5分でわかる人気レイヤー2「ポリゴン(Polygon)」の仕組み【基礎知識】

ポリゴン(Polygon)は、イーサリアムブロックチェーン向けのレイヤー2スケーリングソリューションである。このようなソリューションは、独自のブロックチェーンを使うのではなく、既存のブロックチェーンネットワーク上で機能する。ポリゴンの場合には、成長とともにスピードが遅くなり、コストは高くなっているイーサリアム上で機能する。

2021年12月時点で、イーサリアムブロックチェーンは1秒に約14件の取引を処理できる。各取引には、約25ドルかかる。しかし、取引手数料はネットワークの混雑状態が悪化すると高騰することもあり、特別に富裕なユーザーを除いたすべての人にとっては、手が届きづらく、予測もしづらい。昨年5月には、イーサリアムの平均取引手数料は、71ドルまで高騰していた。

手数料は簡単に積み重なって、何百ドルにもなる可能性もあるため、イーサリアムベースの分散型金融(DeFi)プロトコルやノン・ファンジブル・トークン(NFT)マーケットプレースを使おうとする人、ネットワーク上でトークンを移動させる人にとっては大きな問題だ。

ポリゴンのようなスケーリングソリューションは、取引を別のところで処理することによって、コストを下げてくれる。ポリゴンの場合には、ポリゴン独自のプルーフ・オブ・ステークブロックチェーン上で、取引が処理される。

イーサリアムの取引1件にかかる手数料と比べるとほんのわずかな手数料(とポリゴンのネットワーク手数料)を払うだけで良いので、コストが下がり、時間も節約される。ポリゴンでは、1秒当たり最大で6万5000件の取引を処理でき、そのコストは1セントにも満たないと主張している。

マティックとは?

2021年に、ポリゴンというブロックチェーンプロジェクトと並んで、マティック・ネットワーク(Matic Network)という名前が使われるのを目にするかもしれない。その理由は、ポリゴンが2021年2月にリブランディングされるまで、元々の名前がマティック・ネットワークであったからだ。マティックのローンチは2019年であった。

混乱の主な原因は、ポリゴンがリブランディング後も、ネイティブユーティリティトークンのティッカー「MATIC」を使い続けたことにある。つまり、これら2つの言葉が同じように使えるということだ。ポリゴンとマティック(MATIC)の関係は、イーサリアムとイーサ(ETH)の関係と同じである。

マティックの供給上限は100億ドルで、2021年12月現在では、71億6000万が流通している。残りは、自らのMATICをステーキングスマートコントラクトに預け入れ、バリデーターになっている「ステーカー」と呼ばれる人たちによって生み出されることになる。ポリゴンは、新しい取引データの検証を行うために、無作為にステーカーを選ぶプルーフ・オブ・ステークネットワークだ。

NFTやプレーして稼ぐ型(Play to Earn)のゲーム、DeFiプロコトルの人気に牽引された2021年のイーサリアム人気の高騰は、ポリゴンなどのスケーリングソリューションのトークン価格も高騰させた。

マティックは2021年のはじめには、価格が0.018ドルで時価総額は8100万ドルであったのが、12月27日には史上最高値の2.92ドルに達し、時価総額は200億ドルとなった。主要な分散型取引所ユニスワップ(Uniswap)が、ポリゴンで展開というニュースも、値上がりを後押しした。

「Polygon | $MATIC

『CoinDesk
速報:人気イーサリアム分散型取引所ユニスワップが、計画通りポリゴンでの稼働を開始し、マティック価格は本日、史上最高値を更新』」

スケーリングソリューションの世界

ポリゴンはレイヤー2ソリューション、つまり、(レイヤー1と呼ばれる)ブロックチェーン上で機能するソフトウェアである。レイヤー2には他にも、ビットコイン取引のコストを削減するビットコイン・ライトニング・ネットワーク(Bitcoin Lightning Network)や、ループリング(Loopring)などがある。

ポリゴンは、イーサリアムを超えた拡大を計画中だ。ポリゴンではそのサービスを「ブロックチェーンのインターネット」のためのフレームワークと宣伝しているが、それはつまり、イーサリアムと相互運用性を持ったあらゆるブロックチェーンを接続することができ、取引コストを削減し、スピードを高めるために使えることを意味する。

しかし、イーサリアムでの取引スピードを上げようと目指すプロジェクトは、ポリゴンだけではない。ブロックチェーン間で暗号資産を移動させる「ブリッジ」機能を持ち、異なるイーサリアム関連トークンを取引できるようにする競合ブロックチェーンは数多く存在する。以下はその例だ。

・アバランチ(Avalanche)
・ソラナ(Solana)
・コスモス(Cosmos)

イーサリアムエコシステム関連のデータを提供するDune Analyticsによれば、ポリゴンは預かり資金(TVL)が66億ドルと、77億8000万ドルのアバランチに次いで第2位。

他にも、人気レイヤー2ソリューションのアービトラム(Arbitrum)のTVLは25億ドル、アクシー・インフィニティ(Axie Infinity)向けのブリッジ、ロニン・ブリッジ(Ronin Bridge)のTVLは61億ドルとなっている。

ポリゴンをはじめとするスケーリングソリューションの将来は不透明だ。当記事執筆時点では、イーサリアムは世界最大のスマートコントラクトネットワークで、イーサの時価総額は4380億ドル。競合たちも追いかけてきてはいるが、いまだにその差は開いている。例えば、ソラナの時価総額はわずか530億ドルだ。

イーサリアム2.0がローンチされれば、スピードは上がり、コストは下がる。イーサリアム2.0はこの先数年の間に完全ローンチが見込まれているが、すでに数多くの延期に悩まされてきた。それでも、イーサリアム2.0が登場すれば、スケーリングソリューションは不要となるか、少なくともその重要性は低下するかもしれない。

イーサリアムの共同創業者ヴィタリック・ブテリン氏は、異なるテクノロジーが共存するかもしれないと語った。

ポリゴンが他のブロックチェーンへの拡大を計画していること、さらに、コスモスのような相互運用性ソリューションがイーサリアムなどの一部プロトコルへの業界の依存度を低下させ、演算の負荷を他のブロックチェーンへと拡散するかもしれないことを考えると、ポリゴンの未来を考える時に、イーサリアム2.0の存在をあまりに強調するのは、賢明ではないかもしれない。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Polygon and Matic: What’s the Difference?