低迷するソラナ:復活の鍵を握るのは新しいトークン

サイファー・プロトコル(Cypher Protocol)のバレット(Barrett)氏の見解では、ソラナ(Solana)の復活は、あるものにかかっている──トークンだ。

具体的には、ソラナ・ブロックチェーン上のチームによる新しいトークンだ。そうしたトークンこそが、流動性、取引、そして何よりも重要な新規ユーザーをソラナ・エコシステムに呼び込む鍵となる。

暗号資産(仮想通貨)取引プラットフォーム「サイファー(Cypher)」の創業者であるバレット氏は、今年で4回目を迎える年2回開催のハッカーハウス「mtnDAO」の2日目に米CoinDeskのインタビューに応じた。同氏はこのイベントの司会者兼チーフオーガナイザーであり、オンチェーン・レンディング・プラットフォームのMarginFiとともにメインスポンサーにもなっている。

「ポイント」システムの盛り上がり

2社は、それぞれの市場に参加する暗号資産トレーダーに「ポイント」を与えるロイヤルティ・プログラムのおかげもあって、ここ数週間でソラナ・エコシステム内の成長率ランキングを駆け上がっている。ポイント自体はトークンではないが、ポイントを貯めているほぼ全員がトークンに変わることを確信している。

少なくとも2021年にサイファーがローンチして以来、ファーストネームだけで通してきたバレット氏は、サイファーがトークンをローンチしようとしているのか、あるいはエアドロップを実施するのかについては明確に答えようとしない。あまり重要ではないからだ。「サイファーのエアドロップはいつか」と質問する人たちは皆、ソラナ(SOL)、イーサリアム(ETH)、ビットコイン(BTC)などの暗号資産を取引するために、サイファーの市場に資金を投入し、ポイントを獲得しているのだから。

現在の盛り上がりによって、サイファーは誕生から3年、さらに年数と同じくらいの路線変更を経て、初めて成功を味わっている。(バレット氏が「一般化された分散型取引所」と呼ぶ)Cypher v3は8月2日、初めて総預かり金額(TVL)が200万ドル(約2億8500万円)を超えた。

「我々は、ソラナ・エコシステムにおいて、日、週、月の成長率で、ユーザー数とTVL(預かり資産)の両方で常にトップ5に入っている」とバレット氏は語った。サイファーは流動性インセンティブ・プログラムを開始して以来、1384%の成長を遂げ、ポイントシステムを始めて以来では2倍以上の成長を遂げており、取引高は「スポットとパーペチュアル先物」市場で増加しているという。

サイファーは、ソラナが弱気相場に直面しているなかで大きく躍進しているプロトコルの緩やかな連合体のひとつ。バレット氏は、その緩やかな連合体を「ソラナDeFi 2.0」と呼んでいる。その多くは、Mango Markets、Saber、Serumといったトークン連動型プロトコルが注目を集めていた2021年夏〜秋にかけてのソラナ全盛期にも存在していた。

失態、スキャンダル、FTXのサム・バンクマン-フリード氏の悪影響などが暗号資産ソラナを急落させたことと同じくらいに、これらのプロトコルのソラナ・エコシステムに対する影響力も低下した。エコシステムの他のリーダーたちも、それほど派手な状況ではないものの同様に凋落している。

過去の失敗から学び、エコシステム復活につなげる

バレット氏の言葉を信じるなら、トークンを発行しなかった新しいタイプのソラナ・プロトコルが主導権を握る準備を整えつつあるようだ。

新しいパラダイムでトークンを発行するとなると、過去のチームの「失敗を観察し、その教訓から学ぶことができる」とバレット氏は語る。これは特に、より優れたトークノミクス、つまりチームがどのようにトークンを配分するかをより良く設計することを意味する。エアドロップへの課税に関する米内国歳入庁(IRS)の新たなガイダンスが、ソラナDeFiの再生にどのような影響を与えるかも未知数だ。

ソラナDeFiが数十億ドルの高みに戻るのか、それとも忘却の彼方への長い道のりをとぼとぼと歩んでいくのかは新たなトークンを成功させることができるかどうかで決まるかもしれない。ソラナ・エコシステムにおける最近のTVLの成長は、サイファーや他の企業が成長を続けているにもかかわらず、3億1000万ドル前後で停滞している。これは新たな資本が流入していないことを示している。昔からある資金が、動き回っているだけだ。

バレット氏は、筆者と同様に暗号資産市場について、シニカルな色彩を帯びているものの現実的なビジョンを持っている。「ディジェン」と呼ばれる、全財産を賭けてしまうような恐れを知らない暗号資産トレーダーが求めるものはただ一つ、それはお金だ。

タダで手に入るトークンはお金である。したがって、ディジェンたちは無料のトークンを欲しがる。彼らはトークンがあるところに行き、トークンを手に入れるために必要なことをする。それが取引を意味するのであれば、レバレッジを効かせて取引し、ステーキングを意味するのであれば、イールドループと呼ばれる手法でさらに多くのトークンを手に入れる。

ソラナDeFi 2.0は、そのようなトレーダーたちにあらゆる段階でインセンティブを与える。そうなると、暗号資産の下降スパイラルのフィードバックループを生み出す可能性もある。

「この1年半、ソラナのストーリーに欠けていた多くの興奮を生み出している」と、バレット氏はインセンティブ・プロトコルについて語った。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:サイファーの創業者バレット氏(Danny Nelson)
|原文:Solana Tokens or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Points