ブロックチェーンを使った土地登記をテスト──米州開発銀行

数年にわたる議論の末、米州開発銀行(Inter-American Development Bank:IADB)は土地登記のためのブロックチェーンを初めてテストする。

2019年11月、米州開発銀行は中南米3カ国で土地登記と貸付をブロックチェーンで運用する2年間のプロジェクトを開始する。

中南米とカリブ海の国々にとって開発のための資金調達の最大の出資元である米州開発銀行は、ブロックチェーンプロジェクトは高コストで、時には成果が不透明であるにも関わらず、長年にわたって土地登記のためのブロックチェーンに強気の姿勢を保ってきた。

同行は、ブロックチェーンスタートアップのクロマウェイ(ChromaWay)、ボリビアのITサービス企業ジャラソフト(Jalasoft)と連携して、ボリビア、ペルー、パラグアイでテストを行い、最終的には南アメリカの他の国々にもテストを拡張することを目指している。

「我々はブロックチェーン技術のポテンシャルを示すために、中南米の政府と連携する必要がある」とボリビアのラパスにある米州開発銀行の環境・地方開発・災害リスク管理部門のプロジェクトディレクター、エイリベルソン・サントス・リマ(Eirivelthon Santos Lima)氏は語った。

「この問題は政府にとっては非常に抽象的、この技術を知ってもらい、関心を持ってもらうベストな方法は、どのように機能するのかを最初から見せること」

米州開発銀行は、クロマウェイのブロックチェーンによって、中南米諸国における適切な土地所有権を再構築する取り組みの負担を軽減できることを期待している。プロジェクトはそれぞれ5000万〜1億ドルの費用がかかる可能性があるとリマ氏は付け加えた。

これらのプロジェクトには通常、非公式に販売された土地の所有権の適切な記録を作成するために、農家や都市住民の法的な情報と不動産についての技術的な情報を同行が収集するという作業が含まれる。

研究開発部門のIDBラボ(IDB Lab)を通じて米州開発銀行は、プロジェクトに60万ドルを投じた。テストの第1フェーズでは、より信頼が生まれる形で土地登記をブロックチェーンにつなげる方法を探り、また、どのような種類のブロックチェーンを利用するかを検討する。

米州開発銀行は、IDBラボと、中南米・カリブ海諸国でのブロックチェーン利用を促進するためのアライアンス「LAC-ChaiN」によって開発されたブロックチェーン技術のための標準規格を利用する。また、一部にはワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム(World Wide Web Consortium:W3C)の規格も利用する。

パートナーの実績

米州開発銀行がクロマウェイを選んだ理由は、スウェーデンでの土地所有権追跡の取り組み、そしてオーストラリア、カナダ、インドにおける同様のプロジェクトに注目したため。

「スウェーデンでは土地の権利を申し立てるためのプロセスには最大32のステップがあり、買い手の銀行、売り手の銀行、不動産仲介業者の間で3カ月かかる可能性もあった」とクロマウェイのチーフエグゼクティブ、ヘンリック・ジェルテ(Henrik Hjelte)氏は語った。

「我々はこのプロセスをデジタル化し、オンラインにするまでの時間を数分にまで短縮しました」

クロマウェイは今回のプロジェクトに、同社の複数のブロックチェーン関連技術を採用する。例えば、同社がリレーショナル・データベースを起源とするブロックチェーンと説明するポストチェーン(Postchain)、ブロックチェーンやスマートコントラクト向けのプログラミング言語のレル(Rell)がなどだ。米州開発銀行はまた、クロマウェイのパブリックブロックチェーン上でプロジェクトを展開するオプション「クローミア(Chromia)」もある。

純粋なブロックチェーンとは異なり、クロマウェイの技術にはまた、データ上でパラメータを整理・設定するようなデータベース機能も含まれていると同社は述べた。

「基本的に根幹は、データを表すための数学的方法に基づいている」とジェルテ氏は述べた。

「これにより、誰かが同じ社会保障番号を持つことも、同じ不動産を2度売却することもできなくなる」

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:IADB image by Shutterstock
原文:Inter-American Development Bank to Pilot Land Registries on Blockchain