森を守れ、Web3を使え

2023年、私たちは最先端テクノロジーを活用して、この時代の最も重大な各種の環境問題に立ち向かい、解決する絶好のポジションにいる。Web3のデジタルで分散型のパラダイムは、もはや遠い未来の話でも、抽象的な概念でもなく、私たちの現在の現実だ。そして、特に森林破壊とそれに関連する環境問題の現在進行形の闘いにおいて、その可能性を最大限に活用する時が来ている。

森林破壊は気候変動、生物多様性、先住民社会に壊滅的な影響を及ぼす世界的な問題。欧州連合(EU)では最近、共同市場で販売される製品について、世界のいかなる場所でも森林破壊を助長しないことを義務づける法律が制定された。これは大きな前進だが、検証やコンプライアンスの面で複雑な課題も生じている。

根本的変化をもたらす可能性のあるソリューションを提供する、Web3テクノロジーの出番だ。

デジタル指紋

Web3テクノロジーは一般的に、暗号資産(仮想通貨)における基礎的な役割で知られているが、金融以外にも広範囲に応用できる。コンテンツ・アドレス指定(content addressed)データと分散型データストレージを使用することで、ココアから印刷された紙まで、市場に出入りするすべての製品を、その出所まで遡って追跡できるようにできる。ある製品と森林破壊との関係について、反論の余地のない証拠が得られることになる。

Web3テクノロジーは、企業が新しい環境規制を遵守するための鍵となる可能性がある。

どのように機能するのだろうか? すべての製品、例えば板チョコや1枚の紙が、ブロックチェーンベースのシステムに登録された固有のデジタル指紋を持つと想像してみてほしい。この指紋には、原材料が栽培された農園から、製造工程、最終的な販売に至るまで、製品のライフサイクル全体に関する情報が含まれている。

コンテンツ・アドレス指定データを使用することで、この情報を分散型データベースに永続的に記録できる。データをその場所に基づいて識別する従来のデータベースとは異なり、コンテンツ・アドレス指定ストレージはデータをそのコンテンツに基づいて識別する。この方法により、製品の出所を確認するうえで極めて重要なデータの変更不可能性が保証される。企業や規制当局は、このデジタル指紋をいつでも見ることができ、その製品が森林破壊を助長しているかどうかを確実に判断できる。

さらに、ほとんどのWeb3テクノロジーは分散型であるため、この情報がいかなる当事者によっても操作されないことを保証できる。このようなシステムのトラストレスで透明性を持った性質は、従来のサプライチェーンシステムを長年悩ませてきた、情報改ざんリスクを大幅に軽減する可能性がある。

大きな転換

しかし、このシステムの導入を成功させるためには、さまざまなセクターやステークホルダーに広く採用される必要があることを忘れてはならない。企業は、従来のサプライチェーンシステムからWeb3対応のシステムへと移行する必要があるが、技術的イノベーションにはつきものの抵抗を考えると、この作業は困難なものとなる可能性がある。

とはいえ、この移行期を容易なものにするWeb3テクノロジーのメリットは過小評価されるべきではない。データ検証のための強固なシステムを提供することで、コンテンツ・アドレス指定データに基づくシステムは、企業がコンプライアンス違反で直面する可能性のある罰金を軽減できる。

新しいEU規制では、企業が品質管理を怠った場合、年間総売上高の最大4%の罰金が科される可能性がある。年間総売上高の4%の損失は大きな抑止力であり、Web3テクノロジーへの投資は経済的に健全な判断となる。

また、このシステムが責任ある消費の促進に役立つ可能性があることも注目に値する。消費者が自分の購入品が環境に与える影響について、より多くの情報を得るようになれば、森林破壊に加担しない製品を意識的に選ぶようになるかもしれない。消費者の信頼を醸成するだけでなく、企業がより持続可能な取り組みを追求するインセンティブにもなるだろう。

まとめると、透明性、安全性、変更不可能性を独自に組み合わせたWeb3テクノロジー(特にコンテンツ・アドレス指定データと分散型データストレージ)は、複雑な森林破壊のコンプライアンスに対する回答となる可能性がある。世界がより持続可能な取り組みに向かうにつれて、それに対応できるテクノロジーが必要となる。適切な導入と投資によって、Web3テクノロジーはその解決策を提供できるだろう。

今こそステークホルダーは、Web3テクノロジーが単なる投機的なツールや一時的なトレンドではなく、環境保護に役立つ強力なソリューションであることを認識すべきだ。これらのテクノロジーを森林破壊のコンプライアンスなどの課題に応用することで、私たちはより持続可能な未来に向けて大きな一歩を踏み出すことになる。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Simon Wilkes/Unsplash(CoinDeskが加工)
|原文:Save a Tree, Use Web3