大企業が暗号資産を救う?【オピニオン】

大企業が暗号資産を救う?【オピニオン】

11月14日、FTX破綻の影響が急速に広がり、暗号資産が存続の危機に瀕するなか、ナイキ(Nike)は新しく大胆なWeb3プラットフォーム「.SWOOSH」を立ち上げた。

ユーザーが、ナイキのデジタルウェアラブルを売買し、NFT技術を使った独自コレクティブルを作成できるようになるこのプロジェクトは、暗号資産の広範な世界では何も起こっていないかのように、力強く進展する有名ブランドによる多くの、似たようなプロジェクトの1つだ。

Web3に乗り出すブランド

スターバックス、NFL、インスタグラム、バドワイザー、アディダス、ドルチェ&ガッバーナ、タイムなど、そうしたブランドは数多い。

だからこそ私は、マイアミで開催された現代アートフェア「アート・バーゼル」でのNFT関係者との会話の中で、暗号資産はブランドによって救われるというフレーズを繰り返し聞くことになった。

それは本当かもしれないし、そうしたプロジェクトにお金を出すことは、暗号資産ネイティブ企業の支出の大幅削減を相殺してくれるかもしれない。

しかし、暗号資産の反抗的でディスラプティブな魅力、クリエーターやユーザーが自らの資産・コンテンツ・データをコントロールできるようにすることで、フェアな場を作り出すという約束に惹きつけられた多くの人たちの間に懸念も引き起こす。

ここで問うべきなのは、暗号資産が企業化するに伴って、その強みが失われてしまうかどうかだ。

矛盾

その答えはある意味で、当然ながらイエスだろう。暗号資産業界は、イメージを気にかける官僚的な上場企業が抱える法律、マーケティング関連の懸念に合わせる必要がある。

すでに「クリプト」「ブロックチェーン」、さらには「NFT」といった、反発の引き金になるような言葉の代わりに、「デジタルコレクティブル」といった、より総称的な言葉が使われている。

しかし、希望がまったくないわけではない。これまでのところ、この業界におけるブランドの活動は、適切で包括的な精神に根差しているようだ。たとえば、アーティスト、ミュージシャン、ライターが自らの作品をよりコントロールできるように、彼らが受け取るロイヤリティを劇的に増やせるように、クリエイティブの多様な経歴やスタイルを模索できるようにするための真剣な取り組みが存在している。

タイム誌の「Timepieces NFT」に携わったアーティストのためのイベントでは、多くのアーティストが、タイム誌がしたことによって真価を認められたと感じ、力をもらったと語っていた。

インスタグラムの取り組み

メタ(Meta)の子会社として、人々のデータ、コンテンツ、暮らしを大きくコントロールする同社の延長線上にあるように見られることも多いインスタグラム(Instagram)でさえ、同じような雰囲気がある。

NFTに精通したインフルエンサー向けの最新の取り組みでは、コレクティブルコンテンツを作成、売買できるようにするだけでなく、新しい限定アクセスのビジネスモデルを提供し、インフルエンサーは最も忠実なファンたちと直接関わることができる。少なくとも目指すところは、コントロールや所有権をクリエーターやユーザーに与えようというWeb3の原則と一致する。

しかし、世界中の困窮するアーティストの解放を祝う前に、メタがプラットフォームを利用するために最大47.5%の手数料を課すメタバースプロジェクトとしてスタートしたことを思い出そう。その独占的な価格モデルは、暗号資産コミュニティから怒りと嘲笑を誘った。

これらのブランドのプロジェクトから生まれているWeb3エコノミーはすでに、矛盾だらけだ。競争の原理を適応し、仲介業者がいない開かれたWeb3の未来を生み出すために必要なアクセスのしやすさを実現するためには、その矛盾を解消する必要がある。

価格設定と手数料の仕組み

インスタグラムの新しいNFTプロジェクトに取り組むアーティストが直面する、価格設定と手数料の仕組みについて考えてみよう。

インフルエンサーは、自分の作品に1000ドル以上の値段をつけることはできない。それ自体が市場制限の形態ではあるが、昨年のブーム時には暗号資産で富を成したコレクターたちに数百万ドルでNFTが販売されていたオープンシー(OpenSea)に比べると、より開放的であるとして、この上限は歓迎されていた。

より幅広い参加を促し、NFTビジネスモデルをメインストリームの人たちがもっと参加しやすいものへと進化させるかもしれない。

一方で、プロジェクトに携わったアーティストは、作品が売れるごとに、手数料として30%を支払わなければならない。

ここでも再び、過剰にパワフルな仲介業者的プラットフォームのコントロールの呪いに苦しむことになるのだろうか? そのとおりだ。しかし、独占を意図しているのは、アーティストに対して何の手数料も課していないインスタグラムではなく、アップル(Apple)だ。

アップルはいつものように、App Storeで購入されたアプリに対して適用される所定の手数料をインスタグラムにも課している。

しかし、アップルのティム・クックCEOに怒りをぶつける前に、その平等主義的な価格設定の仕組みが何に由来するものなのか考えてみよう。答えはもちろん、アップルのルールだ。

第一原理

このことは、Web2の世界では、メタやアップルといった中央集権型プラットフォームが、社会、ひいては民主主義や文化すらも依存している情報、アート、エンターテイメントの市場を形作るきわめて大きな影響力を持っていることを思い起こさせる。

だからこそ、Punk 6529のOmや、SF作家のニール・スティーヴンスン氏が立ち上げに関わった「Lamina1」のようなオープンメタバースプロジェクトが大切だ。

これらは、中核的なアプリケーションやインフラをコントロールしたり、クリエーターやユーザーが通過しなければならない手数料を課すような入口を構築する人が登場することを防ぐための第一原理の枠組みを基盤としている。

既存のプラットフォームや、それらを使ってファンや顧客とつながろうとする巨大企業の誠実さに頼るだけでは不十分。企業がコントロールを握れないようなシステムを意図的に構築する必要がある。

それが、暗号資産のコアな精神であり、それに惹かれてきた反抗的なプログラマーや、検閲に抵抗するクリエーターたちにメッセージを送ることになる。

企業からお金を受け取ることは構わないが、付随する条件をしっかり確認し、その資金のうちの十分なお金が、システムを開かれたものに保つために必要な分散型プロトコル、アプリケーション、APIを開発する人たちに確実に分配されるようにしなければならない。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Brands Will Save Crypto? Be Careful What You Wish For

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