ビットコインマイナー、イーサリアムと真剣に向き合うべき理由【コラム】

マキシマリスト(至上主義者)の教義は、誰にも良い結果をもたらさない。

文化的影響力としてのビットコインマキシマリストのインパクト(そして、その避けられない衰退)については多くが語られてきた。だが、機関投資家の資本配分の決断への影響も含め、イデオロギーがいかに金融市場を動かすかについては、それほど語られていない。

これは検証の価値がある。暗号資産のアロケーションについては今、イーサリアムブロックチェーンに向かう革命的なシフトの機が熟しているからだ。

イーサリアムがもたらすチャンス

イーサリアムブロックチェーンの潜在的価値が解き放されるにつれて、とりわけビットコイン(BTC)マイナーは新しいチャンスに恵まれるかもしれない。このチャンスは、2022年以来マイニング業界を支配し、まだしばらく続くかもしれない利幅の縮小を相殺し、逆転することに役立つかもしれない。

ビットコインマイニングの報酬は来年、6.25ビットコインから3.125ビットコインに半減し、マイナーが利益を出すことは一段と困難になる。もちろん、価格が上がるか、ネットワーク内での競争が減ってその分が相殺されれば、話は別だが。

実際、そのようになると予測している人もおり、ビットコインブロックチェーンの需給メカニズムと、マイニングのエコノミクスに与える影響については多くのことが語られている。しかし、シンプルに言えば、半減期のその瞬間にはマイナーの収入は即座に半分になる。

イーサリアムブロックチェーンは一見、ビットコインマイナーに価値を加える候補者には思えないだろう。プルーフ・オブ・ステーク(PoS)への移行によって、マイニングの役割は完全に排除された。PoSモデルによって、イーサリアムのバリデーターは報酬を受け取っているが、そのメカニズムは今、ビットコインでは実現されていない。

ビットコインマイニング業界は、運営コストをカバーするために現金に換えたり、価値の回復を期待して長期保有する以外は金融商品として限られた用途しか持っていない、巨額のビットコインを準備資産として眠らせている。

絶えず変化するイーサリアム

対照的に、イーサリアムブロックチェーンとその可能性は常に変化している。開発者たちは、分散型取引所(DEX)やステーブルコイン、NFTなど、幅広いユースケースを支えてきた。

2022年9月の「マージ(Merge)」によるPoS移行の成功は、ブロックチェーンの歴史でも画期的なことだった。今後もイーサリアムブロックチェーンは、ネットワークの混雑を解消するという大規模普及に向けた必要条件を整えるための3月の「シャンハイ」アップグレートやその後のシャーディングなど、いくつかのアップグレードが控えている。

イーサリアムブロックチェーンの未来はかつてないほどワクワクするもので、ポリゴンやZKロールアップ、オプティミズム(Optimism)、アービトラム(Arbitrum)といったレイヤー2システムの成長は、イーサリアムのスケーラビリティをさらに高めるだろう。

一部の環境保護団体からの批判とは裏腹に、イーサリアムはますます環境にやさしいものになっている。イーサリアムの共同創業者ヴィタリック・ブテリン氏によると、マージ後のイーサリアムのエネルギー消費量は99.95%減少、世界の電気消費量も0.2%削減されたと推計されている。

以前のEIP(イーサリアム改善提案)1559と合わせて、マージはイーサリアム(ETH)の発行量を劇的に減少させ、イーサリアムの供給は長期的にデフレ的になると多くの人は考えている。2021年8月のEIP1559実施以降、280万イーサリアム、88億ドル(約1兆1400億円、1ドル=130円換算)相当が焼却され、イーサリアムの希少性は高まっている。このことも、長期的な価値を高めることにつななる。

共存を目指して

イーサリアムのようなPoSブロックチェーンは、ビットコインマイニング事業を補完する歓迎すべき存在となり得る。ビットコイン報酬をイーサリアムに換え、ステーキングして報酬を受け取ることもできる。

ステーキングしたイーサリアムは利子を生む資産のように機能し、時間とともに複利式で増えていく。これは、ビットコインとイーサリアムの間でフライホイール効果を生む。そこからマイナーは、価値を生み出す想像力に富んだ方法をさらに考案することもできる。当初は資産管理ツールだったものが、イノベーションと開発によって、新たな事業となるかもしれない。

イーサリアムとビットコインはどちらも、ユニークなメリットと限界を抱えている。ビットコインは分散化のためのオリジナルの概念実証(PoC)であり、価値保存としての機能を試されるような厳しい市況でもレジリエンスを証明してきた。

一方、イーサリアムは比較的多目的であり、イノベーションを促す。「グローバルスケールのデジタルの未来」というビジョンに向けて機能を拡張し、欠点を修正するために継続的に改善が行われている。この先、ビットコインとイーサリアムはどちらも、国際金融システムや社会全般において欠くことのできない役割を果たすことが期待される。

プルーフ・オブ・ワーク(PoW):ビットコインと、PoS:イーサリアムという2つのコンセプトは共存できる。ビットコインマイナーは、この2つが補完し合って収益を生み、活用されていないエネルギーから収益をあげ、分散化の未来を実現する方法を現実のものとするユニークなポジションにある。

サム・タバール(Sam Tabar)氏:ナスダック上場のビットコインマイニング企業ビット・デジタル(Bit Digital)のチーフストラテジスト。

※見解は筆者個人のものであり、ビット・デジタルの見解を必ずしも反映するものではありません。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:マイニング機器(Eliza Gkritsi/CoinDesk)
|原文:Why Bitcoin Miners Need to Take Ethereum Seriously