テザーの取引高が過去最高を記録した理由

テザーの取引高が過去最高を記録した理由

Brady Dale
公開日:2019年 9月 1日 09:00
更新日:2019年 9月 1日 09:00

中国政府が人民元と仮想通貨の取引を禁止にしてから1年が経過したが、中国のトレーダーたちは、ドルに連動したステーブルコインであるテザー(Tether/USDT)を用いて市場をけん引し続けている。

「仮想通貨取引業は中国国内の銀行サービスの利用を規制されていますが、それでもなお活気づいています」とドラゴンフライ・キャピタルパートナーズ(Dragonfly Capital Partners)の共同創業者、アレクサンダー・パック(Alexander Pack)氏は語る。

こうした銀行関係の規制へ対処するために、トレーダーはステーブルコインを用いることが一般的である。コインマーケットキャップ(CoinMarketCap)によると、 2019年8月に USDTの取引高はグローバルで時価総額40憶ドル(約4257億6千万円)を超え、過去最高となった。取引所であるフォビ(Huobi)やバイナンス(Binance)における商いの4~8割にテザーが用いられていると報じられており、中でもバイナンスはUSDTを担保とするローンも提供している。

しかし、取引所を介さない店頭市場(OTC)のトレーダーが同資産を好んで使うことから、正式な取引高の全貌を捉えることは難しい。

年間の取引を集計するコインメトリクス(CoinMetrics)のブロックチェーン関連データでは、8月7日(現地時間)が年間最高値で、USDTのアクティブなウォレット数は78,100、イーサリアム版のUSDTeでは21,300に迫った。実際、データサイトのETH・ガス・ステーション(ETH Gas Station)によると、テザーはこうした自社二つ目のステーブルコインを運営できる状態にするためだけにイーサリアム関係の採掘に26万1千ドル(約2780万円)近くの手数料を支払っている。(テザーが発行する新たなステーブルコインも予定されており、今度は人民元との連動となる。)

全てを勘案すれば、USDTのブローカーは2019年に旨味あるニッチを掘り出したと言えよう。法定通貨に流動性を供給するブローカーは特にそうだ。

「テザーの中国における流動性は、本当に高いです」と、中国人投資家が匿名を条件に語った。「仮想通貨取引のために法定通貨との交換を行う上でよく用いられます。また、越境取引などの用途で、きちんとした企業がテザーを利用するケースも見たことがあります」

一方で、他の2人のアジア人OTCトレーダーは、自国の厳しい資本規制をかいくぐって資産を移転させるのにUSDTを使う中国人がクライアントの相当を占めると匿名で語った。

「USDTが仮想通貨のOTC取引に占める割合は常に甚大です」とは香港拠点のトレーダーによる弁である。例えば、このトレーダーの場合、8月6日(現地時間)に4500万ドル(47億9070万円)相当の取引をしており、その半分以上をUDSTが占めていた。

中国における強気相場

USDTの取引量が急上昇したのは、キャピタルフライト(資本逃避)の在り方に変化があったというより、強気相場でのリターンを獲得しようとする機運に起因すると専門家は考えている。

「テザーはドルを受け付けない取引所において、比較的安定してまとまった価値を保有するための最も簡単な手段です」と米国拠点のトレーダーは述べる。「テクノロジー、インフラ、もしくはその他の利点よりも、USDTはそのネットワーク効果が注目されています」

端的に言うと、中国国内ではグレーマーケットとなるが、OTCトレーダーが法定通貨と仮想通貨の交換を担う。そして、中国人トレーダーは、バイナンス、フォビ、オーケー・コイン(OKCoin)といった世界的な取引所において自らのより広範なポートフォリオの清算にUSDTを用いるのだ。この動きがビットコイン市場に影響する。なぜならトレーダーや取引所は、このトップ仮想通貨を法定通貨との交換に用いるのが普通だからだ。クラーケン(Kraken)やビットフィネックス(Bitfinex)のような取引所では、こうしたビットコインを用いた通貨ペアを提供している。

匿名希望の香港のトレーダーによれば、中国のトレーダーは別の形でも市場全般に影響を与えているという。「何十億ドルもが、資本規制を全く受けずに中国から出ているのです」

例えば、アンティグアを拠点として2019年4月に操業を開始した仮想通貨先物市場のFTXは、CEOのサム・バンクマン・フライド(Sam Bankman-Fried)氏によれば 1日5000万ドル(約53億1800万円)から3億ドル(約319億円)の取引高がある。中国からのFTX利用者は一万人規模とのことだ(その帰結として、USDT先物の契約が目立っている)。

2019年のUSDTは、8月に需要の急激な高まりがあったにもかかわらず、わずか数セントの変動しか見せず、資産として他と比較した際にその安定性には目を見張るものがある。というのも、USTDを発行するテザー社の弁護士が同ステーブルコインとドルの裏付けが1対1ではないと認め、また関連会社のビットフィネックスが、USDTを不正に利用して会社の損失を補てんした嫌疑でニューヨーク市の法的な調査を受けているのだ。

しかし、匿名の中国人投資家は、多くの投資家がビットフィネックスの今夏のイニシャル・エクスチェンジ・オファリング(IEO)を、10億ドル(1063億1千万円)の「救済策」だと見なし、USDTの継続した信頼性を確証するものだったと述べた。

「多くの利用者がビットフィネックスとテザーの関係性を理解しており、それはこの業界において非常に重要なことなのです」と同投資家は語る。「(ビットフィネックスは)最もコンプライアンスの程度が低い取引所のひとつですが、そこがまた筋金入りのビットコイン支持者たちから多くのサポートを引き出すことに役立っています」

翻訳:石田麻衣子
編集:T. Minamoto
写真:Shutterstock
原文:Why Tether Volume Surged to All-Time Highs in August