ナスダック、暗号資産カストディサービス計画を中止──ビジネス・規制環境の変化で

ナスダック証券取引所を運営するナスダック社は、2023年第2四半期に開始予定だった暗号資産(仮想通貨)カストディサービスの計画を中止する。アデナ・フリードマン(Adena Friedman)CEOが19日の決算会見で発表した。

ナスダック社は2022年9月、暗号資産カストディサービスに必要なインフラの整備と規制当局の承認を得るための準備をしていると発表した。同社はニューヨーク金融サービス局(NYDFS)に対し、カストディ事業を監督する限定目的信託会社の設立を申請していた。

ビジネス・規制環境の変化が理由

フリードマンCEOは、ナスダック社は「アメリカでのビジネスと規制をめぐる環境の変化を考慮し」、こうした計画と必要なライセンス取得に向けた取り組みを中止することを選択したと表明。一方で、ETF(上場投資信託)を発行する可能性のある企業との提携や暗号資産カストディ技術の提供など、さまざまな方法でデジタル資産業界をサポートし続けることを目指していると述べた。ナスダック社は、先月に世界最大の資産運用会社ブラックロック(BlackRock)が申請したビットコインETFの上場取引所パートナーとなり得る会社だった。

ナスダック社の動きは、アメリカにおける機関投資家の暗号資産採用に打撃となる。アメリカでは、規制当局が暗号資産企業と関連サービスを標的にしているとみられており、こうした企業がより寛容な国・地域に流出することが懸念されている。

上場企業の関与に高いハードル

特に暗号資産カストディをめぐっては、米証券取引委員会(SEC)は上場企業が関与するのに高いハードルを設けている。職員会計公報(Staff Accounting Bulletin)121号として知られる2022年4月の会計指令の中で、SECスタッフは顧客のデジタル資産を保有する企業に対し、それを自社の貸借対照表に負債として記録する必要があると勧告した。

|翻訳:CoinDeskJAPAN
|編集:林理南
|画像:Shutterstock
|原文:Nasdaq Halts Plan for Crypto Custody Service Due to U.S. Regulatory Conditions