米証取委からブロックチェーン上の株式決済「ノーアクションレター」獲得:パクソス

パクソス(Paxos)は規制当局の承認を受けたブロックチェーンプロセスを用いた株式決済プロセスの近代化を追求している。

米証券取引員会(SEC)は2019年10月28日(現地時間)、パクソス・トラスト・カンパニー(Paxos Trust Company)に対し、ブローカー・ディーラー向けのブロックチェーンプラットフォーム上の持分証券決済に関するノーアクションリリーフを発行した。パクソスは、新たなパクソス・セトルメント・サービス(Paxos Settlement Service)を最初に利用するのはクレディ・スイス(Credit Suisse)とソシエテ・ジェネラル(Société Générale)の2社となることを発表した。同サービスは許可を受けたプライベートネットワーク上で運用される。

想定されていたように、同サービスでは当事者同士が互いに直接、二者間で証券を決済する。28日の発表ではこうした取引向けの初めての規制対象プラットフォームであることが示されており、既存のレガシーシステムよりも効率的となる見通しだ。

パクソスはこのサービスに2年以上取り組んできたと、パクソスの証券商品部門ヘッドで同サービスのプロダクトディレクターのメレイナ・イングラム(Melayna Ingram)氏は述べる。

パクソスは約18か月にわたりSECと協力してきたが、ノーアクションレターそのものを確実にするために働きかけ始めたのは半年ほど前だと、イングラム氏はCoinDeskに述べた。ノーアクションリリーフにより、パクソスは他の市場参加者を保護するための厳しい制限の中でサービスを運営することができる。

イングラム氏は次のように述べる。

「パクソスは今回のノーアクションリリーフを、本商品をローンチするための好機として、また、本商品の機能の仕方や、市場の需要だけでなく参加者が当社に求めるものに対する当社の認識を検証するための好機として用いている」

この新サービスは企業に対し、「約50年間、何も新しいことが起きなかった分野」で株式決済を行うための仕組みを提供すると、イングラム氏は述べる。同社の長期的なビジョンは決済プロセスの近代化だと説明した。

「フロントオフィスやトレーディングはスピードや洗練度合いで非常に多くの改善点があり、バックオフィスはほぼ隅に追いやられている。このため、バックオフィスをフロントオフィスと連携させ、最終的には企業がバックオフィスとオペレーションのデジタル変革を推進する上で、これが業界にとって非常に重要な一歩になると考えている」

同社は米国上場株式の決済から手掛けていくと、パクソスの最高経営責任者(CEO)兼共同創立者のチャールズ・カスカリラ(Charles Cascarilla)氏は述べる。声明の中で、株式分野は「前例のない統合と経済圧力」に直面しており、市場インフラ全体が近代化を迫られていると付け加えた。

前進

イングラム氏はCoinDeskに対し、同社はクレディ・スイスとソシエテ・ジェネラルと協力し、過去2年間の大部分を通じて商品設計やベストなローンチ方法の判断を行ったと述べた。

「彼らは我々に多くの重要なフィードバックを行い、前進して協力し、(数少ない)最初のアーリーアダプターになった」

パクソスは他の多くの企業にも接触しているとイングラム氏は述べる。今やパクソスはノーアクションリリーフを確保したので、他の企業も参加を決定する可能性があるという。

クレディ・スイスのデジタル資産市場部門のヘッド、エマニュエル・アイドゥ(Emmanuel Aidoo)氏は声明の中で、クレディ・スイスの事業とカスタマーエクスペリエンスの両方を改善するためにブロックチェーン技術の新たな適用の検討に「尽力した」と述べる。

ソシエテ・ジェネラルの最高執行責任者(COO)、ジェフリー・ローゼン(Jeffrey Rosen)氏は、アーリーアダプターとなることで「自分たちのニーズに合わせてシステムを調整し、短期的にも長期的にも当社のコスト構造にプラスの影響を与えることができる技術を導入することができるだろう」と付け加えた。

アイドゥ氏は次のように述べる。

「証券決済のプロセスはブロックチェーンを使用することで大幅な最適化が可能になり、パクソス・セトルメント・サービスによって、こうした効率化の恩恵を直接受けることになるだろう。これは当社のデジタル・アセット・マーケット戦略の重要かつ重大なマイルストーンで、将来的にはこの商品を様々な資産クラスに利用する機会があるとみている」

パクソス・セトルメント・サービスのローンチによって、同社はデジタル資産と証券を組み合わせる方法を示すことが可能となる。

その上、「規制を受けた方法でそれを行う」と、パクソスのイングラム氏は述べる。「それが当社にとって非常に重要なことだ。もちろん長い時間がかかり労力を費やしたが、当社にとって非常に意味のあるものだ」

今回のノーアクションレターは、SECが今年に入って仮想通貨企業に3番目に発行したものであり、株式決済の承認は初めてとなる。規制当局はこれまでにターンキー・ジェット(TurnKey Jet)とポケットフル・オブ・クオーターズ(Pocketful of Quarters)に対し、厳しい規制を順守するという条件で、トークン販売の開始に関するノーアクションリリーフを発行している。

翻訳:Emi Nishida
編集:T.Minamoto
写真:Paxos CEO Charles Cascarilla image via CoinDesk archives
原文:Paxos Wins SEC ‘No-Action’ Letter to Settle Equities on a Blockchain