イーサリアムのシャンハイ・アップグレードはネットワークの活性化に失敗した:JPモルガン

4月に実施されたイーサリアムの「シャンハイ」アップグレードは、多くの人が期待していたほどには世界最大のスマートコントラクト・ブロックチェーンの活動を活発化させていないようだとJPモルガン(JPMorgan)は9月21日の調査報告書で述べている。

「Mergeの結果、プルーフ・オブ・ワーク(PoW)からプルーフ・オブ・ステーク(PoS)へ移行したことで、イーサリアムのネットワークのエネルギー消費量は99%以上減少し、ETHの供給量は縮小し、ステーキングは急激に上昇したが、ネットワーク活動の増加はむしろ期待外れだった」とニコラス・パニギスツォグロウ(Nikolaos Panigirtzoglou)氏率いるアナリストは書いている。

同行は、イーサリアムの1日のトランザクションはシャンハイ以降12%減少し、1日のアクティブアドレスも20%近く減少し、ブロックチェーン上の分散型金融(DeFi)での預かり資産(TVL)は8%近く低迷していると指摘している。

ネットワーク活動の低下は、テラとFTXの崩壊、アメリカの規制当局による取り締まり、ステーブルコインユニバースの縮小など、過去1年間の「弱気な力」が、シャンハイ・アップグレードによるプラスの影響を潜在的に上回ったことを示唆しているとJPモルガンは述べた。

シャンハイ・アップグレード以来、ステーキングは50%急増し、ネットワークセキュリティの向上に役立っているが、「リド(Lido)のようなリキッドステーキングプロトコルのシェアは不快なほど高いままであり、中央集権化についての疑問を投げかけている」と同行は付け加えた。

シャンハイ・アップグレード後の変化。アップグレードは2023年4月13日に行われた。(JPモルガン)

Mergeは2022年9月に行われ、よりエネルギー集約的なPoWからPoSコンセンサスメカニズムへの移行が行われた。シャンハイ・アップグレードは今年4月に行われ、ステークド・イーサリアム(stETH)の引き出しを可能にした。DeFiは、ブロックチェーン上で行われる融資、取引、その他の金融活動に使用される包括的な用語だ。TVLはDeFiプロトコルに預けられた暗号資産(仮想通貨)の総額を指す。

報告書は、今後の「イーサリアム改善提案(EIP)-4844」アップグレード、別名「プロト・ダンクシャーディング(Proto-danksharding)」でイーサリアムのネットワークアクティビティが大幅に増加する期待はさらに高まっているが、「引き続き弱気な暗号資産勢力が逆風となっている」としている。

プロト・ダンクシャーディングは、今年の第4四半期に計画されている。

|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:JPモルガン
|原文:Ethereum’s Shanghai Upgrade Has Failed to Boost Network Activity, JPMorgan Says