Web3の未来にはシームレスなインフラが不可欠【コラム】

私が勤める暗号資産インフラ企業のブロックデーモン(Blockdaemon)は、Web3の未来はシームレスなユーザーエクスペリエンス(UX)を基盤にして構築されると予測している。すなわち、シームレスな利用、シームレスな収益化、そしてシームレスなガバナンスだ。

Web3プロジェクトの成功は、このようなシームレスなエクスペリエンスをブロックチェーン分野の開発者や企業を含め、すべてのユーザーに届けられるかどうかにかかっている。

ブロックデーモンは、ブロックチェーンベースのソリューションはデジタルインフラの未来と考えている。しかし、そうしたソリューションが軌道に乗るためには、ユーザーエクスペリエンスがハイクオリティであるなければならない。つまり、ユーザーも開発者もWeb3インフラとその上に築かれたアプリに簡単にアクセスできる必要がある。

未来に備えるための1年

2023年に開発者たちが取り組む作業が、暗号資産普及の次の高まりの基盤となるだろう。その基盤は、安価、モジュラー型、スケーラブル、そして信頼できるブロックチェーンインフラが土台となる。イーサリアムプロトコルが、私たちの主張を証明するための一目瞭然の事例となるだろう。

2023年以降に開発される必要不可欠なインフラによって、将来、何十億もの新規ユーザーと、何百もの企業が暗号資産を利用することになる。しかしそのためには、優れたプロダクトとユースケースが欠かせない。

2020年後半から2021年にかけての強気相場は、そうしたアプリケーションを支えるための堅固なインフラの必要性を明白にした。

それまでの市場サイクルとは異なり、2021年には企業や開発者に大規模な普及が進んだ。金融機関も、Dapp(分散型アプリ)開発者も、安全なブロックチェーンインフラの上で開発を行うためのシンプルな方法を必要としていた。

強気相場の間に開発を行った企業の多くは、市場低迷の中で苦しんでいるだろう。主にキャッシュフローの財務管理スキルの不足が原因だ。

十分に考え抜かれ、適切に資金提供を受けたプロジェクトは、今回の「暗号資産の冬」をサバイブし、成長する一方で、そうではないプロジェクトは苦戦するか失敗に終わる。

イーサリアムプロトコルは、群を抜いて1番大きな収益を上げているブロックチェーンネットワークだ。「マージ(Merge)」によって、エネルギー消費の大きなプルーフ・オブ・ワーク(PoW)から、はるかにエネルギー効率に優れたプルーフ・オブ・ステーク(PoS)に移行したことで、将来に向けた重要な基礎固めが進み、マージが実施された9月以降、イーサリアム供給量のインフレ率はほぼ0%となっている。

安定したブロックチェーンインフラの重要性

この20年で、インフラサービスは劇的にオンラインビジネスのあり方を変えてきた。

クラウドベースのインフラの登場が、Web企業の経費を大幅に削減した。消費者は、より高速で反応の良いアプリケーションを楽しみ、開発者は革新的なプロダクトの開発にフォーカスできた。

安定したブロックチェーンインフラの必要性は、ビットコイン誕生以来、存在していたが、分散型の未来の成長を支えるために必要なツールに開発者がアクセスできるようになったのは比較的最近のことだ。

クラウドインフラは、Webに大きなメリットをもたらした。ブロックチェーンは、他のテクノロジーと同じデフレ的な経緯をたどり、旧来型システムで必要だったコストを劇的に削減する。しかし、ブロックチェーンのキラーアプリ開発は、Web2が活用しているものと同じような高品質なインフラにかかっている。

インフラによるサポートは、幅広いユースケースをカバーする複雑なニーズに対応するDappへの需要の高まりに応えるために欠かせない。

2023年、プロジェクトは今後の成功に備えるために、そうした複雑なニーズとユースケースに応えることに重点をおく必要があるだろう。

将来の成功に備えるために

次の成長の波に備えるために、2023年は暗号資産プロジェクトにとって転機の年となる。

現在の市況で優れた実績を上げるために、Web3企業は次の3つを必須事項とし、重点をおく必要があると私たちは考えている。

1. プロダクトマーケットフィットの発見

企業が勝利するためには、提供するプロダクトを絞る必要がある。これによって、時間と資金という希少なリソースが重要な価値を付加できる分野に集約される。市場を深く理解し、プロダクトマーケットフィットを見つけることが重要になる。

多くの大口機関投資家は、プロダクト志向の企業に投資したがっている。Web3企業は、ブロックチェーンを使う顧客のために、より優れたシームレスなエクスペリエンスを提供するプロダクトの開発に集中するべきだ。

ステーキングされたイーサリアム(ETH)の引き出しを可能にすることは、そうした機能と考えられ、2023年3月頃に個人および企業のステーカーに提供される予定。イーサリアムのPoSネットワークに存在していたロックアップ期間を撤廃することで、最大の摩擦が取り除かれることになる。

2. 強みを垂直統合

真の長期的価値は、将来成長する分野の1つ(あるいは複数)の垂直型エキスパートになることから生まれる。

プロダクトへの現実的なフォーカスと、将来の顧客が求めるビジョンが融合していなければならない。成長が見込める分野で価値を生むことで、企業は将来に向けた、力強く有利なポジションを得ることができる。主要な成長分野で垂直統合していることは、競争優位性を作り出す。

そのような分野の1つ(あるいは複数)において、奥行きのあるテクノロジーソリューションを生み出す企業の能力は、長期的に顧客に価値を付加することになる。

3. 成長に向けたインフラの準備

歴史的に見て、適切なプロダクトを提供する企業は、市場が上向きになったときに飛躍的に成長できる。

しかし、短期間で飛躍的成長を経験したブロックチェーン企業にとっては、ノード運営を自分たちでスケールさせることは非現実的。強気相場においては、人気ブロックチェーンプラットフォームのサービス一時停止はよくあることだが、これは年末商戦などの繁忙期に大手量販店で停電することに等しい。

つまり、ブロックチェーン企業は、いつ起きても不思議ではない大量の新規顧客獲得に向けてインフラを準備しつつ、関連するコストや経費を管理しなければならない。

ここでもイーサリアムブロックチェーンは2023年秋に、レイヤー2エコシステム向けのスケーリングソリューションとして、EIP(イーサリアム改善提案)4844によるプロト・ダンクシャーディングを予定するなど、お手本となっている。

このインフラ改善によって、ブロックチェーンの容量は10〜100倍拡大する見込みで、1秒間の取引件数10万件というゴールに向けた重要なステップとなる。

結論

2023年は開発の年になる。市場が回復したら、この時期を有効に活用した企業が理想的なポジションを占めているだろう。

暗号資産普及の次なる波の究極的な理想は、基盤となるテクノロジーを理解する必要なく、顧客がブロックチェーンをシームレスに使えること。VoIPを知らなくてもビデオ通話ができることと同じように、ブロックチェーンも摩擦のない、ユーザーフレンドリーな価値とデータの移動手段となるだろう。

ソーシャルメディア大手は、ブロックチェーンが舞台裏で機能していることをユーザーが知ることなく、暗号資産決済を取り込んでいくはずだ。

最終的には、堅固でスケーリング可能なブロックチェーンインフラへの安定したアクセスが、それらを可能にする。

フリードリッヒ・ツワンツガー(Friedrich Zwanzger)氏:ブロックチェーンインフラプラットフォーム、ブロックデーモン(Blockdaemon)のイーサリアムエコシステム担当責任者。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Web3 Needs Seamless Infrastructure to Drive Adoption