コインベース(Coinbase)は、最近発表したイーサリアムのレイヤー2ブロックチェーンに関して、壮大な計画を持っている。
レイヤー2のオプティミズム(Optimism)と連携し、オプティミズムが提供するオープンソースツール「OP Stack」を使って開発された「Base」は、イーサリアム(ETH)の取引手数料を1セントまで引き下げ、ソラナ(Solana)やアバランチ(Avalanche)、ポリゴン(Polygon)などの他のブロックチェーンと連携することを目指している。
さらに、「オープン金融システム」分野のプロジェクトの「買収、構築、投資」を通して、10億の人々を暗号資産に参入させる同社の「Master Plan(マスタープラン)」の出発点となることも期待されている。
新しい収益源?
今回の発表は、アメリカ最大の暗号資産取引所であるコインベースにとって、きわめて重要なタイミングに行われた。最新の四半期決算によれば、重要な収益源となる取引高が「暗号資産の冬」の中で枯渇しており、コインベースは移行期にある。
同時に、ステーキングやサービス手数料など、収益を生む可能性のある他の事業は成長している。時間をかけて「分散化」を目指すBaseは、バランスシートの多様化を長年目指してきた同社にとって、新たな収益の柱となる可能性がある。
テッククランチ(TechCrunch)によれば、Baseはまず、主要レイヤー2ネットワークであるアービトラム(Arbitrum)やオプティミズムと同じ水準の10〜50セントの取引手数料を課す予定。
今はテストネットの段階だが、すでに早期採用者には著名プロジェクトが名を連ねている。チェーンリンク(Chainlink)、イーサスキャン(Etherscan)、アーベ(Aave)、アニモカ・ブランズ(Animoca Brands)、デューン(Dune)、ナンセン(Nansen)、マジックエデン(Magic Eden)、ワームホール(Wormhole)などがサポートを表明している。「コインベースが、新しいネットワークトークンを発行する計画はない」ことを考えれば、大きなニュースだ。
コインベースの実験的取り組み
コインベースは長年、保有する現金資産の10%をベンチャー事業に振り向けるなど、暗号資産業界に貢献する戦略を採ってきた。もちろん、すべての実験的取り組みがうまくいったわけではない。例えば、NFTプラットフォームは昨年のスタート以降、同社のブランド力にもかかわらず、マーケットシェア獲得に苦戦している。
Baseは、競争が激化する一方で、複雑化しているイーサリアムスケーリングツール市場への参入だ。ちなみに主要レイヤー2ネットワークのアービトラムは2月21日、1日の取引高でイーサリアムブロックチェーンを超えた。
一方、複数の競合プロジェクトはイーサリアムに対応する「zkEVM」、いわゆる「ゼロ知識証明ロールアップ」に取り組んでおり、レイヤー2の世界は大きく進化している。
ポリゴンやコンセンシス(ConsenSys)といった大手プロジェクトが、画期的なゼロ知識証明テクノロジーに取り組んでいる。ZKロールアップは、アービトラムやオプティミズムのように「Validity proof」を通じてトランザクションを即座に承認する「optimistic」な既存プロダクトとは異なる。
新しいユーザージャーニー
コインベースが手がける取引所、ウォレット、開発者向けプロダクト全体に統合される予定のBaseは、既存のユーザーを「コインベースにコントロールされていない、望みの場所」へと導くための方法と同プロジェクトの開発責任者ジェシー・ポラック(Jesse Pollak)氏は語った。これはすごいことだ。
暗号資産インフラを手がけるRampの最高技術責任者ルカス・アンワジュラー(Łukasz Anwajler)氏も、人々が「オンチェーンからオフチェーンに至るまで」自分の資産をコントロールできる必要があり、暗号資産エコシステム全体でより安全な「ユーザージャーニー」が必要だと述べている。
スケーリングプロダクトやさらなる実験の必要性は明らかだ。イーサリアム共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏が掲げるイーサリアムブロックチェーンの「ロードマップ」は、道案内というよりは、アメリカのハイウェイのルートマップのようで、分岐したり、合流したりしている。
成長は期待できるか?
しかしBaseは、プロトコルを持続的に使ってもらうためのインセンティブ面で懸念がある。他のレイヤー2では、トークンを発行したり、将来的なエアドロップを暗に約束することで、利用を促進してきた。現行の規制体制の中、「ネイティブトークン」を持たないことで知られるコインベースにとっては、それは選択肢にはない。
加えて、中央集権型組織がDeFi(分散型金融に及ぼすリスクについての認識が高まっていることもあり、Baseには向かい風となるかもしれない。
Baseがどれほどの期間、計画・準備されていたのかはわからないが、そのスタートは、コインベースの規模の縮小と同じ時期となった。
コインベースはここ数カ月で、インドなどの市場から撤退し、何百人ものレイオフを行った。Baseが成長のコアとなった場合、完全に発展させるために必要なすべてのリソースをカバーできるのかどうか、定かではない。
コインベースがBaseネットワークへの「コントリビューター(貢献者)」となり、コミュニティにガバナンスに関する決断権を委ねることが究極のビジョンのようだ。
そのプロセスは、暗号資産業界ではしばしば耳にする。しかし詳細がない状態では、そのメッセージは「開発すれば、ユーザーやユースケースは後からついてくるだろう」と言っているように聞こえなくもない。
ユースケースをまだ模索している業界では、空虚に聞こえてしまう言葉だ。
|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:コインベースのブライアン・アームストロングCEO(CoinDesk)
|原文:Coinbase Joins the Ethereum Layer 2 Rat Race – Can It Grow?