バックトのスロースタートはビットコイン先物の失敗を意味しない

バックトのスロースタートはビットコイン先物の失敗を意味しない

Brady Dale
公開日:2019年 9月 26日 15:00
更新日:2019年 9月 26日 15:00

ビットコイン・デリバティブにとって ── 少なくともビットコインデリバティブの記事を書く人間にとって、今は落ち着かない時だ。取り引きする人にとっては、いつものどおりのことかもしれない。

シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)は2019年9月20日(現地時間)、ビットコイン先物のオプション取引の提供に向けて準備中と発表した。これは驚くべき動きだ。なぜなら先物とスワップの出来高に占める割合でみると、現在までオプション取引の割合はほぼゼロだから。

だが、仮想通貨のオプション取引において、CMEほど信頼できるところはない。

この発表によって、CMEは新たに多くの作業をすることもなく、オプション取引を提供できるようになった。だが、なぜそうしたのだろうか? CMEのビットコイン先物市場は、CME全体のわずかな割合を占めるに過ぎない。

にもかかわらず、CMEは仮想通貨デリバティブ市場におけるリーダーポジションに一抹の不安を感じているのかもしれない。バックト(Bakkt)は今週、CMEとは異なり、現金ではなくビットコイン現物で決済するビットコイン先物取引を開始した。

結局のところ、多くのビットコインを取り引きするシカゴの投資家たちは、現物決済の方が重要と考えているようだ。CMEの発表はバックトの影響をわずか少しでも和らげることができるかもしれない。

バックトは9月23日、10月の月次契約と日次契約を開始した。月次契約の初日の取引高はわずか71ビットコインだった。2017年12月のCME先物の開始時に比べると、かなり低調な数字。だが比べる必要はない。CME先物のローンチはビットコインが史上最高値を記録した時期に近かった。

バックトの2つの商品のうち、日次先物契約はより魅力ある商品だ。トレーダーがT+2決済(約定日の2営業日後の決済)を利用した場合、米商品先物取引委員会(CFTC)の規制を受けたフィアット・オンランプ(法定通貨から仮想通貨への交換サービスを提供する場)から、人気のビットメックス(BitMEX)無期限スワップと同様のものまで、あらゆることが可能となる。

これまでのところ、トレーダーはそうしていない。9月23日のバックトの日次契約はわずか2ビットコインのみだった。

根強い神話

認可を受けたビットコイン先物が初めて登場したのは2017年12月、ビットコイン価格が過去最高値から長期にわたって83%も下落する直前だった。しかし取引高は1億ドルを下回っており、先物取引が市場を正気に戻したと主張するのは難しいだろう。

むしろ、新しい商品に対する需要の低迷は、ビットコインに対する機関投資家の需要神話を破裂させたようだ。

この神話は個人投資家に焦点をあてた仮想通貨「アナリスト」の間では今も健在、「bakkt volume fail」と検索すると分かるだろう。2017年頃であれば、2019年9月23日にビットコインを売るべきと知るためにタイムトラベルする必要はなかった。しかし2019年は最も浮足立った人でさえ、機関投資家のビットコインへの関心は最終的には大きくなるとしても、ゆっくりとしたペースになるという明確な事実を認識している。

機関投資家にとってデリバティブは、カストディ、投資可能性、リスクに関連する運用上の障害への分かりやすいソリューションを提供する(認可済みのビットコイン先物は、例えば、冷凍濃縮オレンジジュース先物とほぼ同じ構造になっている)。

だが現在、取引の大半は、取引所として運営していない、最大100倍のレバレッジを提供する規制外の取引所で行われている。

これらの商品は認可を受けたアセットマネージャーにとっては興味深いものではあり得ない。だが、関心を集めている。

報告されている取引高の信頼性について、根強い疑いがもたれているものの[特にオーケーイーエックス(OKEx)やフォビ(Huobi)]、大手の店頭(OTC)トレーディングデスクのビットコイントレーダーは、これらの市場に流動性があることを理解している。彼らのヘッジ戦略はその流動性に依存している。

それ以外にも、これらのレバレッジ取引の取引高は、おそらくすべてが仮想通貨ヘッジファンドと、あるトレーダーの説明によると、自身のアカウントで取り引きする「堕落したギャンブラー」によるものだ。

ビットコイン先物は濃縮オレンジジュース先物とよく似た構造を持っているが、濃縮オレンジジュースは揮発性が高いものと混ぜると可燃性が高まる可能性があることは誰もが知っている。ビットコインには他の資産カテゴリーと一線を画する重要な性質があり、機関投資家がビットコイン・デリバティブを評価する際にはこうした根底にある性質が考慮されている。

例えば、ビットコイン先物市場にはナチュラル・ヘッジは存在しないかもしれない。信じられなければ、ゴールドのマイナー(採掘者)とビットコインのマイナーのグローバルな営業費用を比較して欲しい。

今後の道のり

デリバティブは機関投資家のビットコイン投資へのゴールデン・ロードかもしれないが、目的地は遠い。今のところ、CME先物の取引高はこの道を進む投資家の歩みを示す良い指標だ。

5月にCMEの取引高が増加したことを示すグラフを見たかもしれない。この上昇はビットコイン価格が2倍に上昇したこととも一致している。ビットコインに換算すると、CME先物の取引高は7月に急増し、現在は第1四半期に見られた落ち着いた増加率での取り引きに戻っている。

一方、他に4社のスタートアップが、アメリカの機関投資家と他の規制された市場にむけて新たなデリバティブ商品を準備している。これらはすべて、現物決済に注力している。

現物決済が市場参加者を引きつける特徴となるのか否かは、まだ分からない。他の資産カテゴリーでのデリバティブでは、必ずしも重要ではない。O

1つ確かに思えることは、機関投資家の需要を「解き放つ」ことができそうな新しい金融商品はないということ。ほとんどの機関投資家は、なぜ、そもそもビットコインに投資するのかという質問に答え始めたばかりだ。


データ提供:www.sk3w.co

ガレン・ムーア(Galen Moore)はCoinDeskリサーチチームのメンバー。この記事で示された見解は筆者自身のものです。

翻訳:Emi Nishida
編集:増田隆幸
写真:Bitcoin clock via Shutterstock
原文:Bakkt’s Slow Start Doesn’t Mean Bitcoin Futures Have Flopped