ウォレットは未来の金融を便利にしていく──EU、デジタルIDとウォレットの開発へ

ブロックチェーンテクノロジーやトークン化の進歩がニュースを飾ることは多いが、未来の金融(とビジネス)インフラにとって最も重要なピースとなるかもしれない、もっと平凡なコンセプトがある──デジタルウォレットだ。

デジタルウォレットの定義は幅広いが、ここでは、暗号技術を使って、トークン化された資産を保護・保管できるインターネット上のアドレスを指すブロックチェーンベースのソフトウェアの一部としよう。

これらのウォレットには、長い一連の文字と数字以外に特定できるような情報はない。ウォレット自体には、ユーザーのウォレット内の保有資産のロックを解除してアクセスするために必要なデジタルキーが含まれており、このキーはウォレットの所有者が取引を承認した場合にのみ共有される。

バラバラの口座をひと目で確認

現在、個人、多くの中小企業、そして金融機関は、それぞれ別々の種類の紙ベースの文書(多くの場合、電子形式で保存される)を必要とする金融口座のバラバラな組み合わせで運用されている。

個人の場合、これには、現金を扱う当座預金口座や普通預金口座、退職金や教育、医療などを扱う証券口座や投資口座、住宅ローン、ローン、クレジットライン、クレジットカードなどを扱う負債口座、そして、さまざまな証書、契約書、保険証書などの特別な文書を含む個人の資産、貴重品、収集品に関連する多数の口座が含まれる。

このように膨大な数の口座を扱うのは、楽しいことでも、簡単なことでもない。このような口座ごとに、1人の口座所有者が複数のサービスプロバイダーを使っていたり、サービスプロバイダー内に複数の口座を持っていたりすることがある。

口座の所有者は、ユーザー名とパスワードを覚え、デバイスを認証し、しばしば口座番号と残高を手作業で入力して、各機関にまたがる保有資産の集計しなければならない。

こうした異なるタイプの口座の資産をトークン化すれば、複数のタイプの金融商品がデジタルウォレットに並んで配置され、すべてのユーザーが自分の資産すべてを一カ所で確認できるようになる。

キャッシュ(現金)は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)、暗号資産(仮想通貨)、ステーブルコインに分散させることができる。投資は、トークン化された証券(セキュリティ・トークン、あるいはデジタル証券)、ファンドなどで構成できる。負債はトークン化された債務として表現し、貴重品、収集品はトークン自体に証書や保険証書などの契約文書が埋め込まれたNFTとして表現できる。

参考記事:「ウォレット」は使い分けるのか、1つに集約するのか──マスアダプションに向けた可能性・将来像を議論【btokyo clubラウンドテーブルレポート】

これまでにない使いやすさを

すべての資産は安全に保管され、ウォレットをロックおよびアンロックする暗号キーは、個別に保持されるか、ウォレットインフラストラクチャーのセキュリティを保証・管理する資格を持つプロバイダーによって保護される。

さらに、口座所有者のデジタルアイデンティティはこのウォレットに結び付けられ、すべてのサービスプロバイダーやユースケースでやり取り可能になり、個別サービスでのKYC(顧客確認)が不要になり、現在では不可能な使いやすさが実現する。

こうしたビジョンの実現に向けた取り組みはすでに始まっている。欧州のデジタルトランスフォーメーション(DX)目標の一環として、ユーロ圏全域で使用可能なデジタルIDとウォレットシステムの開発が進んでいる。

欧州連合(EU)デジタルアイデンティティ・ウォレット(European Union Digital Identity Wallet )の試験運用は4月に開始された。欧州全体で250を超える民間企業や公的機関が参加する予定だ。ユースケースには金融シナリオも含まれるが、納税申告、運転免許証の提示、ビザや旅行書類の提示など、より広範な分野もカバーしている。

そう遠くない将来、デジタルウォレットはすべての投資家の生活の中心に位置するようになるかもしれない。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Resource Database/ Unsplash
|原文:The Blockchain-Based Solution Poised to Improve Our Financial Lives