての金融サービスを再構築する」と語った。

SEC(米証券取引委員会)も、株式の決済時間を「T+0」に早めることを提案している。T+0とは、取引が成立したその日に処理するという意味だ。

DTCCのシステムは、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)といった従来の多くのブロックチェーンとは異なり、プライベートかつパーミッションレスのシステム。バークレイズ、BNYメロン、チャールズ・シュワブ、シタデル、シティグループ、クレディスイスといった金融大手とともに開発を進めている。

DTCCはブロックチェーン企業のR3と提携し、R3のブロックチェーン「Corda(コルダ)」を使ってProject Ionを立ち上げた。

DTCC Clearing Agency Servicesのマネージングディレクター兼社長、マレー・ポズマンター(Murray Pozmanter)氏は「デジタル資産とブロックチェーンのような新技術は、金融サービスのあり方を形作り、進化させている。我々は、機会を生かし、新しい価値を提供し、業界を前進させる先進的でイノベーティブなソリューションに取り組み続けていく」と述べた。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Unsplash
|原文:Wall Street Giant DTCC Launches Private Blockchain in Big Crypto-Milestone for TradFi