暗号資産、銀行取り付け騒ぎの原因ではなく解決策【コラム】

破綻したシリコンバレー銀行は、米地銀のファースト・シチズンズ銀行が買収することになったと米連邦預金保険公社(FDIC)は3月26日遅くに発表した。

取り付け騒ぎや破綻は、シリコンバレー銀行以外にもシルバーゲート銀行やシグネチャー銀行などでも発生し、ファースト・リパブリック・バンクなどにも取り付け騒ぎの懸念が広がった。さらに銀行危機は海を超えてヨーロッパにも拡大し、スイス国立銀行(中央銀行)はクレディ・スイスに対して、500億スイスフランを融資した。

しかし、暗号資産企業の2大取引先だったシルバーゲート銀行とシグネチャー銀行の破綻はとりわけ、米政府が暗号資産を国外に締め出したがっているという印象を与えた。

金融を専門とする人にとっては、暗号資産から距離を置き、これ以上のエネルギーを注ぐことをやめる時のように感じられるかもしれない。しかし実際には、暗号資産を受け入れ、さらに学びを深めるために最善の時となるかもしれない。ビットコインブロックチェーンが作られた目的は、伝統的銀行の世界で現在広がっているような危機を防ぐためであり、暗号資産が普及し続けるべき理由もそこにある。

暗号資産やブロックチェーンテクノロジーの多くの特徴は、私たちが今、直面している問題のソリューションとなり得る。セルフカストディ、透明性、即時決済は、暗号資産が持つ特徴であり、普及拡大をもたらすことができる。

セルフカストディ

銀行や金融機関は、現金や証券をはじめ、私たちの金融資産の大半のカストディ(管理・保管)を手がけている。銀行や金融機関は私たちの代わりに資産を管理し、保管している。

こうした方法は、必要性から生じた。私たちが自身の資産を自ら保管することは長年、現実的ではなかった。私たちは取引、貸付、借入をはじめ、金融システム全体の運営をカストディアンに頼ってきた。

その結果、カストディアンに対する極端な政府の規制と、その規制を主な理由としてカストディアンに対する無条件な信頼が生まれた。

つまり、大半の欧米人は認可された銀行に預けた自分の資産は安全だと考えている。銀行はその預金を使って、あまりリスクを冒すことができないからだ。

しかしここ数週間で、規制があっても、銀行に預けたお金が安全ではない可能性が露呈した。

一方、暗号資産は」セルフカストディ」というアイデアを基盤にしている。

より多くの人々や企業が、一部の資産の選択肢として暗号資産のセルフカストディを検討するようになるだろうと私は考えている。それは必ずしも人々や企業が暗号資産に投資するからではなく、政府が規制しているカストディアンへの依存を避けるための方法として暗号資産を検討するからだ。

私たち全員が自分の資産を自ら管理した場合にのみ、システムはその効率性を真に発揮することができる。

透明性

現在の多くの問題や規制は、透明性、あるいはその欠如に関わるものだ。アメリカの金融機関が州や連邦準備制度理事会(FRB)、証券取引委員会(SEC)に登録する目的の1つは、財務情報を公開することで、私たちがリスクに基づいた判断を行いやすくするためだ。しかし、その透明性は通常、四半期ごとでリアルタイムではない。

最近の取り付け騒ぎは、支払い能力に関する懸念ではなく、流動性への懸念によって生じた。預金者たちは他の人たちに出遅れ、引き出す資金が残っていない状態になることを恐れた。

暗号資産のように、資産プールがリアルタイムで公開されていれば、預金者全員がそこにどれほどの流動性があるかを正確に確認し、恐怖心からではなく、引き出しの相対的な必要性を効率的に決定することができる。

即時決済

預金者や他の顧客への価値を高め、サービスを提供するために、銀行などのカストディアンは預金から融資を行うか、低リスクの資産に投資して、利回りの獲得を狙う必要がある。

もちろん、融資と証券の間には時間のずれがある。証券は通常、非常に流動性の高い市場だが、即時決済は行われず、特定の市場取引時間に従う必要がある。

最近の取り付け騒ぎでは、パニックが夜や週末に広がったが、銀行が証券を売却して自由に使える資本を手に入れるには難しい時間帯だった。

対照的に暗号資産システムは、常に稼働しており、即時あるいは即時に近い決済が可能だ。私があなたにビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)、USDコイン(USDC)を送れば、私のウォレットからあなたのウォレットにすぐに移動し、取引が決済される。市場が開くことを待ったり、私の口座からあなたの口座に資金が移動することを待つ必要はない。ブロックチェーン基盤の取引はすぐに決済され、確定される。

必要性を証明する

暗号資産価格の変動、メディアによる報道の増加、暗号資産に関する議論の高まりに伴ってここ数年、多くの否定的な人たちが、暗号資産は「必要なもの」ではなく、その価値を正当化できないと主張してきた。私は金融の専門家に教育を行う立場にいるが、私でさえもアメリカや西洋の民主主義社会において、暗号資産は必要ではないと発言してきた。

しかし再三にわたって私たちは、ブロックチェーンや暗号資産、DeFi(分散型金融)が持つ特徴の必要性を目撃してきた。個人や企業が、より良い金融システムは存在すると認識する場面を私たちは目撃するようになっている。より良い金融システムとは、政府の介入や政策、紙幣の増刷などなく、金融取引のために使えるものだ。

そうした認識が生まれるに伴って、そして暗号資産カストディがより安全なものになることに伴って、暗号資産やブロックチェーンへの自然なシフトが起こるだろう。しかしそれには、金融の専門家のサポートが必要だ。金融の専門家は現在の状況を、米政府がアンチ暗号資産的であるサインと捉えることができるし、私たちには暗号資産エコシステムが必要なことのサインと捉えることもできる。

暗号資産について学び始め、ポートフォリオに組み込むベストの方法を決定するには、今が最適かもしれない。

暗号資産の次なる強気相場は、投機に基づいたものにはならないだろう。普及の広まりと、現行の金融システムの現実的で必要な代替オプションとして暗号資産を捉える一般市民や企業による利用に基づいたものとなるはずだ。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Alexandros Michailidis / Shutterstock.com
|原文:Crypto Is the Solution to Bank Runs, Not the Cause