ビットコインからのホリデーギフト

ビットコイン(BTC)4万ドルの時代が帰ってきた。イーサリアム(ETH)も2000ドルを超え、その他の時価総額の小さなトークンも主要トークンに追いつこうとしている。ホリデーシーズンに間に合ったようだ。

暗号資産の市場サイクル

暗号資産(仮想通貨)市場はジェットコースターのようだ。私たちの目を釘付けにし、ハラハラさせるワイルドな乗り物。プロトコルやプロジェクトは、市場サイクルという炎の中で鍛えられ、洗練される。市場の劇的な上昇と下降の中で劣ったアイデアは脱落し、退場する。

このようなサイクルは、投資家心理、規制の進展、技術的進歩などが牽引する需要ダイナミクス、半減期スケジュール、プロトコルのフォーク、ICOといった供給側の要因が組み合わさって引き起こされる具体的な要因に根ざしている。

これらの要因が有利に働くと、需要が急増し、価格が急上昇し、盛り上がりや「FOMO」(機会を逃すことへの恐怖:fear of missing out)と呼ばれるお馴染みの促進剤によってさらに煽られることが多い。この時期は、高揚感に浸り、恐怖の焦点は予期しないさらなる値上がりという強気相場の幸福な日々となる。

しかし、すべてのサイクルには二面性があり、陽には陰がある。悪名高い「暗号資産の冬」の到来だ。この凍てつくような季節は、センチメントが過剰に強気になり、投資家が過剰にレバレッジをかけたときに訪れる。結果として市場が自己修正し、価格は急落。投資家はパニックに陥り、ニューヨークの冬の爆弾低気圧よりも凍てつくようなムードになる。

この寒い季節のサインは、価格下落の長期化、市場ボラティリティの上昇、取引高の減少、そして盛り上がりの時期に購入し、含み損のストレスを無視しようとする投資家の全般的な絶望感だ。

冬の終わり

では、我々は現在、このサイクルのどこにいて、なぜ「暗号資産の冬」に別れを告げ、暖かい季節に足を踏み入れようとしているのだろうか?

ビットコイン(左)とイーサリアム(中央)のトレンドインジケータ、およびCoinDesk Market Index
(CoinDesk Indices)

ビットコインは前月比18%上昇と堅調に推移しており、より幅広い市場を追跡するCoinDesk Markets Index(CMI)は21%上昇となっている(当記事執筆時点)。

CMIがビットコインをアウトパフォームしているのは、時価総額の小さなアルトコインが選好されていることを示しており、ビットコインとイーサリアムのトレンドインジケータの数値がプラスであることと、ビットコインETFの話題が引き続き過熱していることと並んで、ポジティブなサイクルのサインとなっている。

暗号資産投資ファンドへの資金流入が急増し、ミームコインさえも復活している。さらに、サム・バンクマン-フリード氏の裁判が終結したことで暗号資産は新たなスタートを切ることができた。

なぜ我々は凍てつく冬から抜け出したのか? その理由はストーリーの転換にある。ウォール街は、ETFを通じた数十億ドルの投資について語り、大々的に参入してきている。大手金融機関がやってきて、暗号資産を投資家にとってより安全で透明性の高いものにし、暗号資産を窮地から救ってくれるというストーリーを紡いでいる。

現在の焦点はどこにあるのだろうか? ETF、セキュリティ・トークン(デジタル証券)、ステーブルコインのような、より広範で持続可能なプロダクトを構築する、よりしっかりと規制を受けた暗号資産取引所だ。パンデミック中に見られたミームコインやNFTの上昇のような、内輪で盛り上がったジョークのような投機商品ではない。

このシフトは、メインストリーム金融の代替という暗号資産本来の理念から逸脱するとして、一部の人の怒りを買うかもしれない。しかし、そのおかげで再び盛り上がりを見せていることは確かだ。

そして、これを後押ししているのはウォール街だけではない。ブラックロック(BlackRock)のラリー・フィンク(Larry Fink)CEOの「クオリティへの逃避」というコメントが示唆するように、アメリカの利上げサイクルの終焉の可能性、中東の緊張、長期的なインフレ懸念といったマクロ的要因が、投資家を暗号資産を含むより安全な避難先資産(安全資産)へと向かわせている。

フィンク氏のように、かつては暗号資産懐疑論者だった人物が、今や全国ネットのテレビでビットコインを称賛しているのだから、おかしな話だ。

現在地

現在、深い「暗号資産の冬」から抜け出したと仮定すると、この新しいサイクルで我々はどこにいるのだろうか? CoinDesk Bitcoin Price Index(XBX)を使用した過去のビットコインサイクルの分析から、次のサイクルの高値に向かっている可能性があることがわかる。

過去のサイクルの平均から、前のサイクルの安値と新しいサイクルの高値の間には約700日あり、ドローダウンはサイクル全体で平均マイナス80%程度となっている。

2022年11月21日が前のサイクルの安値だったと仮定すると、2024年第3四半期に新しいサイクルの高値が来ることを意味し、新しい高値は前のサイクルの高値(2021年11月9日にビットコインは史上最高値6万7000ドルを記録)を2~7倍となる。ただし、ビットコインサイクルの少ないサンプルの平均が維持され、歴史が繰り返されると仮定しての話だ。

ビットコインの価格サイクル(CoinDesk Indices)

サイクル分析の大きな「ただし書き」を忘れてはならないが、より広範な機関投資家への普及というストーリーと有利なマクロ経済的背景を支えに我々は再び「暗号資産の冬」を脱したようだ。

このホリデーシーズンは、本当に感謝できる展開になりそうだ。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin Has Gifts This Holiday Season