アメリカ人の私が、アメリカで暗号資産スタートアップを起業しない理由【コラム】

弱気相場は暗号資産においては、開発の時だ。2023年は、実世界の資産(RWA)をオンチェーンに取り込むことや、再生金融(ReFi)分野のプロジェクトの爆発的増加と大きな関心を通じて、多くの開発者が実世界に影響を与え始める1年になると確信している。

しかし私は、開発者が暗号資産プロジェクトをスタートさせる場所としてのアメリカには、きわめて悲観的だ。特にビジネスに関連したトークンがある場合はなおさらだ。

世界に後れをとるアメリカ

ドバイのような場所では、暗号資産のオアシスとも言える環境で開発者がビジネスをスタートさせるための規制上の明確さや直接的なサポートが整備されている。一方、アメリカは規制の面で、大きな後れをとっている。

どのトークンが、証券あるいはコモディティに分類されるべきかという、終わりのない議論をアメリカはもう何年も続けている。米証券取引委員会(SEC)のゲンスラー委員長の思い通りになれば、暗号資産のあらゆるものは証券となり、委員長が裁判官、陪審員、死刑執行人のすべての役割を担う。

暗号資産エコシステムに、法の範囲内で運営されていると認識し、前進できる予測可能性と能力をもたらす規制上の明確さではなく、アメリカではあまりにも長い間、明確に定義された規制がない状況で、脅しや罰金による威圧アプローチが選択されてきた。

議員の中には、規制の不明確さがもたらす結果を認識している人も少なくない。暗号資産が世界のあらゆる業界に普及した場合、規制の不明確さによってアメリカが取り残されてしまうという根本的なリスクがあることをそうした議員は十分に理解している。

しかし、議会が行動を起こさなかったことで、規制の空白が生まれ、その状況をゲンスラーSEC委員長が利用している。直近ではSECは、暗号資産取引所クラーケン(Kraken)に、年間収益の約10%を占めていたアメリカでのステーキング事業を止めさせ、3000万ドルの罰金を支払わせた。SEC、少なくともゲンスラー委員長がまたしても、十分にコントロールされ、規制を受けたアメリカの暗号資産取引所を締め付けようと決めたからだ。

数多くの専門家が指摘したとおり、クラーケンやコインベース(Coinbase)など、何年にもわたってアメリカでビジネスを行い、適用されるすべての法を遵守してきた企業に、これほどまで頻繁にSECの怒りの矛先が向けられることは皮肉なことだ。その結果、サム・バンクマン-フリード氏や同氏が率いたFTXなど、不正な企業や悪質な人物は、アメリカのあらゆる規制当局の手の届かない海外に移動していった。

明確な規制の整備が急務

考えてみて欲しい。あなたが真っ当な暗号資産ビジネスをスタートさせようと考えていて、場所を世界のどこからでも選べるとしたら、検討する国のトップ10にアメリカを入れる理由があるだろうか?

暗号資産起業家として、実体験から言えることだが、話を聞いたすべての弁護士から、規制上の不透明性を理由にアメリカでの起業は考えないようアドバイスを受けた。

アメリカでは、どの暗号資産が証券とみなされるかは誰にもわからない。世界中の開発者がトークンを発行しつつ、SECの怒りに触れることを避けようとするという困難な状況が生まれている。開発者は不正を働いたり、アメリカの個人投資家に敢えて証券を販売したいわけではない。

私がCEOを務める企業も、トークンを発行する組織をどこで登記するかを選定している最中で、ドバイは現在、リストの高い位置にいる。他にも、シンガポール、スイス、イギリスなど、トークン発行者に対して、はるかに明確な規制が存在する国々が有力候補になっている。

私はアメリカ人で、私たちのプロジェクトはすでに、アメリカで参加者を抱えているにもかかわらず、私たちの企業にとって検討に値するようなアメリカの地域はない。

ベンチャーキャピタルや世界的なイノベーションを生んできたアメリカは、急いで環境を整備し、あらゆる開発者が透明性を持って遵守できるルールによる規制を整備しなければならない。

そうでなければ、アメリカという国も、イノベーションエコシステムも、規制上の明確性を生み出す必要性を認識し、行動を起こした世界中の新興の暗号資産ハブに、最高のプロジェクトや最高に優秀な人材を取られてしまうリスクが高い。

ボイド・コーエン(Boyd Cohen)氏:環境に優しい移動手段を選んだユーザーが報酬をもらえる「Move-to-Earn(移動して稼ぐ)」ゲームのWheelCoinを手がけるIomobの共同創業者兼CEO。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Midjourney/CoinDesk
|原文:I’m American, but My Crypto Startup Won’t Be