銀行危機、ステーブルコインにとっては吉【オピニオン】

アメリカ政府がステーブルコインを救済することになるなど、誰が想像できただろう?

まったくの偶然によって米財務省、連邦準備制度理事会(FRB)、連邦預金保険公社(FDIC)は破綻した2つの銀行の預金を全額保護する計画を発表したことによって、ステーブルコインのUSDコイン(USDC)の担保の少なくとも8%を保護する約束も行うことになった。USDCを手がけるサークルは、USDCの準備資産の約4分の1を6つほどの銀行に預けていると述べていた。何という偶然だろう。

さまざまなステーブルコイン

シリコンバレー銀行の破綻の影響を受けて、USDCが米ドルペッグを失い、事態収拾に追われていたサークルにとって、救済措置はありがたいものとなった。サークルのジェレミー・アレール(Jeremy Allaire)CEOは先日、同社が取った緊急対策や、保有する現金を分散し、将来、ステーブルコインを事実上の「電子的な国債」のようなものにするためのここ2年におよぶ取り組みについて語った。

ステーブルコインのような暗号資産ベースのツールが中央銀行デジタル通貨(CBDC)の「代理」的な機能を果たすというアイデアを聞いて戸惑ったとしたら、それはあなただけではない。

ステーブルコインは暗号資産と実体経済の架け橋となるかもしれないが、24時間いつでもアクセスできることや、さまざまな取引決済メカニズムがあること以外にも、暗号資産を暗号資産たらしめる特徴を維持すべきだ。暗号資産が銀行システムにあまりに近寄ってしまえば、検閲耐性はほとんど実現不可能になってしまう。

なぜここで「べき論」を展開しなければならないのか? 「ステーブルコイン」は、幅広い特性とまったく異なる仕組みを持ったさまざまなブロックチェーン基盤の資産を表す不完全な言葉だ。価格が固定的であること以外に、例えば、崩壊したアルゴリズム型ステーブルコインのテラUSD(terraUSD)とUSDCには共通点はほぼ存在しない。

活発化する実験的プロジェクト

最近の銀行危機を受けて、ステーブルコインの実験的プロジェクトがにわかに活気づいている。ビットコイン基盤のDeFi(分散型金融)プロトコルのSovrynは17日、ビットコイン(BTC)に完全に裏付けられた「Sovrynドル」を発表。ゴールド(金)を裏付けとするステーブルコインでも同様の実験が行われている。

暗号資産取引所ビットメックス(BitMEX)の元CEO、アーサー・ヘイズ(Arthur Hayes)氏は先日、インバース・パーペチュアル・スワップを上場する複数の暗号資産取引所が発行元となるステーブルコイン「NakaDollar」のアイデアを発表した。

こうした実験的アイデアの健全性を保証することはできないが、一般論として、実験は良いことだ。安全な投資と銀行に預けた現金が裏付けるステーブルコインは、その仕組みの中で重要な役割を果たす銀行が破綻したとしてもレジリエンス(回復力)を保つことをUSDCは世界に示した。

ステーブルコインのテザー(USDT)を発行し、これまでに良い評判も悪い評判も集めてきたテザー社(Tether)は、虚偽の情報をニューヨーク州の検察に突き止められながらも成長しただけでなく、非常に順調だ。

しかし暗号資産は、銀行や金融の代替オプションを提供するために生まれたはずだ。銀行口座を持ったステーブルコインの「プラットフォームリスク」よりも、すべてがオンチェーンで展開するステーブルコインの「プロトコルリスク」を好む人たちも間違いなく存在する「べき論」とは別の議論のはずなのだが。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:サークルのジェレミー・アレールCEO(Danny Nelson/CoinDesk)
|原文:The Banking Crisis Has Been Good for Stablecoin Experimentation