アメリカ国債市場のボラティリティが低下──それが暗号資産にとって重要な理由

アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)が借入コストを上昇させ続ける決意を示しているにもかかわらず、25兆ドル(約3625兆円、1ドル=145円換算)規模のアメリカ国債市場には不思議な落ち着きがある。この静けさが、暗号資産(仮想通貨)を含むリスク資産を支えている。

チャートプラットフォームのTradingViewによると、MOVE指数(オプションに基づく米国債のボラティリティ指標)は9月15日に96.61まで下落し、FRBが2022年3月に利上げを開始して以来最低となった。

この指数は記事執筆時点では今年3月に記録した198のピークからは50%近く下落している。アメリカ政府が発行し、世界で最も安全で最も流動性の高い商品と広く考えられている財務省債券は、世界の担保および証券金融の頂点に上り詰めている。

MOVE
MOVE指数のチャート。(TradingView)

債券のボラティリティ低下はレバレッジド・ファイナンスを安定させ、担保の再担保化によるマネーの創出を可能にする。言い換えれば、グローバル市場の流動性ストレスが緩和され、借り入れの増加やポートフォリオの調整が促進される。これはビットコイン(BTC)や株式のようなリスク資産にとってプラスに働く。債券市場のボラティリティが上昇すると、逆にレバレッジを効かせたプレーヤーは資産を売却し、リスクへのエクスポージャーを減らすことを余儀なくされる。そのため、MOVE指数のピークは株式市場の指数の底を示す傾向がある。

ビットコインは、MOVE指数が下落している間に落ち着きを取り戻した。米CoinDeskのデータによると、ビットコインは9月11日に2万5000ドルを下回る安値を付けて以来、8%以上上昇している。

MOVE指数の最近の下落は金融情勢を緩和する一助となっているが、一方で主要な中央銀行はすぐに急激な利下げを実施する雰囲気ではないようだ。

しかし、予期せぬショックで国債先物のレバレッジ・ショートベットが解消されれば、指数は急上昇する可能性がある。

国際決済銀行(BIS)は最新の四半期報告書で「米国債先物におけるレバレッジを効かせたショート・ポジションの現在の積み上がりは、マージン・スパイラルを引き起こす可能性があるため、監視に値する金融の脆弱性である」と警告している。BISによると、債券市場では現在約6000億ドル(約87兆円)相当のショートポジションが保有されている。

|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:TradingView
|原文:Volatility in $25 Trillion U.S. Treasury Market Slides. Here’s Why It Matters to Crypto